第63話 退院おめでとうと、一歩踏み出す勇気

風歌side


風歌の個室


心紀「ふうちゃん退院おめでとう」


夏輝「ふうちゃんおめでとう」


風歌「冴多先生、夏輝先生。お世話になりました」


半年間の入院を経て退院が決まったの


冴多先生と夏輝先生に出逢えた事

感謝の思いしかないの


風歌「冴多先生、夏輝先生に出逢えて幸せでした。私がずっと理不尽と感じて来た事を沢山聞いて下さって。介護施設への憤りを訴える手立てを沢山考えて下さって。本当にありがとうございました」


夏輝「ふうちゃん、いつでも顔を見せに来てちょうだい」


心紀side


ふうちゃんキミは優しい女の子だね

施設への憤りや、怒りにうち震えながら


『お年寄りは人生の先輩なんですよ。可哀想過ぎます』


『自分のイライラを、人にキツク当たって晴らすのは恥ずかしい事だと思う』


いつだってお年寄りや

同僚に対しての市の職員の態度への

理不尽な仕打ちを訴えて


自分が皆を苦境に立たせたんじゃないか…

って涙して


夏輝「冴多くん大丈夫?」


冴多「マジで許せないですよね …ふうちゃんと来栖さんが 一歩間違えたら尊い命を落としていたかもしれない事件。 施設側嘘のせいでずっと自分を責めて…」


ふうちゃんは今

"みんなの部屋"で子供達主催の

"退院おめでとう会"で

子供達の為にピアノを弾いている


子供達の好きな

アニメ主題歌や国民的アイドルの

ハッピーな曲だったり


その音色は少し前までの

悲しさを漂わせる感じは一切なくて…


子供達の 一生懸命作った

折り紙のメダルや

色紙を嬉しそうに受け取っている

ふうちゃんの子供達を見つめる瞳は

慈愛に満ちていて


とても綺麗だ…って思ったんだ


迎えに来た源本さんと

一緒に 帰って行ったふうちゃん


心紀「俺、ふうちゃんの思いを聞いて助けてあげたいと 思いました。けど、そこから先 一歩踏み込んで、ふうちゃんの心の中に、俺を… 努力しなかったんです…」


夏輝「冴多くん…」


心紀「俺は友達として戦いますよ。友達が悔しさや不安の中で涙してるんですから。友達の恋を見守って応援するのが俺の役目です」


心の中を吐露したら


(凄い気持ちが軽くなったなぁ)


英ちゃんに


『冴多ちゃんは、本当は人見知りだもんね?』


そういつも言われてた


だから自分から積極的に人に声を掛けて

『仲間になって』

って声掛けて


今でも人に声を掛ける時は

勇気が沢山必要になる


俺と同じ様な思いを

抱いている人達の

思いを聞いて

手助けするのが俺の…


心紀「夏輝さんも不器用な人ですよね。 一見サバサバしている様で、人の思いに涙して… 時に苦しそうにしている優しい女性ですよね」


夏輝「何よ…急に…」


あ、 少し踏み込んじゃ行けないトコに触れたかも…


心紀「俺、今度こそ好きな女の子には一歩踏み出して 頑張ろうかな…」


ふうちゃんが退院して

『寂しい』

と泣いている子供達の傍に行き


絵本読み聞かせしている夏輝さん


俺の独り言のような告白に

赤く頬を染めてたから


聞こえてたよね?


一歩踏み出す勇気を下さい
















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