第89話 別視点

私は生まれてから不自由というのを味わったことがない。生まれながらにして全てを与えられていた。

獣人は1つの属性の魔法を使えることすら1万人に1人ほどしかいない。しかし私は魔法を複数使える。その上私の眼は誰よりも特別だ。

私は生まれながらにして選ばれた存在だ。


「お嬢様!そちらは立ち入り禁止となっております!!」


にこっ


「…どうぞ!こちらです!!」


私が目を合わせれて微笑むだけでみんななんでも許してくれた。家族にはそれが効きにくかったがそばに行って上目遣いで「おねがいっ」ていうだけで大抵の言うことを聞いた。

そしてもし私の能力が効かなくなって戦うことになったとしても魔防が低い獣人に私の敵はいなかった。

だから私は日常が退屈でしょうがなくなった。

ほしいものは全て簡単に手に入る。みんなが欲しがるものは全て持っている。私に欲しいものはなくなってしまった。



「今ここはダンジョンの中になっている」


兄がそう言った。私たちはダンジョンの中に転移させられたらしい。そして私は久しぶりに少しわくわくした。いつものつまらない日常が変わるかもしれないと。

しかし私が求めているものは何もなかった。



「っ!強い奴が来る。行ってくる」


兄がそんなことを言って飛び出して行った。

我が兄ながら兄は強い。この獣人の国で私を除けば1番強い。まず負けるはずがない。だから侵入者?を連れてさっさと帰ってくると思った。だが面白そうだから侵入者が兄に負ける様子を魔法で見ることにした。


「なんなの…」


見た瞬間とても驚いた。正しく私たちと格が違った。私はこんな男がいるなんて思わなかった。そしてそいつはなんと兄に名前をつけて兄の格を自分と同等付近まであげた。しかしそれでも格がまだ違った。だから兄は負けた。今の兄なら私は魔法でしか壊せない檻とか入れれば負けることは無いが、勝つことはできないだろう。そしてそいつは天使を転移させた。つまりそいつはMPを減らした状態のハンデを背負ったまま勝ったのだ。いくら魔法が効かないとして間接的に魔法を使うことはできるがそれもMPを減らした状態だと難しい。


「ほしい…あれを私だけのものに…」


あれが欲しい。私は今までにないほど欲しいと思った。私よりも強く格が高い相手を私だけのものにして私の言うことだけはなんでも聞く。そう考えただけで興奮してきた。私だけのものにして連れ回したい。私だけのものだと自慢したい。

そう考えて私は計画を練ることにした。所詮あいつも男だ。私が近くに行って微笑めば私のものになるだろうと思った。

だから私は兄が来るだろうと予想して普段兄や親以外は有事の際しか入れない王座に先回りした。そして兄の嫁に「おねがい」をして兄を退場させてもらった。

そして自分の部屋に案内した。これで私の勝ちは確定したと思った。


「お、お兄様はお強かったですか?」


上目遣いで眼を見てそう言った瞬間私の勝ちはさらに揺るぎないものとなった。

これで私だけのものになる。まず何をさせよう?私の世話は全部やらせよう。私より格上の者が私のためだけにがんばるなんて最高ね。



「お兄様?」


え?なんでまだ理性があるの?予想外の事態に混乱したがある意味当然かもしれない。格が違いすぎるのだ。なら格を近くにするため名前をつけてもらおう。そして私は不自然なく名前をつけてもらおうと会話を始めた。

しかしこんなに誰かと話したのは初めてで楽しくなってしまって、名前をつけてもらうのが遅くなってしまった。

これで終わりだと思ったが、それでも私の眼は効果がなかった。いや、効果はあるのだろう。しかし理性を失わせる程の効果はない。なので自然に膝の上に乗ってさらに距離を近寄った。

兄に見られるという少し恥ずかしい誤算は合ったが結局私の眼の能力が効かなかった。

なのであえて無防備に寝てるフリをして襲って来るのを待った。しかし結果としてはなんにもしてこなかった。私は人生で初めて思い通りにいかないことに怒り半分嬉しさ半分なよく分からない気持ちになった。




「ならちょっとゲームしてイヅナが勝ったら一緒に寝よ?」


もう本気で堕とすと決めてゲームを持ち込んだ。そして万が一にも今回で堕ちなかった時のために親に「おねがい」して見ててもらうことにした。食堂なんかで人目がある中で口付けなんてしてしまったら私を貰わなければならない。そしたらもっと時間を使って堕とすことができる。そしてレイはゲームを受けた。私の勝ちが決まっているゲームを。



「な、なんで?」


ありえない。私の勝ちは決まっていたゲームだった。なんで私は負けたの?私の魅力が通じないの?レイには私の魅力が伝わらない?レイには私が魅力的じゃないの?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?



「次は…ぜったい…」


今回は前の時のような嬉しさ半分はなくなり憤りしか感じていない。次は絶対にどんな手を使ってでも堕とす。こうなったらダンジョンにでも行ってレベルをあげよう。そして実力行使してでも私の虜にしよう。もう失敗しない。絶対に何を使って何を犠牲にしてでも…






「次は何としてもぜったい私のものにする」



そうして数日が立って準備が整った。

そして明日計画を実行する。






【名前】  イヅナ

【種族】  獣人(九尾)

【年齢】  1 

【レベル】 1    

【ランク】 SSS


【HP】   40000/40000

【MP】   65000/65000


【攻撃】  6000  

【防御】  5000   

【魔攻】  20000  

【魔防】  10000   

【敏捷】  9000   

【運】   82       


【スキル】

・棒豪Lv.8・火炎魔法Lv.MAX・暴風魔法Lv.MAX

・水流魔法Lv.MAX・岩石魔法Lv.MAX

・暗黒魔法Lv.MAX・光明魔法Lv.MAX

・雷電魔法Lv.MAX・氷結魔法Lv.MAX

・治癒魔法Lv.MAX・詠唱省略Lv.MAX

・無詠唱Lv.MAX・指揮Lv.MAX


【ユニークスキル】

・爆発魔法Lv.5・聖魔法Lv.5・呪縛魔法Lv.8

・幻術魔法Lv.MAX・時空魔法Lv.3・重力魔法Lv.3

・隠蔽Lv.MAX・狐火Lv.MAX ・獣化Lv.MAX

・透視Lv.5・全耐性Lv.8


【エクストラスキル】

・魅惑眼Lv.MAX・色欲Lv.8


【称号】

・色欲

・幻獣

・ネームド

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る