俺を溺愛するハイスペック彼女と異世界へ

時雨 しふ

Chapter I birth

第1話 交差点から異世界に転生

「ピピピピ、ピピピピ」

 デジタルの目覚まし時計が鳴る。

 俺は、重たい腕で目覚まし時計を止めもう一度眠った。



「ピピピピ、ピピピピ」

 二度寝したとき用の目覚ましが鳴った。

 俺は、重たい腕で目覚まし時計を止め、重たい体を起こした。


 目覚まし機能の付いているデジタルの時計ではなく、壁にかけているアナログの時計を見た。


 今の時刻は七時五十一分。

 登校完了時刻は八時十分。

 走れば十分で学校に着く。


「あぶねー」

 俺はまだ寝ぼけている頭を働かせるため今からやることをまとめてみた。



 最短ルートで行こう。


 まずはパジャマを脱ぎ制服に着替え、洗面所に向かい顔を洗い、歯を磨く。


 朝食を食べてる時間は無さそうなので、今日は抜きでいいだろう。



 目も覚めてきた。

「よし」

 早速行動に移そう。

 制服に着替え顔を洗い歯を磨き、玄関で靴を履きドアを開け外へ出た。

「いってきまーす」

と言うがアパートに一人暮らしなので当然返事が来ることは無い。

 ドアを閉め、鍵をかけカバンにしまい走り出した。



 俺の名前は田村亮たむらりょう

 今日は高校の入学式だ。

 走って学校に向かっている。


 もうすぐ交差点に差し掛かる。


 ここの住宅街の交差点は視界が悪く、イヤホンなんてつけていたらいつか車に轢かれてしまいそうなほど危ない。

 それにカーブミラーも設置していない。


 俺はそのまま交差点に差し掛かった。

 右方向から微かに走って来ている足音が聞こえる。


 こういうシチュエーションは青春ラブコメでは、角で女子と男子がぶつかりそこから恋に落ちる。という定番の展開だが、現実リアルでは訴えられたら即終了だ。


 俺は、走っていたが鉢合わせてぶつからないようにタイミングをずらすため歩く。

 すると、右側から聞こえる足音も遅くなっ

 た。


 俺は歩き、右の道から来る人を先に行かせようとしたのだが、右側から聞こえる足音は遅いままなので、走り出す。


 すると右側から聞こえる足音も早くなる。

 思わず苦笑いしてしまった。


「ふぅぅ」

 少々イライラして息を吐き、覚悟を決める。

「こうなったら思いっきりぶつかってやろう」

 頭の中でそう言い、右から来る人を避けずに、まっすぐ進む。


「うわぁ」


 となると思ったのだが。


 右から来る人は俺を、華麗なステップで綺麗にかわした。

 黒くて長い髪が綺麗に風でなびく。


「うわぁ」

 俺は驚き、思わず声を出してしまった。

 右から来た人は走り出し、俺の方に振り向いた。

 真顔なのだが、俺には彼女がドヤ顔をしているように見えた。


 俺はその後、特に何も無く学校まで着くことが出来たのだった。


 教室の時計の針は八時九分。

 ギリギリセーフだ。


 俺の席は一番後ろの右から二列目。

 席に着き、持っていたカバンを横にかけた。


 誰かに話しかけようと、俺は左の席を見るがまだ来ていないようだ。右の席の女子はすごい派手な髪型をしていて話しかけにくいので、やめておこう。


 するとチャイムが鳴り、先生が話始めた。



 入学式が終わり、教室に戻り席に着く。

 SHRまでには十分程の休み時間があるため、先程はいなかった左の席のクラスメイトに話しかけようと思い左を向く。

 すると左の席の住人はこちらを既に見ていた。


 一度落ち着こうと、先程配られた学校の説明が書いてあるプリントに視線を戻す。


 問題は既に見られていたことじゃない。

 その左の席の住人は、先程の交差点の彼女だったということだ。


 すると交差点の彼女が話しかけてきた。

