特別編 バレンタインデー信男争奪戦!
2月14日......。
聖バレンティヌスの殉教にならって生まれたこの日で、日本ではすでに形骸化されつつあった。この日は女性が男性にチョコをあげる日......。いや、もうその時代も古く、友達同士でおいしいお菓子を食べ与える日となりつつあった。とはいえ、かの如月信男はそうはいかない。ハーレム王の第一歩を踏み出しつつある彼にとってこの日はとっても特別な日となっている。
「ああああああああああ! バレンタインじゃああああ!」
「うるせえ」
「なんでそんなに冷静なんだよぉ、れんれんは!?」
「わーぎゃー騒いだってもらえるわけじゃあないだろ」
「いいや、あるね。なぜなら俺には手芸部のみんながいるから」
その頃一方手芸部の女性陣はというと誰が最初に信男にあげるかで争いが起きようとしていた。
「あや、それもしかしてモブッチの?」
「え!? ああ、そうです。もちろん、初めに渡すのは私ぃです、けど......」
「あ? うちに決まってんじゃん!? うちの手作りケーキをあーんさせてあげんの!」
きらりとあやは額をぶつけてにらみ合っているといけしゃあしゃあと麗美が手を華麗に振り信男の元へと急ぐ。
「「ちょっと待てやこらぁ!!」」
礼は冷刀を現出させ、きらりは現出装・ヒップ&ホップを身に着け、麗美の行く先を阻む。麗美は妖艶に唇を指でなぞる。
「ふうん。あんたたち、あたしとやるつもりなの?」
「一回締めねえとこっちのあれの虫がおさまんねえんだよ」
「きらりさん、腹の虫です」
「まじ、お前環境に左右されんのチートすぎ」
「そうね。まずは厄介で正統派な礼ちゃんをやろうかしら?」
そういったにもかかわらず間髪入れずにきらりに振袖でビンタをするようにはためかせ距離を取らせていた。
「男性の方が効き目のある
「さあ、それはどうかしら?」
そういうと礼ときらりの身動きが途端に止まり、その場にへなりと座ってしまう。
「な、なにをしたんです///」
「ああん// こいつ、変な
二人の吐息が甘くなり、火照っている間に彼女は余裕しゃくしゃくと信男に近づいて行く。
「信男くうん♡」
「はーい」
そこにはチョコを持った信男の姿があった。麗美は唖然として状況を把握できていなかった。戦線を乗りこえ自分が一番に愛を伝えるはずが、自分ではない誰かに先を越されていることに驚いた。
「その、チョコは?」
「ああ、天使ちゃんがさっきしれっとくれたんだ。記念すべき一個目~♪ もしかして麗美さんもくれる感じすかぁ?」
「え? あ、ええ。まあ。」
「ありがと~。家に帰って大切に食べるよ」
「まあ、ダーリンの喜ぶ顔が見れたなら良しとするわ」
遅れて亜莉須に介抱されたきらりと礼が少し恥ずかしそうに信男の前にやってきた。
「信男くん~。チョコあげにきたよぉ」
「ま、マスター......今はあまりこちらを見ないで受け取るだけ受け取ってもらえたら......嬉しいです」
「モブッチの初めてをもらいたかったけど、るなっちには勝てないっしょ」
信男の今年のバレンタインは盛大に5個という好成績を叩きこんだ。ついでに廉は友チョコとして天使と礼に1つずつもらった。
「どうだれんれん! 俺は5つだぞ~、いいだろ?」
「ああそうだな、うらやましいよ。お前のそんなことで浮かれるメンタリティは」
みんなで笑いあい、それぞれ分かれて下校した後のことだった。れんが歩いていると愛海が電柱で佇んでいた。
「お、結城さん。こんなとこで何してんの?」
「ん? ちょっと野暮用よ。はいこれ、あげる」
「ああ、バレンタインか。ありがたくもらうよ」
「そのチョコ、ホンモノかもね」
「チョコに偽物とかないでしょ」
フフっと不思議な笑みを浮かべた後愛海はそよ風のようにさらりと去っていった。廉はそれを胸にしまった。
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