第47話『ぼーいずとーく(漆黒猥談)』

「あのイケメン野郎の無茶振り、毎度エゲツねぇよなぁッ?! なっ? ユーリもそう思うだろ?」


「はは。大将もブレねぇよな」


「拙者も、団長に同意っす」


必罰美男子イケメン死刑




 団長が難しそうな顔をしている。

 そういう時は、さして難しいことを考えていない。




「さっきの任務の話なんだがよ。ユーリ、10万ってどんくらいのデカさの数なんだ?」

 

「デカさの数?……そうだな、一言で言うなら、超超超、いっぱいって感じだ」




 細かい話は伝わらないので感性に訴えてみた。

 勢いとニュアンスが伝われば良いだろう。




「なるほど。理解した、超を上回り、超超を遥かに越える数……そりゃ、やべぇな」


団長、不可算術理解ユーリさんも、団長に理解させんのはムリだと思う




「10万っすかぁ。地獄に行列できそうな数っすね~」


「はは。それはウケるな。俺たちで黄泉路よみじを、渋滞させてやろうじゃんか」




 赤信号、みんなで渡れば、怖くない(全滅)の精神だ。

 こいつらが一緒なら、不思議と怖くない。



「きっと地獄の閻魔様も急な来客に驚くと思うでござる」


「はは。違いねぇな」


呵呵、開幕地獄祭地獄のカーニバル 開 幕 だ




「にぎやか、大いに結構。葬式みたいな顔してる連中を盛り上げてやろうぜ」


「そっすね。拙者たち、死ぬ時は一緒っす」


「そうだな。地獄で酒を酌み交わそうぜ」


「いや……ユーリ殿、酒、めちゃめちゃ弱いじゃないっすか」


「うるせー! いーんだよ! こーゆーのはな、気分だ、気分っ!」







 *







「……それにしても、あのイケメン野郎もブレないよなぁッ」


「ホントっすよ。命令は曖昧、人命は軽視、仕方ない人っす。はぁ」


「まっ、不出来な上司を支えるのも、有能な部下である俺たちの仕事っつーことだなッ! わーっははははははははっ!!!」




 団長、ギルドマスターの悪口の時はすげーイキイキしてるな。

 今の団長は、100点満点の笑顔だ。


 団長こと、シャドウこと、ジミー、彼の人間面が色濃く出る。

 正義、熱血、善意の人から、いたって普通の男になる。


 シャドウ(自称)というより、ジミー(本名)感が強い。

 邪悪スマイル団長を、密かにジミー面と名付けてる。




「拙者、思うんっすが、イケメンだから許されてるだけな気がしません?」


百理有マジそれなw




「フツメンがあんな感じの態度とったら、かなり痛々しいことになるっす」


「大将は、イケメン無罪、それを身をもって証明してる感はあるな」




「あんだけ良いガンメンしてんのに、わかんねーのが、あのイケメン野郎の浮いた話を聞いたことねーことなんだよなぁッ!」


「大将、女気ないからな」



 団長、ギルドマスターの話になるとめっちゃ食いつく。

 漆黒の団長らしい邪悪な良い笑顔になる。

 好きか? 好きなのか? 好きすぎるだろ!


