第364話 アポ取りの理由
ルイスは、早朝に暇になりポーションを作っていた。すると、グレンが暢気に入って来る。
「グレン、おはようございます。この時間に、グレンが起きれてるの珍しいですね。」
手を止めて、少しだけ驚いてから優しく微笑む。
「ルイス、おはよー。いや、トイレに起きて寝ようと思ったら寝れなくて。ログインしてみた。」
欠伸しながら、笑顔で近づくグレン。
「ちょうど、トキヤさんも休憩ログアウトから帰って来ましたね。お茶でも、淹れましょうか。」
ルイスは、素早く片付けてから立ち上がる。トキヤは、2人に挨拶してからチャットを確認する。そしてから、少しだけキョトンとすると笑う。
「ルイス、アポを取りたいチャット来てる。」
「おや、どちらさんでしょう?」
ルイスは、ティーカップを出しながらキョトンと聞き返す。表情を見るに、悪い案件では無さそうだ。
「アメリカサーバーのブレイブだ。」
ブレイブさん。ふむ、前回アポなし訪問でいろいろありましたからね。わざわざ、ありがたい。
「ですが、僕に何の用事が?」
ルイスは、思わず疑問を浮かべる。紅茶を淹れながら、トキヤの言葉をのんびりと待つ。
「知らんけど、アメリカサーバー革命で俺が居ない間に、男子会してたんだって?また、やりたいんだとさ。持ち寄りで、楽しくお茶しようって話だ。」
トキヤは、優しく笑いながら言う。
「つまり、俺も参加対象か。」
グレンも、参加していたのでそうなのだろう。つまり、あの日のメンバーは来るのは確定。
「良いですが、詳しい人数と好き嫌いが知りたいですね。せっかくお茶会ですし、美味しい物を食べて欲しいのです。その他のやり取りは、任せても大丈夫ですか?僕は、この後に出かけるので。」
ルイスは、紅茶を渡しながら暢気に言う。タイミングが悪く、砂糖を買い忘れてしまったのだ。お菓子を作るには、とてもじゃないが足りないだろう。
「分かった、チャットに送るから暇が出来たら見てくれ。ちなみに、俺も対象らしいから行くぞ。会場だが、やっぱり花園が良いだろうか?」
トキヤは、頷いてから疑問を呟く。
「いいえ、此処に招待しましょうか。」
ルイスは、紅茶を飲んでから言う。
「その心は?」
「花園は、品が有りすぎるのです。フランクに楽しむなら、此方の方が落ち着くのではと。」
トキヤは、なるほどと嬉しそうに笑う。
「何です?」
ルイスは、不思議そうに笑うトキヤを見る。
「いや、何でもない。」
トキヤは、他人に無関心なルイスが他人に気をつかう事が嬉しかった。人間不信の壁に、亀裂が入っているのでは?っとつい希望的観測をしてしまう。グレンは、気持ちが分かるので無言で頷いている。
「おはようっす!男子会の準備、手伝うっす。」
「ルーカスも、参加者なんですね。」
ルイスは、紅茶を渡しながら言う。
「ルイス兄貴、豪華メンツっすけど。その、大丈夫っすか?これ、参加メンバーのリストっす。」
ルイスは、リストを見て思わず乾いた笑い。トキヤに紙を渡すと、トキヤは思わず笑ってしまった。
「これ、踏み込みに来てるぞ。」
トキヤは、ニヤニヤしながら言う。
「やっぱりっすか、兄貴の線引きを超えようと。」
ルーカスは、心配そうにルイスを見る。つられて、グレンとトキヤも視線を向ける。ルイスは、何とも言えない表情である。3人は、苦笑する。
「いえ、寧ろ人間不信を克服するチャンスと考えましょう。線引き云々は、取り敢えず放置です。」
深呼吸をして、何とか言葉を出している。
「無理しなくて良いぞ、そう言うのは時間をかけて治すもんだ。無理して、心を壊す方が怖い。」
トキヤは、そう言うとクッキーを置く。ふざけてしまった、ルイスへの謝罪でもあった。身内に甘々なルイスは、小さくため息ついて許すのであった。
朝は、基本的にお菓子は出さない。けど、ルイスも考え過ぎて疲れたのかクッキーに手を伸ばすのだった。その後に、美味しさに機嫌が良くなるルイス。チョロいというか、現金なやつというか…。
「ルイス兄貴、それで手伝いは?」
話題を変える様に、ルーカスは明るく言う。
「お茶会は、いつでしょう?」
「明日の夕方っすね。」
ルーカスの言葉に、呆れた雰囲気のルイス。
「夕方とはいえ、前日にアポ取るとか…」
トキヤは、思わず口に出す。まさに、それである。
「明日、お店が休みでなければ地獄でしたね。」
ルイスは、苦笑しなが言う。3人は、頷いた。
「でしたら、買い出しをお願いしても良いです?」
ルイスは、紙とペンを取り出して素早く書く。そして、買い物リストをルーカスに渡した。
「これくらいなら、俺一人で行けるっすね。」
そう言って、歩き出した。
「僕は、部屋の掃除をしますね。トキヤさんは、セッティングを考えてください。出来れば、明るめでラフな雰囲気が望ましいですかね。」
「俺は?」
グレンは、キョトンという。
「お掃除か、招待状の準備か。頼んだのはあちらですが、図々しいかもと来にくい雰囲気になるのはいただけません。どうせなら、此方から招待状を送って来やすい雰囲気を出した方が良いのではと。そこら辺は、ブレイブさんと話し合いしないと何とも言えませんが。トキヤさん、どうかしました?」
「そういう所だよな、天然無自覚人たらしめ…。」
トキヤは、グレンに聞こえる様に呟く。
「やっぱり、攻防戦がそっちでも起こってんの?」
グレンは、苦笑しながら言う。
「水面下でな。けど、使い潰されるのが分かってるからやらん。道具にしか見てない、馬鹿に弟は渡さん。炎天時代から、俺達の弟だったんだ。」
「だよなー。そもそも、本人の意思を無視した発言が許せねぇ…。聞いてすら、言ってすらいないのに周りから引き剥がそうとか舐め過ぎだっつーの。」
ルイスは、キョトンとしている。取り敢えずと、ティーカップを洗い掃除道具をはこぶのだった。
「最近、やけに静かになったけどな。」
トキヤは、ため息ながらに言う。
「確かに、急に沈黙したな。なんでだろ?」
少しだけ、驚いてから首を傾げる。
「知らない。烏丸でも、分からん事だしな。取り敢えず、俺達も動くか。ルイスも行った事だし。」
「招待状…。どう書くんだろ?よし、掃除しよ!」
悩んだ末に、放棄してルイスを追い掛けるグレン。
「さて、俺もする事をするか…。」
全員が去った部屋で、烏丸は苦笑する。2人の会話は、全部聞こえてた。しかし、2人とも忘れているのではないか。大切な人に、危害を加えるやからにルイスが気づかない訳がない事を。身内に甘いルイスだが、敵を認識すれば無慈悲である事実を。そして、烏丸の主はルイスだという事である。
口止めされてるので、申し訳ないでござる。
何気に、互いが思いやり助け合うこのクランは、とても良いクランなのであった。今日も、breezeは平和なのである。そして、その雰囲気に呼ばれ導かれる様に、たくさんのお客さんが来るのであった。
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