日本刀の片手遣いとかの話。
奇水です。
電撃文庫とかで書いてました。
最近は小説の仕事自体がありません。
誰か仕事くれるとありがたいです。
今回は刀の話です。
◆ ◆ ◆
私自身は武道の経験はほとんどありませんが、まったくない、というわけでもなく、また作品に武術を出す都合もあって、あちこち取材に行ったり、現代でも関心を持って定期的に検索したり、古武術クラスタの人たちの話題などを追っていたりしています。
色んな話が出てくるのですが、その中でも毎日のように出てくる話題が刀の話です。
刀――言うまでもなく、日本刀のことです。
日本刀みんな好きですね。
日本人ならみんな日本刀が大好きかっていうとそうでもないでしょうけど、日本刀についての話題は毎度毎日、何かしらTwitterのどこかで行われています。
刀の話題と言っても、美術刀剣としての話から、実戦刀の話、居合、ゲーム、あとちょっと変わったところでは砥ぎ……なんかの話題もあります。
その中でも気になるのが、刀の使い方である剣術、特に二刀流……もっというのなら、片手遣いのことです。
いつの頃からかは知りませんけど、日本刀は両手で使うものであり、片手遣いはよほどの怪力でもなければ使えない、みたいな話が出回ってました。
だから二刀流は実用的ではないとか、難しいとか、二刀流で有名な宮本武蔵であっても実戦では使用したことはないとか、武蔵も五輪書には実戦では使わないと書いているとか、二刀流は使えないと武蔵も書いてるとか……
まあだいたいこんなこんな感じでしょうか。
そこらの話はだいたい間違いというか、ここらのことをいちいち詳細を書いていけば時間がないというか、文字数が五千くらいかかると思うので、刀の片手遣いのことだけに今回は抑えときます。
さて。
刀の片手遣いはできるのか否か、みたいな話ですが。
結論から先に言えば、刀によります。
当たり前の話ですね。
長い刀は必然と重くなり、重心は先端に寄っていって、取り回しも悪くなりますから、短めの刀は普通に片手遣いされてました。
短めの刀というのは脇差しではないのか?
そういう疑問を持たれる方もいるでしょうけど、脇差しというのは予備の刀という程度の意味合いでしかなく、実はどれくらいから脇差しという長さの規定は特にないのです。
なので、二尺二寸(刃渡り66センチ程度)などの、ほとんど定寸である二尺三寸と変わらない脇差しもあったりしました。
(実は定寸という言葉についても色々と問題はあるのですが、煩雑になるのでここでは触れません)
当然のように、メインの刀が二尺一寸~一尺八寸である場合もあったようです。
これらは時代による流行の変化などもありました。
何せ日本刀の歴史は、鎌倉時代から江戸時代までとしても、12世紀から19世紀の七百年もあります。
これだけの時間があれば、戦場の様相も変化しますし、社会環境も一様ではなくなります。
刀の様子も、当然同じではありません。
一般的に、刀は鎌倉時代は片手遣いの太刀を騎乗で用い、南北朝の頃に長くなって両手遣いとなり、室町時代はまた片手遣いとなって、江戸時代に両手になった――
という風に言われています。
実際はもう少し細かい変化があったりしますが、その詳細はまた別にして。
ここらは大雑把な区分で、実際は鎌倉時代も両手使いしている様子が絵巻にあったり、いつの時代も片手使い、両手使いが混在していたと考えられます。
七百年の歴史の中で、刀がほぼほぼ両手使いだけになったのは、恐らくは江戸時代になってからでしょう。
その江戸時代でも、二尺三寸程度の刀ばかりになったのは亨保年間くらいからのようで、意外と新しいです。
まあ宮本武蔵の五輪書には『刀は本来片手で使う』とわざわざ書いているくらいですから、寛永年間くらいには両手使いがほぼ主流となっていたのは推察できますけども。
その武蔵も、最初は扱いにくいが、片手で使用していたらそのうちに片手遣いができるようになると書いています。
戦国時代に流行った片手打ち刀が二尺一寸前後であったことを考えれば、二尺三寸くらいの刀も、ちょっと重いけどさほど差はないですからね。
なのでまあ、刀は片手遣いは特に問題なくできるわけですが。
どういうわけか、刀は片手で使えない/使わないという話が世間では普及しているわけです。
不思議なものですね。
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