Viluce( ヴィルス)
ネコイル (猫頭鷹と海豚🦉&🐬)
第1話 猿のような生き物
ここはかつての地球であり、都市であり、一つの建物の一部であったところだ。
今となっては土壌から草木の生い茂る原生林と化している。そんな世界に動く影があった。それは猿のような生き物だ。だが、それは猿ではない。猿というのは人間の勝手な分別であり、その生き物にとっては何の意味もなさない。だからここではそれを猿のような生き物としよう。
それはこのかつて人間が生きていた世界の中から様々なものを見つけては観察することを楽しみとしているようだ。いったいどれだけの年月が経ったのかは定かではないが、それらはまだまだ形のみならず、その機能を有していた。その生き物にしてみれば、そこいらに生える草木よりも土や草に埋もれた人類の忘れ物の方が、いつ来ても終わらないアトラクションのように写るだろう。
その日、それが見つけたのはとある小さな機械だった。いくつか押し込めそうな枠が見られる。その集合体の先には細長い線で穴があけられている。どうやらそれが手にしたのはボイスレコーダーのようだ。果たして音声は残っていたとしてそれに理解することなどできるのだろうか。それは人間ではないというのに。
それが何の気なしに真ん中の枠に指を当て力をこめると、カチッという感触と共に穴の中から音が聞こえてきた。それははじめ何処から音が聞こえてきているのか分からず怯えた様子だったが、やがてその小さな機械の中から聞こえてきていると理解したそれはおずおずと耳に近づけていった。
「翻訳言語の設定を行います。はじめまして、ご利用者様のお名前をどうぞ」
唐突に聞こえた音声にそれは思わずその機械を凝視した。きっとそこに生き物がいるとでも勘違いしているのだろう。それだけでもこの生き物が人間に近い知能を有した生き物であると窺える。やはり猿のようという見解はあながち間違いではなかったようだ。
「翻訳言語の設定を行います。はじめまして・・・
相変わらず同じ音声を発し続ける機械にそれは段々と恐怖心を解き始める。ゆっくりと耳に近づけていき、その内容を聞き入れる。
「・・・を行います。はじめまして、ご利用者様のお名前をどうぞ」
「nOAdskんりd、wl」
それは機械から聞こえる音声の意味など理解はしていなかった。しかし、それの中で何か反応するものがあったようだ。それのまるで言語とはいえない音に対して機械は、最も近いと判断したかつて英語とされた言語に設定し、そこに記録された人類の進化と退化の歴史をそれに話始めるのだった。
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