45:幻装:島柄長

札杜 礼と蒲生 きらりは巨大なカマキリを目の前にしても物おじせず、攻撃していった。榊はデザイアを前にして自分に攻撃を当たらないように姑息に立ち回っていた。



「卍落とし!! 」



「乱れ雪:八連!」



「無駄よ。私にあたりゃしないんだから。デザイアの釜はすべてを異次元に送る。つまり攻撃さえも異次元に送る。そして、、」



そういうと、指を鳴らすと息を整えていた信男の背後から小さな黒い球体が目にも止まらない速さで彼自身を襲った。



「君が悪いんだよ。 あたしの愛を受け止めない君が! ああ、なんてかわいそうな信男君。二人の攻撃は彼にダメージを負わせる。とってもゾクゾクすると思わない?」



「狂ってるっ!!」



「マスター!」「モブッチ! クソがよぉ...!」



きらりが蹴りをあげたが急ブレーキでやめた。彼女の言葉が本当なら自分の攻撃で愛するものを自ら傷つけてしまうという恐怖が頭によぎった。不意を突かれデザイアに圧倒され少し服が破れた。



信男はずっと地面に手を付けて何かを模索していた。きらりのラッキー破れにも目もくれず必死に勝利の道を探っていた。



「見つけた! 榊 皐月! お前の好き勝手にはさせない。」




ラヴ・マシーンが床をすり抜け、榊の背後に回り込んでいた。そして信男は思いのこもった攻撃をした。



「ラブリー・ロイヤルフローラル・ハリケーン/スラッシュ!!」



背後からの攻撃に榊はよけきれず一度現出を崩してしまう。それを皮切りにきらりと礼が攻撃を仕掛ける。



「まず破れた服を直して。 いくしょ!! マジ・卍落としぃ!!」



「私はもっとマスターと一緒にいたい! あんたのような独占欲の強い人には渡せません! 札杜流:雪崩・一閃怒涛!」



二人の強く重い一撃が皐月を襲った。皐月は抵抗できず、まともに攻撃を受けてしまった。だが、現出する力はまだ残っていたらしく、ギリギリを保っていた。その姿はデザイアと皐月が一体になっているようであった。デザイアの鎌を現出武器のように手に持ち、切り刻むように手を動かすと真空で切った残像が飛んできた。きらりは現出装:ヒップ&ホップのポンポンを前に出すとシールドが展開され、真空斬は跳ね返された。



「くっ… SSS機関のエージェントとして選ばれた私に失敗のビジョンはない。 こうなれば、如月信男だけでも奪っていくしかない。」



「スリーエス機関? 初耳です。 ですが、マスターは絶対に渡しません! 私の心を溶かしてくれた大切な人だから!! 」



そういうと礼の周りから青いオーラが包み始めた。幻想的なオーロラが見え始め、辺りは一気に冷え込んだ。礼の体は突如として光だし、一瞬にして厳かな白と青の千鳥格子の和装をした礼が姿を現した。



「これは? なんだか、いつもと違うような? 冷刀も長い…」



その瞬間はようやく屋上へと来た天使たちも目にした。天使はあの姿に如月信男の父、心之介の姿を思い出した。



「あれが、幻装......!?」




礼の一歩は強く、美しく、そして早かった。デザイア=榊の追撃をものともせず、大きな太刀で素早く攻撃した。



「札杜の家にこだわらない、これが私の!私だけの技!! 奥義:雪華繚乱!!」




大きく太刀は相手の急所を余すところなく攻撃し、榊 皐月は倒れた。礼の姿は元に戻り、冷え込んだ空気も元通りになった。礼はすぐさま榊の元へ向かい手を差し伸べた。



「あなたを許すつもりは滅法ありませんが、マスターは優しいのでその寛大さに私は賛同します。」



「俺、まだ何も言ってないけどなぁ。 まぁ、許すつもりだったし、ここまで痛めつけちゃったのは悪かったよ。でも、人は自由なんだ。好きな人にこそ自由でキラキラしてて欲しいと俺は思う。それを知ってほしかったんだ」




「そうやって勝手に優しくされちゃうから、使命も忘れたくなっちゃうじゃない…」



榊は俯き、差し伸べる手を拒んだ。すると、どこからともなくヘリコプターの羽の音がうるさく聞こえてきた。見上げると真上にヘリがとどまっていた。そこからロープが下ろされ、黒服の人たちが颯爽と現れた。一人はスキンヘッドでサングラスをかけた大柄の男性とみられるもの、もう一人はヘルメットをかぶっていて体格ではどちらかわからなかった。サングラスの方が榊を抱えて通信を始めた。



「収容番号006任務失敗。 やはりC級では厳しかったようです」



「おい! なんなんだお前らは!? もしかしてスリーサイズか!!」



「信男君! それを言うならスリーエス機関だよ!」



「如月信男、キミには収容要請がかかっている。我々の軍門に下れ、我が個性強化組織“SSS機関”に!」



「なんだよそのものすごく中二病くすぐる闇の組織は!!」



「「「「「 思春期か!!」」」」」



ヘルメットの男は断固として話さず、じっとこちらを見ているようで気味が悪かった。サングラスの男はさらに彼らに告げた。



「当該機関は本校にエージェントをすでに送り込んでいる。お前たちが収容されるのも時間の問題だが、せいぜいあがくんだな。」



「待て!!」



男たちはロープに引かれ空に去っていった。彼らの目的はいまだに謎だが信男を目当てにしてることだけが確かだった。信男の青春をまたも邪魔する集団が現れたと思い、彼は内心呆れと共にほのかな闘志が芽生えていたのだった。




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