第74話『世界を呪う運命《ダイス》』
「例えば、このサイコロ――
「君に奪われず、
「あくまで、成り行き上のことだ。俺が感謝される筋合いのものではない。それに、
「それは、どういうことだ」
「俺が
「ベオウルフ。知っている限りの情報を聞かせてくれないだろうか」
「もちろんだ。俺が聞いている情報を話す。
「兵器として作られた可能性は」
「断じて兵器などではない。
「兵器ですらないと。そんな物を……私は」
「
「不確定な未来、それを出目で占い、確定する。
代償も求めない。願う未来を固定する道具。
……それを、私は偶然手にした。
手にした時、それが運命なのだと思った。
違う、……そんな偶然あるはずがない。
そんな偶然は、確率的にありえない。
平時の私の思考であれば、その思考に至れたはず。
本当にそんな遺物なら偶然手に入るはずがない。
「あんた、その
「あれは……最愛の妻を失った時のことだった。妻の遺品を整理するため、遺物保管用倉庫に入った。その倉庫の中で、……偶然ホコリに被った
「心の弱みにつけ入るとは、恐ろしい遺物だな。――まぁ、俺は本当に、ソイツが遺物どうか疑ってるけどな。
代償がないわけではなかったのだ。
そのツケは、あとで一気に支払わされる。
しかも、何百、何千倍の利息を付けて。
ある日突然。取り立て人はやってくる。
「まぁ、その有害性に気づいた奴は、過去に何度も処分を試みたようだ。溶岩の火口、地底深く、海の底、……だけどなぁ、いつの間にか、ソイツは、なぜか再び世界に現れやがる。それを造った人間はよほど人間が憎くてしかたかったんだろうな。まぁ、そもそも本当に人が造った物かという前提すら、甚だ疑問だ。それ自体が意志を持っているように、俺には思えるがね」
「処分も放棄も不可能。……そんな物に頼った私は、愚か者だな」
「あんたにとっちゃ、……失ったモンがあまりに、大きすぎたんだろうよ。
「否――。私は、それでも許されない。王。それは、民の命、財、未来、その全てを預かる者。そして、王とは、強者を指し示す言葉。故に、その心は絶対に屈してはならず、如何なる理由があろうとも、断じて道具に操られることなど、許されない。
「――――そうか。腹は、既に決まっているか」
考えるべきは死後の
火口、海底、地底。
そのどこに捨てても再び世界に姿を現す。
遺物を用いて、隔絶空間に封印。
おそらくそれも、無駄だ。
私は、世界で一番安全な場所を知っている。
そしてそれは、私の目の前に、
「
「最高の判断だ。世界に俺より安全な場所はねぇ。
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