北のダンジョン編

第109話 問題発生?

「宝箱を見つけたら報告しますか?」


「いや、50階層以降までその報告もいらないかな」


「分かりました」


宝箱の中身は深い階層になればなるほど、豪華になるらしい。もちろん、浅い階層の宝箱でも良い物が手に入る可能性はある。だけど、遠回りしてまで探す程の価値は無いだろう。



〈お兄、ちょっといい?〉


〈んぁ?どうかしたか?〉


30階層のボスを倒して、少し休憩をしている時に妹の由紀からテレパシーで急に話しかけられた。少しびっくりして変な声が出てしまった。



〈外国の山にドラゴンが出現したんだけど、知ってる?〉


〈は?何だそれ?〉


そんなことは全くの初耳である。


〈ちょうど今、テレビでそう報道してるの。何とかっていう山にドラゴンと思わしきモンスターが現れましたってさ。しかし、安心してください。もう既にランキング100位以内の精鋭達を送りました。その精鋭のリーダーはマッシュですって〉


〈そんなことがあったのか〉


もちろん地上にもほとんど居ないからニュースなんて見る機会がないから知らなかった。


〈そうなの。それで、今お兄はリュキちゃんとは別行動してるんでしょ?それにリュキちゃんは龍だから竜違いだろうけど、一応リュキちゃんの可能性も考えて心配で連絡したの〉


〈ありがとう〉


確かに今はリュキとは別行動をしている。その事を由紀に話した覚えが全くないのに、それを知っていることについては今は振れなくていいだろう。

別行動中のリュキは西のダンジョンの中でレベル上げを頑張っていて、地上には出ていないだろう。出たとしても一直線で俺の所へ向かおうとするだろう。だから山に行く理由は多分ない。


ちなみに竜と龍は違う。竜は俗に言うドラゴンというやつで、四足歩行に翼が生えたやつだ。

それに対して、龍は巨大な蛇みたいな姿に手足をつけた感じだ。

もちろん、これは俺がその2つのモンスターを実際に見たことがあったから知っているだけだ。俺のダンジョン攻略を観察していた由紀という例外を除いたら、竜と龍の違いなんて誰も知らないだろう。



「ナービ、何か分かる?」


由紀の情報だけでは何もわからないのて、ナービにも聞いてみた。


「マスター、★で獲得できるスキル欄を見てください」


「ん?了解」


ナービの意図はさっぱり分からなかったが、★で獲得できるユニークスキルの欄を見た。



「ん?あれ?悪魔召喚と竜召喚があるよ?」


「やっぱりですか… 」


前に見た時にはその2つのスキルは無くなっていた。俺ら人間同士ではユニークスキルは1人しか取得できない。前に見た時は誰かが取得したのか、悪魔召喚と竜召喚は無くなっていた。

無くなったスキルが再び現れたということは、スキルを取得した人がそのスキルを失ったか、死んだかのどちらかとなる。



「恐らく、山にいる竜は召喚された竜でしょうね」


「でも、普通に山にのさばってるんでしょ?」


確か、俺の天使召喚のように魔力を常時削らなくても、召喚するだけなら問題ないと前にナービ言っていた。でも、それは召喚するだけなので、1分ほどですぐに消えてしまう。



「召喚主を殺せば、消えることなく自由になれますよ」


「え?そんなことあるの?」


「天使と違って竜や悪魔は野蛮ですからね。気に食わないと思ったら召喚主だろうが、躊躇なく殺すでしょう!」


ナービが少し自慢するようにそう言った。ナービがおすすめした天使召喚を取得してよかったな。天使達は最初からかなり好意的だったからな。


「すいません、マスターの妹に聞いてほしいことがあります」


ナービが由紀に質問があるらしいので、ナービの聞きたいことを俺が由紀に聞いた。


〈由紀、その竜の種類を検索で調べてもらえるか?〉


〈ちょっと待ってね…〉


由紀が取得しているユニークスキルの検索は、調べることができるスキルだ。情報を調べることだけに関してはナービよりも詳しいことがわかる。



〈ごめん。私の検索でも種類まで分からなかった〉


〈全然いいよ。ありがとう〉


どうやら、そんな由紀の検索でも、竜の種類までは分からなかったそうだ。



「分からなかったけど大丈夫?」


「検索で分からないということを知れただけで十分です」


ナービは由紀と遠距離で直接会話はできないが、俺と由紀の会話を聞くことはできる。だから俺が由紀に聞いたことはナービに伝わっている。


「まず、検索で分からないことが不自然です」


「そうだね」


ダンジョンに試練があることすらも分かった検索様が、地上にいる竜の種類すらも分からないというのは少しおかしい。


「そこで考えられるのは、その竜が検索をも妨害できる特殊能力を持っていることです。しかし、これはほぼ有り得ないでしょう」


天使と同じシステムなら、元々初期に取得しているスキルは普通の竜の種族スキルのみだ。それからスキルポイントによって取得するスキルを決めれるが、そのスキルも竜が取得できるスキルでないといけない。竜に検索を妨害するようなスキルは取得できないそうだ。



「次に可能性が高いのが、同じく★で取得できるようになった悪魔召喚を使って死ぬ前に悪魔を召喚してあり、その悪魔の能力で検索を妨害していることです。この可能性も先程と同様に低いでしょう」


悪魔も初期スキルには検索を妨害するようなスキルはないそうだ。そして、スキルポイントでは、取得できないか、できたとしても高ポイントになるから取得しているなんてことはほぼ有り得ないらしい。



「1番可能性が高いのが、何らかの原因で悪魔と竜が合わさって新種が生まれたことです」


「新種!?」


新種にはいい思い出がない。1回、新種のワイバーンにかなりボコられたからな…。



「新種なら種族が検索にないのも理解できます」


確かに新種の竜なら検索でも知れないと言われても納得できる。



「竜をどうしますか?」


「うーん…」


その竜が凶暴で暴れているというのなら、倒さなければならないなと思う。しかし、現時点では、その竜は山で大人しくしているそうだ。それを勝手に怒らせて反撃を食らって、もし精鋭が全滅しても自業自得しか言えない気がする。とはいえ、竜を放置できないという気持ちも分かる。どうしようか……。



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