 それはそれとして、確かに団長の言うことも一理ある。

 近寄りがたいオーラを常時発している。

 ……妖怪婚期逃しに取り憑かれているに違いない。




「あのイケメン野郎は職場恋愛してそうな感じもねーからなッ!」


「拙者、最初はアルテ氏とできてるんじゃないかと思ってたっす。上司と部下との禁じられた恋みたいな感じの想像していたっす」




「ないない。アルテ、一度本気でぶん殴りたいって言ってたくらいだ」


「ふひひ。アルテ氏、なかなか言うっすねぇ」


「はっひゃひゃひゃっ!! ざまぁねぇなぁッッ!!! イケメン野郎ッッ!」




 アルテが怒ったのは、俺たちの件があるからだ。

 まぁ、この場では触れないでおくとしよう。




「ギルドマスターって、ソッチの気があるとか思われてるんっすかね?」


「つか大将、そうとしか思えない振る舞いをしてるから、そう勘違いされても仕方ない面はあるわな。そりゃ、誤解するなってのが無理筋だな」


「職員さん、冒険者と話す時、なぜか微妙にソッチ系のスイッチが入るんすよね……あれ見るとアッチャーって感じになるっす」




「あとな、アルテ情報なんだが、女性職員は尊敬、いや、崇拝の対象として見ていても異性として見てないそうだ。深窓しんそうの令嬢、高嶺の花って感じだな」


「モテそうで、モテない、ちょっとモテ、そうに見えて、残念なイケメンって感じっすね~」




 まぁ、ギルドマスターは散々な評価ではある。

 とはいえ、何だかんだあの男を評価しているのだ。


 自分の命を預けても構わない。

 そう、思うくらいには。


 直接命を受ける立場に密かな誇りすら持っている。

 そんなこと死んでも口に出さないが。


 その代わりにこうやってよく話題にだすのだ。




「はははッ! あのイケメン野郎、あのツラで彼女もいねぇのか。ダッッスゥェなッッ! イケメンの無駄遣いも良いところだぜッ!! な、マルマロ!」


「……いや、ゆーて、団長もDTの人じゃないっすか」


(おいっ!!……マルマロ!)





「       」






「キレイな顔してるだろ。ウソみたいだろ。死んでるんだぜ。……ソレで」


「団長、任務前に、フライング殉死っす。安らかに眠ってくだされ。チーン」


我祈団長鎮魂安らかに成仏しろよ




「って……おい! マルマロ、そりゃ言っちゃ駄目だ。団長は、孤高なだけだ、DTとは違うんだ。ただ、孤高で、高潔で、硬派なだけなんだっ!」




 団長も顔は良いんだけどな。

 子供たちにしかモテないのよな。

 イケメンの無駄遣いは、団長もなんだよなぁ……。




「美形のせいで分かりづらいんだけど、大将、結婚しておかしくない年齢ではあるんだよなぁ」


「ユーリ殿、ギルドマスターの年齢知ってるんすか?」




「おう。秘密だぞ? ゴニョゴニョ……だ。墓場まで持ってけよ」


「え……いや……まぁ、ふひっ。イケメンも、大変っすね」




「まぁ、老いらくの恋ってのもあるからね。大丈夫、まだイケる、イケる」


「誰かが、女の子紹介してあげないと、一生女と縁なさそうっす」




「女に関心ないわけでは無さそうなんだけどな」


「へー。そうなんっすか?」




「マジだ! 女性ギルド職員が後ろ向いてるときとかな、ワリと、ガッツリ、エゲツないくらいにケツをガン見してっからっ!」


「ふひっ……ギルドマスターもオスっすからね。まぁ、仕方ないっすね。そこは、むしろ拙者、好感度超高いっす。爆上がりっす!」




「クソ真面目で、頑固だからな。誰かが、お節介してやらなきゃ、一生進展なさそうな感じだな」


「優秀な血も途絶えるのは、残念っすよね。ユーリ殿の村のユエ氏とか紹介してみたらどうっすか? 玉の輿になれるっすよ」




「ユエは、男だ」




「ユーリ殿~! 唐突かつ、高度なボケ過はやめてくだされ~! そのボケは、拙者にはツッコメないっすよ~! 暴投は勘弁っす!」


「ユエは、男だ」




「ユーリ殿……食い下がりますなぁ、嘘も百回言えば真実になるってあれっすか? 拙者、可憐な女性をいじるのは、その……拙者の信義と反しますな」


「マルマロ。俺の顔、いや瞳をじっと見ろ。……これが、嘘を付いてる男の顔か?」




「・・・(沈黙)・・・。えっ?」


「ユエは、男だ」





 まぁ、――そうなるよなぁ。わかる。わかる。

 ユエはな、初見殺し。骨格から既に絶世の美少女なんだぜ?


 ひよこの性別鑑定の方がよほど難易度低いからね?

 性別を誤認するなというのが、マジ、ムリ。

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