第131話 ドワーフと獣人

「起きろー」


「「「わぷっ!」」」


俺はこの訓練所内の氷を全て溶かして、全員を回復させた。しかし、その時点でまだ誰も起きてこなかった。どうしようかと悩んでいると、ナービが水でもかけて起こせばいいっと言ってきたので、それを実行した。

すると、全員起きて、周りをキョロキョロして状況確認を行っていた。


「や、やっぱり、覇王様は強いのじゃ」


「ありがとう」


ブラッドが少し気まずそうにそう言った。気まずそうにしてる理由はこれがあの事件以降の初めてのまともな会話だからだろう。

あ、そうだ。ナービに起きたらまず聞けと言われてた事を聞かないとな。



「みんなに聞きたいんだけど、仮に5日間ここを出るとして、いつ頃出発できる?」


ここにいる7人は魔族の中のトップ7だ。急にここを抜けたら魔族達は大混乱になってしまうだろう。



「5時間あれば皆に5日間分の司令を出し終えられるから大丈夫なのじゃ」


ブラッド曰く、5時間あればここを出れる準備が整うようだ。正直、半日くらいはかかると思っていた。それが5時間で済むのは日頃からブラッド立ちに頼りきりにならないようにしていたからだろう。



「なら、5時間後にここに来るよ。その時にみんなを外に連れて行くね」


「分かったのじゃ」


俺はブラッド達にそう伝えて、隠密を使いながらダンジョン転移で1階層の出口側に転移した。



『次はどこのダンジョンに行こうか?』


『では、次は西のダンジョンに行きましょう』


『了解』


俺はナービの指示通り、ドワーフ達の居る西のダンジョンまで移動してから、ドワーフの城前にダンジョン転移で移動した。



「覇王様ですね。こちらへどうぞ」


ドワーフの門番は俺が急に現れたのを見て驚いた顔をしたが、すぐに客室に案内してくれた。そして、国王様に俺が来たことをお伝えするから少し待っててくれと言われた。



「覇王様、こちらへどうぞ」


「分かった」


そして、待つこと数十分後、メイドに案内されて、俺は国王に会いに行った。



「まだ1ヶ月経ってませんが、もうコボルトが動き出しましたか?」


「はい」


武器などを取りに来ると予定していた1ヶ月はまだ経っていない。


「では、武器庫へと案内します」


「分かった」


国王は俺に渡すと約束していた武器を保管している武器庫へと案内してくれた。


「ただでさえ満足のいくものをお作りしようとして、作業が遅れてしまっています。ご覧の通り、まだ半数もできていませんが、よろしいですか?」


「全然大丈夫だよ。助かるよ」


武器庫には壁に様々な武器が立てかけてあり、棚には防具や腕輪などの装飾品が置いてあった。元々は助っ人にはかなりの人数を予定していたが、コボルトの手練の出現によって少数精鋭になったから人数分はあるだろう。


「残りの魔石はあげるから自由に使って。あ、今回のお礼としてこれもあげるよ」


俺はマジックボックスからSSランクの魔石を10個取り出した。


「残りの魔石だけでなく、SSランクの魔石を頂いていいんですか!ありがとうございますっ!」


いや、感謝するのは俺の方だ。この装備達も魔石を提供しただけで無償で作ってくれたものだ。


「これがあれば、あれが作れるか?いや、あれの方がいいか?いや、あれを…」


Sランクの魔石を渡した時のように国王は自分の世界に入ってしまった。


「じゃあ、コボルトが解決して、余裕ができたらまた来るよ」


「あ、はい」


そんな国王に一言断ってから俺はダンジョン転移でまた移動した。まだ自分の世界に入ってたけど、俺の話はちゃんと聞いてたかな?



『次は?』


『南のダンジョンに行きましょう。そして、まずはロウとイヅナに話をつけましょう』


『おっけー!』



俺はダンジョン近くにある大ダンジョンへの転移装置を使って西のダンジョンまで向かった。そして、ダンジョン内に入ってダンジョン転移を使って、ドワーフの時と同じく城前に転移した。



「レーイ!!」


「うおっ!」


とりあえず、門番に説明して中に入れてもらおうとしていると、城からドンドン!という大きな音が聞こえてきた。そして、窓を破壊しながらロウが城から門を飛び越えて俺の目の前まで飛び降りてきた。


「久しぶりだナ!俺と戦いに来たのカ!?」


「とりあえず、落ち着いてくれ」


ロウは俺の肩を掴んで激しく振ってきた。興奮しているのだろうが、とりあえず落ち着いて欲しい。


「ちょっとお願いがあって来たんだ。イヅナと3人で話したい」


「レイのお願いってのは例のあれだナ。イヅナを連れてくル。先に食堂で待っててくレ」


ロウそう言うと、門を蹴破る勢いで蹴って開けて城へと戻って行った。

ロウにもコボルト達のことは話していて、協力をしてもらうよう言ってあるからすぐに伝わったようだ。



「では、どうぞ?」


「ありがとう」


ロウとの会話聞いていたであろう門番は事情は理解できなくても、俺が中に入っていいということは伝わったようで、俺を城の中に入れてくれた。そして、俺は1人で食堂まで向かった。


「待たせたナ」


「お兄ちゃんっ!久しぶり!」


「久しぶり。それから全く待ってないから」


俺が食堂に到着してから1分も経たずにロウとイヅナはやってきた。


「それで、お願いってのはコボルトの件でいいんだよナ?」


「そうだ」


ロウは席にドカッと勢いよく座ってニヤリと笑いながらそう聞いてきた。


「お兄ちゃん、コボルトって結局何なの?」


「あ、イヅナには詳しくは話してなかったな。コボルトの件ってのは……」


ロウとロウの父親と話しただけで、イヅナにはちゃんと言ってはいなかったな。俺はイヅナにコボルトの事を1から詳しく話した。ついでに特に強いやつ5体のうち、1体の相手をお願いした。


「俺達2人で1体ってことはそこまで強い相手ってことなんだナ。コボルトと戦うのが楽しみになってきたナ!もちろん、約束通り手伝ってやるゼ」


「イヅナもお兄ちゃんの為に手伝うよ!」


「ありがとう」


2人は話を聞いてすぐに協力を約束してくれた。



「5日間空けるとして、いつ頃ここを出れる?」


「今から出れるゾ」


「あ…そうだったな…」


そういえば、ロウは俺が初めてこのダンジョンにやってきた時も、何も言わずにすぐに城を飛び出して戦いを挑みくるほど自由人だったな…。いつもそんなんだから数日留守にするくらい問題ないのだろう。


「とは言っても、万が一に備えて色々話しておいた方がいいだろ」


そんなことをさせる気は全くないが、死ぬ可能性も0では無い。だからロウの父親とかくらいには話しておくべきだろう。


「ちょっと下の階層に行って、それからまた戻ってくるからそれまでに話しておいてくれよ」


「おウ!」


ロウも納得したようなので、俺はこのダンジョン転移で1つ下の階層に移動した。



「さて、どこにいるかな?」


「天使達は再召喚して呼べばいいでしょうが、リュキは探さないといけません。とはいえ、リュキの居る近くの階層に行けばお互いに気付くでしょうし、そこまで大変では無いと思います」


「なら良かった」


俺はダンジョンの隅々まで探さなければいけないかと思っていたが、そこまでしなくても良いそうだ。俺はこのダンジョンに置いて来たリュキを探して、ダンジョンを1層ごとに降りていった。


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