第31話 ストーリーは突然に

「うぉ?! どうしてレイがいるんだ?!」


「そっちこそ、なんでいきなり目の前にいる訳……?!」



俺達3人は、互いに驚愕の表情を見合わせる事となった。


しかし呆然とする間もなく、

周囲から聴こえる大量の歓声が俺達の耳を貫く。


まるでナイタースタジアムみたいだ……

ライトに照らされた俺達を囲う様に観客席があり、

全方位からヤジが飛ばされる。


俺たちの足元には、円形の舞台らしきものが置かれていた。


これはあれだ、武闘会とかで見るやつだ……



「なんだよこれ!

 まさかタクオの表現なのか?!」


「いや、知らないよ!

 これってどう見ても、コロシアムだよな?」


「こんなふざけた事をするの、

 神に決まってるよね……」


「当然ですよ!決勝戦ですからね♪

 神様がそれに相応しいステージを用意してくれたんです」



その声に振り向くと、もはや聞き慣れたシャッター音がした。

俺達を激写しているのは、当然クラムちゃんだ。



「いやぁ、コロシアムって映えますよね〜!

 写真写真♪」


「クラムちゃんも来てたのか!

 良かった、それで次の相手は一体……」



クラムちゃんに近寄ろうとする俺を、レイの手が制した。

レイに漂う雰囲気が、妙に張り詰めているのを感じる。



「まだ分からないの?

 なんであの子が、反対側にいるのかさ……」



その言葉を聞いた瞬間。


クラムちゃんはニコリと微笑んで、

初めて会った時と同じ、とびきりキュートなウインクをした。



「私が対戦相手!

 IN☆STARのクラムです♪」


「……はぁぁぁ?!」



クラムちゃんのウインクに、

コロシアム中から物凄い歓声が聞こえる。


さすがは異世界アイドルだ……と称賛したいものの、

対戦相手という言葉が、俺とクラムちゃんの間に壁を作っていた。



「だって、ただコンテストを見に来ただけだって……!!」


「すみません、実は私も参加者なんです♪」


「僕たちが神のページを持っていなかったから、

 参加者名簿を見る事が出来ないのを利用したんだろ」



いつも敵の説明をしてくれたのは優しさじゃなくて、

名簿を見せろと言わせない為だったのか……?!



「正解です☆

 コミケさんたちの影に隠れて、大変ラクが出来ましたっ!」



この際やらかした事に関しては、許容するとしてもだな……


チーム名をコミケって略すのはやめてくれ、恥ずかしい!!!



「皆さんが勝ち残ってくれて、本当に良かったです。

 これで私の表現を、最大限に発揮できる……!!」



クラムちゃんの携帯から、

突然モニターの様な青白い光が放たれた……


その眩しさに、俺たちは慌てて視界を守る。


指の隙間でクラムちゃんを覗くと、

彼女の周りには大量の写真が浮かび上がっていた。


そこには何故か、俺たちの姿が写っている……!!!



「なんだこれ?!一体どうなってるんだ……!!」



彼女が激写してきた、俺たちの写真。


戦っている姿も、日常の姿も……

いつの間にこんな大量に撮ってたんだ?!


こんな時にも関わらず、

俺は自分の写真写りが若干気になってしまった。



「私の表現力は、ストーリー……

 皆さんの軌跡を辿って、

 絶対に勝てない相手の姿を現実にする!!」



クラムちゃんの言葉と共に全ての写真が瞬き出して、

竜巻の様に吹きすさび、クルクルと回転し始めた。


渦が狭まり激しくなる程に光は増していき、

やがて人ひとり程の細さまで絞られていく……



次の瞬間。

大量の光を放って、数多の写真が弾け飛んでいった。


その中から、

選ばれし人影が満を持して登場する。


それは、制服を着た女の子の姿だ……



「……私の名前は、ハテシナユメコ」



「俺たちが絶対に勝てない相手って、

 ハテシナかよ?!?!」



君たち、本当にユメコが大好きだな……


これには神すらも突っ込まずにはいられなかった。

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