第107話『だから歩いて帰ろう』

「……それと、つかぬことをお聴きしていいっすか? 大将。隣の女性、随分と綺麗な女性ですが、誰っすか。……この戦争の最中にナンパっすか」


「否定だ。彼女は、事故で亡くなった私の唯一の友の残した一人娘。私が後見人として、身柄を預かることにした。彼女の権利と生命はギルドマスターの名において守ると誓おう」




 


 見知らぬ女性がユーリに一礼をする。

 高貴な身分な女性なのだと理解した。



 ワケアリなのだろう。

 ユーリは敢えてソレ以上突っ込まなかった。 






「それよりも、……その女性は誰だ? 私の知らない顔だが」


「ああ……。まぁ、そうなりますよね? そりゃ……漆黒がいきなり五人になって、しかも新団員が女性なら聞きたくもなりますよね」


「肯定だ。報告し給へ」




 漆黒の衣装を羽織った謎の女性。

 ユーリもどう説明したら良いか迷っていた。






「あー。それね。ちょっとこみいった事情になっていて正直うまく説明できないんですわ。明日の明朝までに提出する報告書に書いときます。軽く目を通して下さい」


「なるほど、わかった。提出は今日の夜でも構わない」


「……えっと、しれっと納期短くしないでくれますか? ちゃんと、明日の明朝までに提出しますから」






「そんじゃ、大将。俺たちは、帰りますか」


「そうだな。王都結界アイギアスも、解除される頃合いだ」






「……そうそう。大将。それと、ひとり女の子がこのあたりで迷子になっているんで、王都に戻り次第、捜索隊を出すようにして下さい。まだ幼い子供ですがひどい怪我を負ってますんで、治癒術士も同行させてください」


「肯定だ。戻り次第可能な限り大規模な捜索隊を出すように手配しよう。……その少女についても報告書に記載を願いたい」





「了解っす。まぁ、ただの子供っす。親が居ない子供なんで王都で身柄を預かることになると思いますが。……それはまぁ、見つけ次第、応相談ということで」


「わかった」








「あー……それと、村は完全に壊滅しました。経費で請求しますので、お覚悟を」


「…………肯定だ。莫大な額に、なりそうだ。……だが、約束だ……払うとも」


「凄い見積書作りますんで! 期待してますぜっ! 大将!」







「う、む。……そうだな、後日、落ち着いた時に、持ってくるといい」


「まいどっ! までに報告書と一緒に持っていきますんで。お覚悟を」






「…………君も、さすがに疲れているだろう。提出期限を10日延ばす事を許す」


「大丈夫です! ちゃんと、キチッと完璧にと、報告書を、当初の予定通り、までに持っていきますんで。待っていて下さい。大将」


「――うむ、……肯定だ。……君の勤労の精神に……敬意、を」






 みんなそろって王都に向かう。

 水平線の向こうには日の出が上がりかけていた。

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