償う罪

@mannya

第1話

熱帯夜はなんだか損した気分になる。

茹だるような暑さの昼を乗り越えた先に、今度はじっとりとした暑さがやってくる。

態々買った薄手の生地のパジャマがべっとり肌に張り付いて、動くたびに苛立ちを覚える。

そんな夜を迎えると私はいつも、昼の暑さを我慢しなければよかったと後悔する。

さて、我慢しなかったところで何が変わるのかは誰にもわからない。


なぜこんな話をしたのかというと、案の定季節は夏で、更に言うのならば今日は熱帯夜だからだ。


「近江先生、もう少し…ですから」


少し前から今にも消え入りそうな声が聞こえる。

まだ私より若いのに、ぜいぜいと肩で息をする彼女は、そういえばあまり外で遊んだことがないと言っていた。


一度下ろしますか、私が尋ねると彼女は首を横に振った。

彼女を休ませたいという気持ちが半分、私も少し休みたいという思惑半分の言葉は彼女の言葉でかき消されていく。


「真美に失礼ですから」


斜面が一段と急になった。

それでも彼女は前に進む。

私も続かなくてはと、袋を持ち直した。

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