第309話 再会と別れ

次の日の朝…。宿なので、体は消えない。ルイス達は、まだ寝ているが住民達は早く起きていた。キリアは、素早く準備して部屋から出て行った。


今日は、カロの父親に会う日だからだ。


「おはよ、その様子だと寝れてないな。」


トキヤは、欠伸をしてからカロに言う。カロは、嘘ついてもバレると理解したのか苦笑して言う。


「かなり、緊張して…俺。」


「まあ、無理もないでしょうね。」


ルイスは、まだ少しだけ眠そうな声音で言う。カロは、驚いてルイスを見る。ルイスは、優しく微笑むと仕方ないという様に頷いた。カロは、安心する。


「寝不足で、会いに行くつもりか?」


グレンは、寝ぼけながらも伸びをして言う。


「少し仮眠してから、行けば良いのですよ。」


ルイスは、いつもの装備にして小さく欠伸。トキヤ達も、戦闘装備になり準備をする。


「ムートさんの名前って、本名なの?」


「残念ですが、本名ではないです。そもそもムートの由来は、僕達の世界で伝説に出てくる竜から来てます。どうやら、話を聞いて気に入られた様で。」


ルイスが、思わずといった雰囲気で笑うと、カロも釣られて笑ってしまう。何気に、可愛い所もある竜王に知ってたトキヤ達も小さく笑った。


「ムートさんに、旦那って呼ばれてたよね?」


カロは、キョトンとして聞く。


「同盟の盟主には、旦那や姉御って言うんです。」


カロに、のんびり説明して全員で部屋を出る。




竜国の中心にある、守護塔。竜王が、待っている。


意外にも、邪魔される事なく辿り着く。ルイスは、この時点で嫌な予感がしていた。竜王を見れば、険しい雰囲気である。しかし、親子の再会の時だ。


邪魔する訳には、いかない。


「ルイスの旦那、油断するなよ。」


「勿論です。」


短く言葉を交わせば、トキヤ達も警戒している。カロは、目を閉じて微動だにもしない竜に近づく。


「お父さん…?」


すると、ゆっくり目が開かれる。


「カロ…。ああ、可愛い我が子。良かった、ちゃんと生きていた。会いたかった、本当に…」


涙を流し、翼でカロを優しく包み込むシェン。


「僕も、とても会いたかった。でも、怖くて。」


カロは、子供らしく泣いてシェンを抱きしめる。


「私達は、ずっとカロを愛しているよ。それは、死してなお、変わらない。だから、怖がらないでくれるかい。もっと、早く会いたかったけど。もっと、愛情をあげたかったけど…本当に、ごめんね。」


シェンは、立ち上がる力もなく悲しそうに言う。そして、ルイスに視線を向けてから言う。


「これからも、カロの事をお願いします。」


ルイスは、優しく微笑み無言で頷く。


「ありがとうございます、龍人様…。」


そう言うと、カロを優しく見つめる。そして、一晩だけ一緒に過ごした。目的を果たし、息子に見守られ守護竜シェンは死んでしまった。


ルイスは、警戒を促す。


「竜人カロ、守護竜様を殺した疑いで捕縛する!」


そう言って、竜達が入って来たのだ。


「何を言ってる。守護竜は、病気で死んだんだ。」


竜王は、カロを庇う様に立つと険しく言う。


「カロに会わなければ、まだ生きてたかもしれないのに。安心したせいで、死んでしまった!」


その言葉に、カロは無言で体を震わせる。きっと、このままだとカロは、心に傷を負うだろう。


「カロ、よく聞いてください。守護竜さんは、もう既に体がぼろぼろでした。神様の見立てでも、今日が限界と言われてたんです。どの道、カロに会えても会えなかろうと…死は、確定していたのです。」


ルイスは、悲しそうに説明している。カロは、それを見て嘘ではないと判断した。竜王やトキヤ達も、無言で同意する様に頷いて武器を構える。


カロは、指輪を外し竜の力を解放した。


「このまま、竜国に留まるつもりだろ!」


「俺は、帰るよ。」


カロは、真剣になり攻撃を竜化した腕で弾いた。


「だって、俺は…俺の帰る場所を見つけたから。」


竜の力は、カロを応援するかの様に暴走しない。


「こんな俺を、暖かく迎えてくれる大切な人達と出会えたから。俺は今、最高に幸せだから…。」


ルイスは、小さく驚きトキヤ達は優しく笑う。


「だから、ごめん…。まだ、死ねない。」


「死ねぇええ!」


竜は、素早く攻撃してくる。ルイスは、間に割り込むとカウンター技を相手に叩き込んだ。


「言ったでしょう、うちの子達に手を出したら其れ相応の事をすると。勿論、覚悟は良いですよね?」


ルイスの言葉に、竜達は狼狽える。


breezeメンバーは、竜達をボコボコにした。


「お父さん、出来ればもっと早く会いたかった。」


カロは、穏やかに息を引きとったシェンを見る。


「ごめんなさい。僕も、なかなか言い出せなくて。ここに入る為、書類を出しても通らなくって。」


「雇い主…ルイスさんは、悪くないよ。」


そう、カロは言うといきなり倒れてしまった。ルイスは、素早くカロを支えて抱き抱える。


「カロ、無茶し過ぎなのです。」


「多少無茶しても、仲間ならカバーしてくれるかなって…ごめんなさい。それと、ありがとう。」


そう言うと、気を失ってしまった。久しぶりに、竜の力を使った反動は大きかったのである。


ルイスは、定期的に戦闘に連れ出す事にした。


こうして、ルイス達はbreezeに戻って来た。暫くして、竜王から竜達についての報告があった。新しい守護竜は、メットという若竜に決まった事。襲ってきた、竜達の処遇などである。


ルイスは、無言でそれを破り捨てたのだった。









作者の謝罪


遅くなってすみません。最近、忙しくなっており短過ぎたので、今回はいつもの量で書きました。

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