第311話 悪夢と求めたもの

生まれた時から、無自覚に魅了を発動していた。そんな私は、とても母親に嫌われていた。自分より、私を可愛がる夫に日々イライラしていたのだ。


自分が、嫉妬していると理解してなお。私を、怒鳴り暴力を振るい何かと罰を与えた。


私はただ、愛して欲しかっただけなのに…。


そして、私が邪魔になったのか売り飛ばした。どうして、私が欲しいのは…親の愛情だけなのに!


そこで、目を覚ます。


また、昔の夢を見た。結局、私の欲しかった…求めたものは手に入らなかった。純粋だった私は、いつしか強気な態度でしか身を守る事が出来なかった。


「……カロの影響かしら。」


リリアは、カロが羨ましかった。自分とは違って、親に拒絶されず愛されていたのだから。


「羨んでも、こればかりはどうしようもないわ。」


そう呟くと、ベッドから降りて身支度をした。




ルイスは、リリアの顔色を見て苦笑する。


「寝つきが悪かったんですか?」


「…ちょっと、昔の夢を見ただけよ。」


ルイスは、なるほどと頷いて紅茶を飲む。紅茶の香りと、本をめくる音に思わず寝落ちするリリア。


「お邪魔しまーす。やっと、これたよ…」


そう言って、レイが入って来た。


レイ

ルイスの従姉妹で、ゲーム好き。アメリカサーバーに居たが、やっとこちらに来れる様になった。トキヤと犬猿の仲で、時折り喧嘩する事もしばしば。


「その子、体調がわるそうだねお兄ちゃん氏。」


「此処に来る人達は、訳ありが多いのです。特に最近引き取った、2人の子供はまだ傷が癒えていません。心配ですが、何も出来ないのは歯痒いです。」


「この子の場合、見覚えのある顔してるけど。こんな顔するのは、親の愛情に飢えた子供だけ。」


レイは、真剣な雰囲気でリリアの隣に座る。


「昔の、私やお兄ちゃんと同じ顔だよ。」


すると、トキヤは無言で苦笑。ルーカスは、小さく驚いている。グレンは、複雑な雰囲気である。


「この子は、もっと酷いです。母親に虐待され、最後には売られてしまったのですから。僕達の方が、まだ境遇的には断然マシだと思います。」


ルイスの言葉に、レイも無言で頷くのだった。


「さてと、取り敢えずレイ。日本サーバーへ、ようこそなのです。歓迎するのです。」


「うん、よろしくお願いしまーす!」


リリアは、目を覚ます。すると、レイは優しく抱きしめる。レイは、暖かい声音でリリアに言う。


「甘えたい時は、お姉ちゃんに甘えにおいで。貴女の母親には、なれないけど存分に甘やかしてあげるんだから。私が、兄さんにそうして貰った様に。」


リリアは、驚いて涙を流した。


「あり…がとう…」


「あ、泣かしやがった…。」


トキヤが言うと、小さな言い合いが始まる。リリアは、思わず笑ってしまうのだった。


もう、昔の家族なんて要らない。


ここには、私を思ってくれる家族が居るから。


「相変わらずですね、そろそろ止めますか。」


そう言って、両成敗と割り込むルイス。


「もう、気を張ってるのが馬鹿みたい。」


「この人達の前じゃ、どう取り繕っても無駄な気がする。だから俺は、早々に諦める事にしたよ。」


カロは、そう言うとハンカチを渡した。


「ふふっ、そうね。」


リリアは、此処に来て一番の笑顔を見せるのだった。それから、全員でお茶を楽しむのだった。


「やはり、レイ様もルイス様に似ているな。」


「ルイス様も、似た境遇だったのか…。」


バロンは、考える雰囲気である。


「あのさ、自分も甘やかされる対象だって、忘れてねーか?俺達の主。さてさて、困ったもんだ。」


ドラコフは、ため息を吐き出している。


「ここも、また賑やかになったな。」


カリオストロは、素っ気なく呟く。


「なんだ、嫌なのか?」


ドラコフは、笑う。


「違う。ただ、毎度面倒事を押し付けられるだろ?だから、少しだけ釘を刺しとくかと思ってな。」


カリオストロは、険しい雰囲気である。


「確かに、ギルドマスターやらフェンリルやらその他もろもろにな。よし、俺も手伝うとするか。」


こうして、2人はでかけるのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る