『小さなお話し』 その98

やましん(テンパー)

『ある、未来』 2

 『これは、フィクションです。この世界とは、関係ありません。』




 地球ごきの場合は、世界中のごきたちが、緩やかな連合組織を構成していた。


 中央集権の『宇宙ごき』には、むしろ、そのほうが、相手をしにくかったのである。


 昔いた、『ごき大将』のような、豪傑はいないため、誰を相手にしたらよいのか、よくわからなかったのである。


 宇宙ごきは、比較的、話せばわかる相手である。


 人類の殲滅を思い止まったのも、偉大な、かつての『ごき大将』の説得が効を奏したのだ、と言われる。


 地球ごきは、人類が没落したあとも、宇宙ごきには、侮れない実力をいまだ、持っていた。


 だから、再び戦争になるのは、宇宙ごきとて、避けたかったのだ。


 一方、『地球ネズミ帝国』は、独裁者、ネズラーの登場により、恐るべき独裁帝国を築き上げていた。


 反政府的な言動をした、ネズミたちは、その種族によらず、逮捕、拷問にかけられ、それでも、言うこと聞かないねずは、処刑された。


 宇宙ごきと、ネズラー率いる、ネズミ帝国は、同盟を結び、地球の一部は、ネズミ帝国の直轄地として、自治を認められていたのである。


 いまや、すべての、地球人類は、ネズラーの僕に過ぎず、抵抗は、死を意味したのである。


 ひとこと、悪口言ったら、逮捕された。


 地球ごきは、むしろ、人類を保護する立場にあり、ちゅう帝国(ごきはそうも呼んだが)の人類に対する横暴に、一定の歯止めをかけていた。


 しかし、宇宙ごきと、ネズラーの権力は、いまや、最高潮に達しつつあった。


        🏚️


 やましんちの跡地には、人類の共同アパートが建てられていた。


 狭い部屋に、10 人近くが押し込まれ、政府が空間供給する、わずかなエネルギーで、ようやく生きていたが、もちろん、過酷な労働が課せられていたのである。


 空間エネルギーを、すべて断たれたら、人類は、4日はもたない。


 コピーやましんは、死なれては、まだ、困るらしく、ひとり部屋に入れられて、鍵を掛けられ、外には、体長2メートルに達する、宇宙ごきの兵士の監視つきで、1日30分しか出られなかった。


 やましんを殺害したり、ここから、下手に移動させると、なぜか、空間がごちゃごちゃに、なることが、わかっていたのだ。


 やましんは、『詮』だったのだ。


 で、まあ、つまり、ここは、独房と言ったほうがよかった。


 しかし、あの、不思議な入り口は、この部屋の下に、隠されていたのである。


 宇宙ごきは、なんらかの理由で、そこには手が出せなかったのである。


 それで、ついに、やましんちの、ネズたちの子孫が、駆り出されることになった。


 このネズたちは、やましんに、一定の親しみがあった。


 殺されたりもしたが、はでな運動会もさせてもらった過去がある。


 しかし、いまや、帝国の命令にさからったら、そく、死刑なのである。


 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



『反撃は、素早く、効果的でなければならないが、神出鬼没であらねばならぬ。』


 現代のごき大将は言った。


『諸君は、未来の礎となるであろう。栄光は、諸君の子供たちにある。おそらくは。しかし、そのために、今が、必要であり、今日こそが、その始まりである。』


 ぱらぱらと、拍手が起こった。


『どうでもいいけどさあ、これだけ?』 


 ねこママは、あきれて言った。


 集まったのは、10ごき、と、に、にゃんこと、に、わんこ、と、ひとり、であった。


『はじまりは、こんなものだ。革命は、そんなものだ。』


『まあね。でも、これでは、作戦にならないにゃんこ。やはり、助っ人が、必要にゃんこね。』


『そんなもん、どこに、いるの?』 


『しかたない、使いたくないけど、時空トンネルを使おうか。でも、どうなるか、わからないにゃんこ。昔みたいに、ゴタゴタに、なるかも。実は、このコピーやましんが、時空の穴に、蓋してるにゃんこ。でも、開けるには、もうひとつの、鍵が必要にゃんこ。』


『迷惑な、はなしです。本人の意思ではない。』


 コピーやましんが、唸った。


『なんとな? ママは、いったい、何を知ってるの、ごきか?』

 


 ねこママは、はるか、遠い目になったのである。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


              おしまい



 



 


 


 


 

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