14:目覚めよ、熱き魂①

手芸部とすごす夏合宿は、家に帰った後に夏風邪を引いて終了した。

その後の夏やすみは療養と宿題で大忙しだった。


そして、始業式。これから二学期が始まるのだ。


「おはよう、モブ男。 調子はどうだ?」


今日もれんれんの気さくな挨拶から始まる。学校の行き帰りはこいつとのどうでもいい会話が日課になっている。


「この前カードショップで剥いたらキラレアのダークマジシャン手に入ったんよ」


「うわ、まだマジック&ドラゴンズ集めてんのかよ。俺それ中学でやめたわ。でも、こう見るとやっぱかっこいいな」


「最近のカードゲームはインフレが激しいからリタイアする人は多いけど、昔のカード好きもコレクターとしてまだいるみたいだし。今度俺のゴッズドラゴンデッキ見せてやるよ」


「会話についていけん。異国の言葉かよ・・・。俺は最近ラノベにハマってんだ。この、『今から侵略します。』が結構面白くてさ、主人公が宇宙人に改造されて地球を征服する生物兵器になっちゃうんだけど心配になった仲間達との交流で主人公が記憶や心を取り戻すっていう王道ダークヒーローSFがおもしろいんだよ」


「お前こそ、今日本語話せてなかったぞ。現に俺は何言ってるか分からんかった」


話しているうちに急に信男が立ち止まった。すると何かは分からなかったが信男の背中にダイレクトアタックしてきた。信男はつんのめって片足でバランスを取り、その勢いで振り返るとそこには尻もちをついた愛海がいた。


「い、いたたた......」


「すみません、愛海さん。 えと、大丈夫?」


愛海さんはずれたメガネをクイッとして、信男に起こしてもらった。少し、挙動不審な雰囲気で


「え…ど、どうして私のびk、後ろにいるってわかったの?」


「いや、分かんないですけど、気配を感じたってやつ?」


「ごめんなさい、二人の邪魔......しちゃったかな?」


「いや、大丈夫です。 モブ男が神経質なだけでしょ。後、これ落ちてたよ」


廉が持っていたのは小さなメモ帳だった。それを見た愛海は頬を赤らめて瞬時に取りあげた。

そして焦ったように


「ななななな、中身見た?」


「見るわけないじゃん。モブ男じゃないんだし?」


廉が信男に不敵な笑みを浮かべて煽りだす。信男は身に覚えのない濡れ衣に動揺をしつつ答えた。


「あ? 俺だって見ないし!」


愛海は二人のいがみ合う姿を見ると途端に冷静になりメモに何か書き残し、そそくさとその場から去った。愛海は何を思い、何をしていたのだろうか。二人には到底理解できない



(・・・ふぅ。ここまできたら大丈夫かしら。それにしても信男くん、ホントになんで急に立ち止まったのかしら・・・。もしかして感覚が鋭くなってるとか? まあいいわ。今日もいいシチュが観察できたし。あの二人はそそるわ。もう少しあの二人の周りをうろちょろしていようかしら♪)



愛海がいなくなっていなっていることも知らず、小競り合いをしていると間を挟んで元気よく入ってきた。


「「おっはよー! モブちゃん(モブッチ)!!」」


天使月姫と蒲生きらりだ。ふたりは、偶然にれんれん、信男を見かけて声をかけてきた。二人はお互いに挨拶を交わして四人で登校することになった。今日も最高に気持ちのいいハーレム日和だ。と感傷に浸っているとすぐに学校についてしまった。四人は教室に入り、いつも通りの学校が始まる。


授業は終わり、昼休みになり、今日は久しぶりに中庭でランチだ。

俺は久しぶりのぼっち飯だ。と言いたいところだったが、そうはいかないらしい。あやさんが周りをきょろきょろしながら俺の所へと駆けつけてきた。


「はぁ、やっと逃げれた......。あ、マスター! ちょうどいいところに」


「どうしたの? あやさん。」


「そろそろ体育祭が近いので昼休みでも練習しようと言う人がいて、逃げてきたんです。私、運動は出来ますが、ああいう人はどうも合わなくて......」


「そっか、体育祭かぁ。それは大変だね。俺はそこまで運動できないからうらやましいよ」


あやは、冷たい冷気に当たる息のように白い息を出して、ため息をついた。そして、黙々とご飯を食べていた。


「あれ? ごめん、変なこと言ったかな?」


「あっ、すいません。マスターがいてくれて安心したというか......」


 何かを言いたげそうないい雰囲気をブチこわすような殺気に気付いて俺は立ち上がってしまった。俺が雰囲気こわしてどうすんだよ! すると二階の窓から大声で礼をよびつける。


「札杜くん!! そこにいたのか! リレーの特訓の話の途中ではないか!! 待ちたまえ、今行く!」


と言うと窓から影が飛んできた。 うわっ!? まさか声の主は飛んで来たっていうのか? するとドスン! と言う音と共に湯気が立ち込める中に人影が突進してきた。俺はとっさに現出させておいた。


「札杜くーーーーーーーーーん!! うがっ!」


俺はなんか適当にステッキでバリアを張っていた。それも見えていなかったのか、そいつは自業自得で吹っ飛んだが、とてつもない精神力とタフネスさで戻ってきた。


「だれだね、僕の邪魔をするのは!?」


「お前こそ、あやさんが嫌がってんの分かってるだろ! いい加減懲りろよ。」


「おっと、失礼。 名乗るのは紳士の務め。僕は篤井修。個性は熱意と熱いハート!! よろしくお願いします!」


うるさい・・・。確かに俺もあやさんも苦手なタイプだ。しかもめんどくさそうな奴だ。


「自己紹介どうも。 一応、俺は如月信男。 とりあえず、今日の所は帰ってくれないかな篤井」


「いや、ダメだ。 体育祭とは精神と青春の結晶。ここで勝てば、きっと俺達はいい経験になるはずだ! ん? だが、まて。君はさっき如月と言ったね。と言うと、君は札杜くんのマスターかい?なら、話は別だ。ここで、僕と決闘して君が勝てばこの件については諦めよう。僕一人で練習する。だが、負ければ敵に塩を送ることになるが、君にも僕と地獄の特訓を受けてもらう! もちろん、君は軍隊のように絞ってやるからな! さあ、どうする?」


いや、どっちも地獄じゃねえか!! でも、ここで勝てばあやさんや、みんなの株が上がるかも......。俺には、強さ未知数の個性【魅力】がある。行けるかもしれん。


「いいぞ。 だが、今日の昼休みはもう終わる。だから、明日の昼休みだ。」


「よし、今日の放課後だな!! 待っているぞ!」


おい、話聞いてたのか脳筋。どうすんだよ、俺!!

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