「なにかしら」

「なんでもない」

「ならなんでこっちを見ていたの?」

 いやこっちのセリフでもあるんだが。


「話しかけようと思ってな」

「じゃあなんではなしかけなかったの?」

「話しかけようと左に向いたら既にこっちを見てるなんてビビるにきまってるだろ!」

「あらビビらせてごめんなさいリョウくん」

「なんで名前を?」

「さっき交差点で、あなたが私にぶつかりに来たのを私が華麗に交わした時、カバンに書いてあったのをみたからよ」


 俺がぶつかりに行ったのは合っているのだが……

「俺の足音は聞こえなかったのか?」

「もちろん聞こえたわよ」

「じゃあぶつかりそうにならずに済むこともできただろ!」

 足音が聞こえたなら俺が走り出したところで止まれば良かったことを。

 なんだこいつは。



 SHRを終え、帰りの支度を始め帰路に着く。

 交差点の彼女は俺の後ろを着いて来ている。

「なんのつもりだ?」

「ついていってるだけだけれど?」

 そういう時は、こっちが家なのだけれど?とか言うんじゃないだろうか。


「なんでついてくる?」

「好きだから」

「!?」


 いきなりの告白に俺は驚いた。


「前も告白したことはあるのだけれど?」

「お前みたいなやつに告白されたことないんだけど?!」

「あら、覚えてないの?」


 人生に三度だけ告白されたことがある。

 しかもそれは全て同じ人。


「おまえもしかして……」

 三回告白してきたやつと目の前にいる彼女の顔が重なる。


北原白羽きたはらしろは、か?」

 と、俺は尋ねると。

「そうよ」

「雰囲気変わりすぎだろ!」

「変えたのよ、あなたに振り向いてもらうために」


 元々白羽は眼鏡をかけていて、髪の毛はおさげの真面目系の女子だったのだが、今は髪をおろし、眼鏡をコンタクトに変えたのか眼鏡をかけていない。

 一言で表すのなら、美人だ。

 スタイルも良く、胸も申し分ない。高校生にしては大人っぽい雰囲気だ。


「それで、返事はどうなのかしら」

「まだのお前には会ったばかりだしな」

「それもそうね」

 正直容姿は好みで中学生の頃の性格も良かったはずだ。

 付き合っても良かったのだが、ここで付き合ってしまったら負けだと思ってしまった。


「じゃあとりあえず帰ろうか」

 と、俺が言うと、白羽は俺の後ろをピッタリと着いてくる。

 俺が走ると白羽も後ろにピッタリと着いて走る。

 俺が止まると白羽も止まる。

 ちょっと楽しい。

「何をやってるのかしら?」

「ごめん、ちょっと楽しくて」

 白羽が不思議なものを見るような目でこちらを見てきた。



 もうすぐで変わった白羽と初めて出会った交差点に差し掛かる。

 気づくと、俺は走っていた。

 そして──


 ──俺は車に轢かれた



 ──交差点の彼女しろはと共に



 目が覚めると、俺は何者かの膝の上に居た。

 その正体は3秒でわかった。

「おはよう、リョウくん」

「おはようじゃないだろ!ここはどこだよ!」

「病院ではないわね。異世界に転生でもしたんじゃないかしら」

「異世界転生、か、なるほど……ってなるわけねーだろ!」


 周りを見る限りここは草原だろう。

 白羽の話によると、小さな壊れかけの祭壇に倒れて居て、膝枕をしたかったのだが、地面がコンクリートで固く正座が出来ず、膝枕が出来ないのため、ここまで運んだらしい。


「とりあえず起きて早速あの町に向かいましょ」

「状況の飲み込みが早いな……」


 あの町とはそこの町ということか。

 俺は、重たい腕で地面に手を付き、起き上がる。

 そして、たった五十メートル程先の街に向かうことに。






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