完璧な停滞、進歩
雨野 じゃく
完璧主義
僕はここ2年間で、2度の失敗をした。
僕は卒業してから就職し、半年で退社した。周りに、そして過去の自分に流されるように仕事に就いた結果、業務内容に生きがいを感じず、死にながら生きているような感じがして、やめることを決意した。
退社してからはアルバイトをして、生活費をまかなっていた。
僕はやりたくないことをやらなきゃいけない環境から逃走したので、今度は自分の興味をあることをしようと思った。
自分の力を生業として生きていきたかった。
そう考えた時、直感でひらめいたのが、物語だった。
僕は物語を創り始めるために、たくさんの本を読み、たくさん勉強した。
これが僕の最初の失敗だった。
僕は完璧主義だった。
もう失敗したくなかった。
だから最高の物語を作ろうとした。
そうして勉強だけをしているうちに、気が付くと一年と半年がたってしまっていた。
しかし僕はまだ、物語が完成していない。
完璧ななんて存在しないからだ。
知識を詰め込むだけ詰め込んで、物語を作ろうとしなかった。
テスト前に掃除をする学生時代と、何も変わっていなかった。
僕は成果の出ない、ただひたすらに情報だけを集めるという愚行を犯した。
僕は必然的な異常事態に目を覚まし、実践することにした。
しかし、作ろうとしたものの、たくさんの本すべてに書かれていることを反映させなければならないと思っていた。
そうしないと、うまくいかないと思い込んでいた。
しかし、僕は作らなければならない。そうしないと人生は変わらない。
小説のコンテストの期限は三か月しかない。
その結果完成した作品は、知識が反映されているのかいないのかわからない、あいまいな物語になってしまった。
これが僕の二度目の失敗。
応募した作品の結果は帰ってこなかった。つまり、落選したということだった。
僕は一つの方法で、さらには一回で成功しようとしていた。
もちろん、それで成功することもある。
しかし、そんなことをできるのは天才や運の持ち主であり、現実的ではない。
僕は高校の時、何も専門性を身に着けようとはしなかった。
落選したのにもかかわらず、僕は安心していた。
ほらね、やっぱりできなかった。
そんなことを感じていた。
しかし、現実はいたって何も変わっていない。年を取っただけだった。
うわべの安心は、根柢の不安にすぐにむしばまれた。
僕はもう無理だと思った。
自分は能力が何もない。
だけど就職して働くような生き方はすでに失敗している。
どうもできない。
だけど死にたくない。生きがいを感じたい。
そんな時、物語が僕を救った。
物語は主人公が敗北し、それを乗り越えて勝利することが多い。
彼は失敗から学び、それを乗り越えて成功する。
これがもし僕だとしたら。
じゃあ僕の失敗は何だろう。
僕は過去を物語に置き換えて振り返った、考えれば考えるほど出てくる。
しかし一番の失敗は僕の性質、完璧主義だった。
完璧にするために完璧に準備をしようとする性質。
一つの方法で、一回で成功しようとする性質。
ちなみに、過去を物語として振り返る方法は、ライフストーリー法といって、自分を知るために有用な心理学の方法らしい。
僕は原因を見つけた。
だから僕は多くの方法を試すことにした。
僕が生業にしていける能力は何なのか。物語以外にはどんな選択があるか。
僕は小さく試していくことにした。
1%成長していくとしたら何をするか。リスクが小さい、現実的にできることは何なのか。
僕は考えた。毎日少しずつ考えていった。
その結果、三つの方法に決めた。
その中の一つに、やっぱり物語を創ることがあった。
僕は賞に応募することなく、小説投稿サイトに提出することから始めた。
長編ではなく、短編を乗せることにした。
毎日ひとつだけ、良い物語を作るための工夫を入れることにした。
完璧な物語へ近づいていくために。
そして今日、読者から初めて評価をもらうことができた。
初めてコメントが来た。
僕はものすごくうれしかった。
自分の力で、影響を与えることができた。
これを増やしていけば、生業となるのではないか。
人生は変わり始めている。
完璧な停滞、進歩 雨野 じゃく @Haruto_Okuyama
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