22:頂上決戦 その①

『いよいよ、P-1グランファイトも大詰めとなりました。先ずは一組目、クールビューティ:札杜礼VS嵐の女:天河美琴! それではグラン、ファイトォー!?』


信男と愛海が保健室からでると既にあやと自分が負かされた天河が戦いを繰り広げようとしていた。


「「「レディ・ファイッ!!」」」


大勢の観衆の中、二人は間合いを取ってぐるぐると攻撃のタイミングを見計らっていた。

観衆はその緊張感にのまれ、静かになっていった。すると先に天河が動いた。天河は雨叢雲剣で霧買ったろうとすると札杜も応じて冷刀を現出させた。じりじりと唾競り合いをする二人。そこには剣士の覇気のぶつかり合いが目に見えて理解できた。


「剣道部一年生の中ではエース級の実力かもしれないけど、主将も言うほどでは無かったわね。初心者の私でも勝てたわ。」


「あなたは何でもできるのですね。ですが、私は剣(これ)しかなかった。でも、今は・・・」


天河は札杜の剣を振りほどき


「仲間がいるとか言いたいんでしょ? そんな話、何千回と聞いたわ。でもね、人は常に孤独よ。孤独との戦いに勝ってこそ真の大人よ。」


二人は体力を使ってしまったのか距離を置き、息を整えていた。すると突然そこに男と彼に掴まれた女性が現れた。男は天河の方を向き


「美琴、君の個人主義は会員たちの心を閉ざしてしまう。少しは気を付けた方がいい。だけど、確かにこの女みたいに友情語ってくる奴がいたらめんどくさいよなあ。」


「ごめん、一星。 気を付けるよ。我々の目的はこの大会で降星会の名をあげる事、だしね。」


『おっとこれは、別会場で開いていた準決勝、降谷 一星(ふるや いっせい)と蒲生きらり選手が乱入してきたぞ!? これは少し、、ってなんですか降谷さん』

降谷は和琴からマイクを借りるとリングの上で話した。


「みんな、もう今までのグランファイトでは物足りなくなってるんじゃないか? そこでだ、この四人でのバトルロイヤル形式というのはどうだろう? 手を組むもよし、裏切るもよし、最後までこのリングに立っていた者の勝利だ! そしてこの学園で最も個性の強いもの「エンペキュラー」の称号を手にするのだ!! この意見に賛同する者は右手拳を大きく突き上げろ!!」


そう熱弁すると、会場は湧きあがり、半狂乱な雄叫びをあげて多くが右手拳を天高く突き上げた。


降谷一星、、一体彼は何者なのだろうか、そんなことをあやときらりは考えていた。ふと我に返り、このまま試合が始まるかと思い態勢を取り戻すと和琴が少し冷静な声で


「・・・えー、降谷さんのご意向で一旦ここで仕切り直しとさせていただきます。試合再開は10分後、10分後に皆さんお集まりください。よろしくお願いします。」


皆はおのおの

「降谷さんが言うから仕方ないよな。」

とか

「きっと、敵に塩を送ったんだよ。本気でつぶしにかかっているな。かっこいいけど、すげえこわいな。」

などと推察していた。


あやときらりが信男達の元に戻ると愛海を囲んで何やら話しこんでいた。だが、信男は二人に気付き駆け寄ってきた。


「あやさん、きらりさん。二人ともけがしてない? 大丈夫?」


するときらりが笑って

「だいじょーぶ、うち治癒能力(ポジティブパワー)持ってるし、大概のケガはなんとかできるっしょ。」

「そうだったね、でもあまり無理しないでね。」


あやはきらりと違い冷静な表情で愛海に


「それで、相手の個性は分かってるんですか? 愛海さん。」


愛海は黙ってうなずき


「私が考えるに、あの降谷って人は相当強い個性の持ち主よ。彼はこの学園でも名前を知らない人なんていないし、みんなの輪の中心、って感じの人ね。そして次期生徒会長候補で、おそらく降星会リーダーね。名前に自分の名前が入ってるし、案外、自己陶酔者(エゴイスト)かもね。」


信男が拳を突き合わせ


「いよいよ御大将のお目見えって感じか。ここでどんな人なのかくらいはつかんでおかないとあの人を止められない。みんなには悪いけど、もう少し付き合ってもらうよ。俺もなにかできる事があればいいんだが・・・。」

そこにあや、 きらり、結城先輩、愛海が並んで

「マスター、あなたは将棋の王将です。どしっと構えていればいいのです。」

「そうそう、うちらの大好きなモブッチが傷つく所見たくないもん。」


「私が先輩なんだから、いっぱい甘えていいんだよぉ。」

「姉が頼りになるかは疑問だけど、これからもあなたの行き先を近くで見届けてみたい。初めてそう思った男の人だから、、、一緒に頑張ろうね。」


みんなの熱い気持ちが伝わってきた。改めて自分の<魅力>がすごい能力なんだって思えた。そんな瞬間だった。

すると横やりに聞いたことのある女の人の声がした。


「そう、ね。ダーリンのこの男気ある心に討たれない女なんていないわよね。でもあたしが一番、よね?ダーリン?」


といって抱きついてきた。後ろを見ると御笠 麗だった。妖艶な笑みが近くにいてびっくりした。そう言えばこの人も俺の虜なんだった。やれやれ、モテるってつらいなあ! 思わず笑みがこぼれちゃう。

そんな一時が過ぎ、和琴の試合開始のアナウンスが流れた。信男は改めてあやときらりに向かい


「二人にできる事は今は応援しかないけど、とにかく頑張って。優勝したら俺、何でもするからさ!」


二人はその言葉に目つきを変えた。


「・・・なん、でも。言いましたね、やはりきらりさんには優勝は譲れません。マスター待っててください。」


「あっ、ずる! モブッチ、今の言葉忘れないでよ?あと、そのぽっと出の女、手洗っとけよ!」

きらりさん、、それ言うなら“首を洗う”でしょうよ。

それにしても、俺、もしかしてやらかしたかな・・・。

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