戦う女の子

第1話

魔法

正直、信じない。

女の子は、小さい頃は魔法使いに憧れるもの。

魔法で、大勢の人を幸せにしたい。

今、すっかりおばさんになった方も、小さい頃は一度は夢見たと思う。

私のお母さんもそうだったらしい。

でも、時代は変わる。

今、魔法使いに憧れる女の子は、少なくなっていると思う。

私の知り合いや親戚の女の子も、「魔法使いになりたい」という子はいない。

むしろ・・・

プリキュアのような、戦う女の子に憧れを抱いているようだ。

「わたし、おおきくなったら、プリキュアになるの」

親戚の女の子は、皆そう言う。

女の子が守られる存在というのは、昔の話。

今は、女の子も戦うのだ。

私も、そうだった。

「大きくなったら、プリキュアになる」と、宣言していた。

でも、所詮は架空の存在。

どうあがいても、なれないし、仮になれたら間違いなく、あの世行き。

現実には無理なら。せめて役の上でなりたい。

そう、思うようになった。

そしてそれが、現実となった。

私は、プリキュアになったのだ。

新シリーズのプリキュアの声優のひとりに抜擢された。

今、画面には私の演じるプリキュアが映っている。

この子に命と言葉を与える。

心の中で、画面の子に尋ねる。

「あなたは、どう生きたい？」

「あなたに任せる」

気のせいか、彼女の声が聞えた。

私と彼女は一体となる。

画面の中の世界は、私の世界。

いざ、ゆかん！