第265話 悪い知らせと傾く戦況

ルイスは、紅茶を飲むと男が入ってくる。敵なのは理解していたが、トキヤ達は不在である。


「おや、どちら様でしょう?」


「お前が、ルイスか?」


ルイスは、無言で頷くと男は笑う。


「魔物軍に、参加しないか?」


男は、笑顔で言う。ルイスは、断る。


「お断りします。」


ガシャーンと、ティーカップが割れる音に外のプレイヤー達は驚く。グレンは、素早く走り出す。


しかし、魔物が現れる。


「邪魔だ!どけ!」


すると、トキヤの放った矢が左右からの敵を倒す。前から来た魔物は、ルーカスが死霊術で倒した。


男は、グレンの足音に面倒そうなため息。


「酷いです、お気に入りのティーカップだったのですよ?まったく…。それで、離してくれません?」


ルイスは、男に部屋の壁に押さえつけられている。しかも、首を掴まれている為に下手には動けない。


「お前、この状況でやけに冷静だな。」


「万が一、僕が死んだところで作戦には変わりないですからね。何です、取り乱して泣き言を言った方がお好きですか?僕、演技は得意ですよ?」


ルイスが、鼻で笑って明るい口調で言えば、男は思わず苦笑してしまう。そして、首から手を離すと次の瞬間にスタン技をルイスに入れる。


そして、スタンが入ったのを確認してから呟く。


「わざと、抵抗しなかったな…。」


少しの会話だったが、うっかり情報を言っていた事に気が付いていた。誘導的な会話が、上手過ぎるのだ。そして、同じ手での侵入もおそらく2度と使えないだろう。悔しいが、戦場で殺すと決意する。


男は、苦笑すると去って行った。


殺さなかったのは、試合に勝って勝負に負けた感覚からだ。全然、喜べない勝利。


すると、グレンが入ってくる。男は、窓から外に出て鳥の魔物に乗って逃げてしまった。グレンは、ルイスに近づく。ルイスは、スタンが切れて近くの椅子にゆっくりと座る。そして、一言だけ呟く。


「裏切者が、エルフ国側に居そうですね。」


すると、トキヤが入って来て言う。


「ルイス、何があった?」


「魔物側に、スカウトされただけです。」


ルイスは、あっさり言うと暢気に笑う。


「何で、殺さなかったんだ?」


グレンは、キョトンとしている。


「確かに、暗殺者でしたけど何故でしょう?」


ルイスは、新しいティーカップを出しながら呟く。


「そんなの、一つに決まってる。おそらく、プライドの問題だ。ルイス、情報を少しでも奪えたか?」


トキヤは、真剣な雰囲気である。


「少しだけですが、バッチリなのです。」


ルイスが、笑顔で言えば深いため息のトキヤ。


「ルイス、葛葉になれるか?」


「なれますけど?」


ルイスは、葛葉になるとトキヤは尻尾をモフモフ。


「ひゃんっ!」


「何度も何度も、捨て身の技を使うなとあれ程に言っただろうがぁ!この、馬鹿リーダー!」


トキヤの激怒に、葛葉は子狐になって逃げる。


「違いますもん!僕だって、予想外で…」


すると、背後から影が。リルは、座ると前足の間の空間に子狐葛葉を咥えて置いている。葛葉が動こうとすると、前足をクロスして子狐葛葉の頭の上に軽く顎を置いて、出さない様にしている。


困惑する、子狐葛葉。


少しだけ、震えている。大切な主人が、死にそうになった恐怖に震えているのだ。ソルも、リルを気遣う雰囲気。そして、無言で隣に座る。


スコルとハティも、鳴きながら近づく。


抜け出せない葛葉に、トキヤは真剣に言う。


「リル、暫くそのままで。絶対、逃すなよ?」


リルは、頷くのだった。トキヤは、外で心配そうなマッキー達の場所に向かった。グレンは、護衛役。


ルーカスも、部屋を出て行ってしまうのだった。


ルイスが襲われたと、悪い知らせに同盟の人達は動揺する。そして、マッキーからの報告を聞く。


「こっちも、悪い知らせだ。エルフ国軍のプレイヤー達が、無謀に突撃した。恐らく、エルフ国側に裏切者が居る。しかも、証拠が掴めない…最悪だ。」


マッキーは、焦る雰囲気で苦々しく言う。


「ルイスも、同じ事を言っていた。取り敢えず、今後はグレンとリル達が護衛につく。」


すると、ジェイド達が走って来る。


「大丈夫か、何があった?」


「ルイスが、魔物軍側に襲われた。」


すると、周囲の人はざまぁ見ろと嘲笑う。しかし、ジェイド達の表情を見て固まる。


「すまない、俺のせいで後手に回ってしまった。」


「取り敢えず、聞きたい事もある。」


ジェイドは、謝りヴァンは前向きに言う。


「分かった、30分後に俺達の拠点に来てくれ。」


そう言うと、全員が解散するのだった。

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