第2話

 放課後。

 追試も終わり、晴れやかな気持ちでの下校。

 私は、一人の女子生徒に誘われ、一緒に帰ることになりました。


 相手は、土御門まゆりさん。

 今週、めでたく退院したまゆりさんは、私と同じ学校であり、クラスメイトであり、追試仲間でした。と言っても、まゆりさんの場合はテスト自体受けていなかったので、私の追試とは違う意味なのですけれど……。


 とにかく、そんな晴れやかな気持ちの下校を、まゆりさんに誘われ一緒に帰ることになりました。


 「そう言えば、ちゃんとお礼を言っていなかったわね。先日はありがとうございました」

 「お礼だなんて、それに本当に助けたのは迷斎さんなので、お礼は迷斎さんに」

 「ああ、あの不気味な男ね。そう言えば、あの迷斎さんて何者なの? 下品な様で品格を感じるし、大人な様で子供でもある。まったく真逆の相反するものが、同時に存在しているような――、一言で言えばカオス?」


 混沌としているのは確かです。まあ、あの人の場合は存在よりも思想がカオスなのですが……。


 まゆりさんは、さらに話を続けます。


 「とにかく、私が聞きたいのは、あの迷斎さんと弁天堂さんが付き合っているのかってことよ」


 「…………ええ!!」


 私と迷斎さんが付き合う!

 あり得ません。あり得ません。あり得ません。


 三回心の中で言いましたが、やっぱりあり得ません。

 私の理想は、優しくて、性格が良くて、人を思いやる気持ちを持っている人。一言で言えば、迷斎さんと真逆の人。

 だからこそ、迷斎さんと付き合うことは、未来永劫あり得ません。


 「付き合ってないよ! 変なこと言わないで!」

 「ふん…………その様子だと、本当みたいね。……良かった」

 「良かった? それって……土御門さん――」

 「まゆり! まゆりって呼んで。私も美咲って呼ぶから」


 そう言って、まゆりさんは私の頬に軽くキスしました。

 えっ?

 これってどういうことでしょうか?私は、鼓動が早くなり、頬が熱っぽくなるのを感じました。


 「私ね、美しいものが好きなの。美咲って、かなり美しいと私は思うのよ」

 「ええ! 私よりも、土御門さんの方が断然美しいよ!」


 さえりさんが綺麗だった様には、まゆりさんもかなりの美人で、吸い込まれそうな瞳に長いまつ毛、顔立ちも整っていてモデルのようです。


 「もう――まゆりって呼んでよ! 美咲だって、スタイルいいし自信を持ってよ。本当なら、今すぐ人気のないところに連れ出して、押し倒したぐらいよ! 私のこと嫌い?」


 冗談かと思いましたが、まゆりさんの目は笑っていませんでした。


 まゆりさんはレズな様で、私はどうも特殊な人を引き寄せてしまうようです。


 「と、とりあえず――まゆりさんで。友達から始めません?」

 「ふーん。まあ、美咲がそう言うならそれで。これからもよろしくね、美咲さん」


 貞操の危機――もとい、身の危険を回避してまゆりさんと友達になった下校途中。

 一人の男性と、私は知り合うのでした。


 そして、私は特殊な人間を引き寄せてしまう、自分の運命を思い知らされるのでした。

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