第88話 眠気
「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」
「あ、うん…」
おかしいな…俺は双子に稽古をつけるだけのはずがここには食堂にいた全ての獣人がいるのだが…
「なにか手伝うことがあったら手伝ってやるゾ〜」
ロウもいてそう言ってくるが顔を見ると手伝うつもりはありそうには見えずもう肘を着いて寝ようとしている。
「はぁ…みんながどんな武器をどんな感じに使うかも全くわかんないから全員で木製の武器を持ってかかってきて」
男5人と女4人に一人一人丁寧に教えていたら今日1日付きっきりになってしまう。今日の午後は絶対に寝ると決めているので邪魔はさせない。
「え?いいの…ですか?」
「なにが?」
「危なくないの…ですか?」
「なめるなよ?」
敬語に慣れていない獣人の恐らく長女?と見られる子が聞いてきたが覇気を出して黙らせた。やばい…少し眠くて荒っぽくなっている。気をつけよう…
「はぃ…」
「よし!じゃあ来い!」
こうして稽古は始まった。
しかしさすがはロウの兄弟だ。みんな筋がいい。一人一人ダメなところを言いながらあしらっていった。しっかりロウを眠らせないようにロウの方に誰かを投げつけることも忘れなかった。
「「「「「あ、ありがとう…ございました……」」」」」
お昼になる頃には誰も立ち上がれないほど疲れ切っていた。これなら午後もなんて言うやつはいないだろう。もしいても休息も訓練だとか言っておけばいいだろう。
「昼食うカ?」
「当たり前だろ」
そして再び食堂に向かった。
「ごちそうさん!」
今回お昼を食べたのは俺とロウとロウ嫁とイヅナとロウ父とロウ母だけになった。
「レイ!モンスター狩りに行くカ!」
「はぁ!?」
「何言っているの!書類仕事が残ってます!!」
「あっ…ちぇっ!」
「よしっ!」
ロウに誘われた時は焦ったが助かった…これでやっと寝れる…
くい!
「おっ!なんだ…?」
メイドは廊下にいっぱいいるので誰かに空いてる客室を聞けばいいかと思って早く廊下に出ようとしたがローブを思いっきり引っ張られた…
「どうしたの?」
「今日イヅナにつめたい…」
「そうだった?ごめんね」
眠くてそれどころでは無いのでつめたくなっていたところもあるかもと思って謝る。
「ほんとに悪いと思ってる?」
「思ってるよ」
「ならこれから言うこと聞いて」
「え…?」
「反省してるよね?」
「う、うん」
「ならイヅナの言うこと聞いてほしいな?だめ?」
「聞くよ…どうしたの?」
頼む…時間がかからないこともしくは明日以降でも問題ないことにして欲しいと心の中で願いながらイヅナのお願いを聞いた。
「イヅナに魔法教えてほしい…」
「魔法?いいよ」
「よかった…」
イヅナは断られなかったことに安心ているようにそう呟いた。こうして言わないと断られるとでも思っていたのかもしれない。
「じゃあ明日から頑張ろうね。またね」
「え…?明日なの?」
「え?夜やるの?」
「今からじゃないの?」
「明日じゃだめかな?」
「イヅナは後回しの2番とか3番にされるの?」
「いや!そうゆう訳じゃなくてね!」
「イヅナは都合のいい時に相手するキープなの?」
『そうなんですか?マスター?』
「いや!違うよ!」
『ナービは俺が眠いのわかってるでしょ!からかわないで!!』
ナービは俺が眠くて仕方がないというのもわかった上でからかってくる。あれ?ナービにからかわれるの何気に初めてかな?
そして食堂でまだお茶を飲んでいるイヅナの両親はこの状況を面白がってニコニコしている。止めてくれよ…
「えっとね。最近寝させてもらえてなくて眠いの」
「じゃあイヅナ一緒に寝る?」
「いや、一人で寝るよ」
「イヅナのしっぽ枕にしたらきもちいよ?」
「………一人で寝るよ」
イヅナのふわふわ狐尻尾を枕にしたら確かに気持ちいだろうな…と想像したら返事が遅れた。
『想像したらちょっといいなとか思ってませんよね?』
『オモッテナイヨ』
『………』
『ごめんなさい』
ナービには俺の考えていることが筒抜けにでもなっているのかと言うくらい読まれてしまう。でもそりゃ1年以上ずっと一緒にいるようなものだから当然といえば当然なのか?
「ならちょっとゲームしてイヅナが勝ったら一緒に寝よ?」
「…どんなゲーム?」
「イヅナと10秒間目を合わせてレイお兄様が目を逸らしたら負け」
『ナービどうかな?』
『大丈夫でしょう』
ナービは自分に聞いてくれたのが嬉しいのか少し気分が良さそうに返事をしてくれた。
「うん。それでいいよ」
「うふふ….じゃあいくよ?」
そう言ってイヅナと目を合わせた。
「じゅう…きゅう…はち…」
目を合わせた瞬間いつもは黄色い綺麗な眼が赤い蠱惑的な眼になった。
「なな…ろく…ご…」
そしてだんだんイヅナの顔が近付いてきた。
「よん…さん…にい…」
そしてたったままの俺の首の後ろに手を回して顔をさらに近づけた。
「いち…」
そしてカウントと同じくイヅナと俺の唇の距離もゼロになろうとしていた。
「ぜろ」
「透過」
「え……」
そしてカウントが0になった瞬間に俺は透過を使った。なぜここまで冷静かはナービに相談した時に遡る。
『ナービどうかな?』
『大丈夫でしょう』
そしてこの後にナービの言葉には続きがあった。
『おそらく誘惑する何らかのスキルを使ってくると思います』
『対処法は?』
ナービが大丈夫と言ったのだから必ず対処法があるのだと確信してナービに聞いた。
『目の前に薄い聖魔法の結界を張ってください。マスターなら気付かれず貼れますよね?』
俺は相変わらずナービのこの言い方に弱い。結界をバレないほど薄く透明なんてしようと思ったことがないからできるかなんてわからない。しかしこれでは無理とは言えない。
『余裕だよ!』
『ふふ。さすが私のマスターです』
「な、なんで?」
そしてイヅナが近付いてくるのをわからないくらい少し引いてカウントがゼロになる前に顔との距離がゼロにならないようにした。何をするかと思ったがキスをしようとしているとは思わなかった。
「次は…ぜったい…」
「ん?」
俺には聞こえない声で何かを呟いて食堂から出て行った。
『これでやっと寝れますね』
『そうだね…』
そしてメイドに空いている客室に案内してもらった。
『マスター、念の為結界を張っておいてください』
『そうだね』
もう俺の眠りを妨げることは許さない。
なので俺は龍魔法を使ってまで結界を張った。これならロウでもちょっとやそっとじゃ割れない。
『じゃあおやすみなさい』
「おやすみ…」
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