第66話 ただいま
「ただいま」
飛びついてきた妹を見て久しぶりに帰ってきたのを実感した。
「うん?え?だれ?」
抱きついた腹から顔を上げて目が合うと由紀は突然そんなことを言ってきた。
「誰って酷くね!?」
「いや!今までと全然違うよ!」
「違う?」
「違う!顔もめっちゃイケメンになってるけどそれよりも雰囲気がイケメン!」
やはり何を言っているかよく分からない……と思っているとナービが話しかけてきた。
〈ステータスが上がると隠れステータスにある魅力も上がります〉
〈まじ?〉
あまり自分の顔を見ないのと自分の顔に頓着していなかったので気付かなかったがもしかしてイケメンになっているのかもしれない!
「そんなことより!リュキちゃん!!おいで!」
「キュイ??」
いや、兄の容姿の変化をそんなことと言いやがったぞ。というかこいつはなんでリュキまで知っているのだろう?
「よしよし!かわいー!!」
「キュイ〜〜♡」
「珍しいな〜」
そういえば由紀が飛びついてきた時にもリュキは警戒をしていなかったな…
〈おそらくマスターの匂いがしているからだと思います〉
なんで1年間以上も家から離れていたにも関わらず同じ匂いがしているのかは置いておこう。
「早く家入ろ!!」
「相変わらず忙しいやつだな…」
リュキを俺の首に戻すと手を引っ張って家の中に連れていった。
「ほら!お兄帰ってきたよ!」
「た、ただいま」
妹はいきなり飛びついてきたので大丈夫だったが久しぶりに会う親との再会に少し緊張してしまった。
「零……おかえりなさい…」
「お、おかえり……」
「うん?」
なんか嬉しさと悲しさが混じったような顔をしている気がする。
「お疲れさま、お風呂沸かしてあるから入って来て」
「ありがとう」
母さんが気を利かせて風呂を沸かしてくれていたようだ。それにしてもなんか暗い気がするのは気のせいか?しかし思いつく事が特に無いので久しぶりの風呂に向かった。
「上がったよ〜」
久しぶりで1時間近く風呂に浸かってしまった。リュキも気持ちよさそうに入っていた。
「零…座りなさい」
「?わかった」
父さんが深刻な顔をしながら席に着けと言ってきたので席に着いた。
「………」
「どうしたの?」
着いたはいいけど無言のまま時間が過ぎていくのに耐えきれず聞いてみた。
「今まですまなかった…」
「零がそんなに思い詰めているなんて知らなかったわ…」
「ん?」
何の話か全く分からない。横に座っている妹を見ると目をそらされてします。
「零が何回も整形をするまで自分の顔について悩んでいたなんて気付かなかったわ…」
「んん?」
整形?なんのこと?
「いくら使った?もしあれだったら俺が半分くらいは出してやるぞ」
「ちょっと待って!なんのこと!?」
整形をしたいとも思ったことはない!どこからそんな話が出たんだよ!
「この1年間整形し続けてるから帰って来れなかったのよね?」
「だ、誰から聞いたの?」
「由紀からだぞ?」
「由紀??」
「な〜に?」
「こっちを見ろ」
この後由紀が嘘をついていたこと、本当はその間にダンジョンにずっといた事を話して仲良く2人で怒られた。
「「ごめんなさい…」」
「「はぁ〜〜」」
この2人で怒られるのもなんだか懐かしい気がして実家に帰ってきたという実感が湧いて安心してしまう。
「それでなんで由紀は俺の動向をそんなに詳しくわかったの?」
それだけが分からない…GPSと盗聴器でもそこまで正確には分からないだろう。
「この前お父さんとお母さんに貰った紙がスキルの書でそれでユニークスキルの検索を取得したの」
「父さんと母さんはダンジョンに行ったの?」
「行ったぞ」
「何しに?」
「観光よ?」
俺が命懸けで頑張っていたダンジョンは観光としても使われてしまっているのか……
「それで零は強くなったのか?」
「あの自称世界一位のマッシュってやつを寝ながらでもボコれるくらいには」
「なら由紀を少し鍛えてくれないかしら?」
「私からもお願い!!」
「え…なんで?」
鍛えるのは別にいいが別に鍛えなくても問題ない気がするけど……
「それが私ちょっとしたストーカーにあってるの」
「は?」
理由を聞くと便利なユニークスキルを持っていると何者かにバレてしまい、それを手に入れる+容姿のいい由紀を自分の物にしたい者達につけられているそうだ。ここまで分かる検索って便利だね。
「警察は?」
「意味ないって」
警察とも繋がっているやつもいるらしく警察に言っても無駄らしい。
「よくその状況で普通に生活できてるな…」
「まぁまだ襲って来ないってわかってたしもう少しでお兄も帰ってくるってのもわかってたしね!」
「で、付けているのかが誰なのかってのも知ってるのか?」
由紀の強メンタルに呆れながら聞いてみた。
「何グループもいるけど1番積極的なのはマッシュってやつだね」
「またあいつかよ……」
結局俺はそいつに絡まれる運命なのか……
「あいつは顔はいいらしいけどダメなのか?」
ちょっと意地悪く聞いてみた。実際にいいかもと言ったとしても全力で止めるつもりだ。
「は?あんな自分が全世界の主人公で俺がやっていることは全て正しい、俺は最も神に近しい存在だって思ってる奴のどこがいいの?」
わぁ〜由紀がゴミを見るような目をしながらそう言ってきた。というか相手の考えまで分かる検索って本当にやばいな…
「で!鍛えてくれるの?」
正直鍛えるのは全然いいが、中途半端に鍛えても集団で来られたり人質を取られたりするとダメそうだからどうしようと悩んでしまう。
「じゃあさ!!お兄がずっと私をそばで守ってくれてもいいよ!」
「それはやだ」
「ちぇっ!」
わざと分かりやすく舌打ちをするな!確かにずっとそばで俺が守ったらどんな事態でも解決できるがさすがに面倒だ。とりあえず一旦そのことは保留とした。
「ならお話は終わりにしてご飯作るわね」
「私も手伝うよ!」
と、一旦ダンジョンのことは忘れて久しぶりの家族団欒を楽しんだ。
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