第65話 ありがとう姉貴

その頃の倫と月乃


倫「ありがとう姉貴」


月乃「何よ…藪からぼうに」


倫「風音に再会したから…改めて姉貴には感謝しかない」


月乃「倫も親だから分かるでしょ?子供達が大きくなって尚更あの時の両親達の思いが…」


倫「…分かるね」


月乃「21.2年前は、全く理解出来なかったわ。確かに18.19で親になるの?早いな。とは思ったけどね『倫は会社を継がなければならない』とかみんな両親や親戚達の都合じゃない。生まれてくる子供に対しても、『この先どうしようか?』なんて 話をしている事が理解出来無くて。倫が会社を継いで、親が一人前になったと認める迄。 それまでは私が預かるって思ったのよ」


倫「俺も『親の決めた人生を選んだんだから、文句無いだろ?』だから将来『これからは好きに生きるからいいよな?』って言える様にと反骨心で頑張ろうと思ったんだ」


月乃「両親二人して、先に生まれたるなを溺愛して。ふうちゃんが生まれたらどんな態度を取るんだろうって思ってたら… 同じ様に溺愛して。倫と風音ちゃんに悪い事したと後悔しながらも、様々な事情で一度決めた事を覆す事は出来なくて」


倫「俺は親を責められないよ。会社を守る為とか、親に認めさせる事を優先して…風音が大切で、好きな想いは変わらないのなら『風音を受け入れて欲しい』と親を説得しなければならなかったのに…姉貴が風音を 大切に思っていてくれた事が…俺は感謝してもし切れないんだ」


月乃「 ふうちゃんの事ね、親として本当に許せ無くて…けど、ふうちゃんに『人に話してもいいか?』って確認もしていないし。倫の考えもあるのに私が勝手に人話す訳にもいかないものね。けど苦しくて…誰かに聞いて欲しかった… そんな事を考えてたら、風音ちゃんに、倫と再会したって『なぜ教えてくれなかったの?親として子供が苦しんでいるのを見過ごす訳にはいかないしゃないの!』って凄い怒られたわ」


倫「運命だよな。風音は 、山乃くんの勤める雑誌社の上司だったんだ。彼に事件の事を聞いて 風化させたくないと思って。 資料に目を通した時に被害者の名前が風歌だと知って。 親として助けられ無いとしても第三者の立場からでも助けるって思ったって」


月乃「 子供の成長って 時に親としては悲しいものね…るなはリョウくんに想いが届いた様だし。ふうちゃんもね。まだお会いした事のない方なのに。るなに、風音ちゃんに、倫の口からも山乃さんの名前が何回も… 嬉しいけど複雑だわ」


倫「確かに… 親としては複雑だし寂しいけど…山乃くんの風歌への愛。涼也くんのるなちゃんへの愛。 二人の『守りたい』という強い想いがようやく施設側と戦うスタートラインに立てたのだから…感謝しなきゃなんだよな」


倫side


感謝してるんだ

そう言うつもりだったけど …


親としてどうにもこうにも

心情が複雑過ぎて…


感謝しなきゃなんだよな


なんて言い回しになってしまったんだ…







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る