第八話 エラー・上


エラー・上



ツゥエイは、ヒナの太ももを触りはじめた。

膝上から太ももの付け根までをゆっくりと。


「うぅ、いってぇ」


その時、気絶していたゼクサスが目を覚ました。

ゼクサスはすぐに状況を理解し、ツゥエイに叫ぶ。


「ヒナに触んじゃねぇぇぇぇ! ぶっ殺すぞ!」


「くくくっ。どうしたゼクサス、早く動けよ。でないと・・・・・・」


ツゥエイは、そう言うと、ヒナの太ももを舐め始めた。スカートに顔を突っ込み、ももの内側に顔を挟む。


「ひっ、いやぁぁぁ!」


ヒナの目には怒りと羞恥の涙が浮かぶ。


「くそっ! なんで動けねぇんだよ! ゼクサス、魔剣でどうにか出来ねぇのか!」


俺はゼクサスならどうにか出来ると思い、そう声をかけたが、


「無理だ! 魔剣が抜けねぇ!」


「オイラも動けないよ」


ハーツも動けない。


棍棒三人衆のうちの二人と、友達役の一人がローズの服の下に手を入れる。


「このっ! やめ、やめて! やぁぁぁぁぁ!」


くそっ! 俺は主人公なのに動けねぇのかよ! 今すぐこいつらを殺してやりたいのに!


「おい! お前ら、その女は俺のお楽しみだ。後で貸してやるからまだ待ってろ」


ツゥエイは、ローズに触れないように仲間に指示した。

ローズは一旦、何もされずに済みそうだ。


「ヒナちゃんだったっけぇ〜? 次はどこを触ってほしい? くくくっ。」


ツゥエイはヒナの胸に手を伸ばし、服を破く。

ヒナの小さな胸を鷲掴みにし、今度は胸を舐め始める。


「んっ、いやぁ! あっ・・・ん。もうやめて下さっ、い」


ヒナの顔は絶望の色に変わっていく。

腹の底からふつふつと怒りが込み上げてくる。


「クソ野郎! ぶっ殺してやらぁぁぁぁ!」


俺がそう叫ぶと、


「うるせぇよガキ!」


俺達を縛っている男に腹を殴られ、息ができなくなってしまう。

俺の腹を激痛が走り、息もしずらいが、ヒナとローズの苦しみに比べれば可愛いものだろう。


「俺のヒナに触んじゃねぇぇぇぇ! やめろっ! お願いだ、俺を殺してもいいから、ヒナにだけは何もしないでくれぇ! やめてくれぇぇぇぇ!」


ゼクサスが泣き叫ぶが、奴らは面白おかしく笑っている。


「お前もしかして、この女に惚れてんのか? くくくっ。この胸も小さい女にか?」


「んだと! ぶった切ってやらぁぁぁぁ!」


「いい加減うるさいよ。そうだ、君の代わりに、この女で遊んであげるよ」


そう言うと、ヒナの首筋を舐め、それからヒナの小さい唇に、ツゥエイが唇を重ねようとした途端、


『エラーを感知・エラーコード005』


突如、この空間に女声のコンピュータのような無機質な声が響く。


『この人間はリミッターを超えようとしています。危険です。人間に許されている力を超えます。』


この声が聞こえる瞬間、世界が動きを止めた気がした。


その声が消えた直後、相手の触手スキルに縛られて動けないはずのゼクサスが、触手を引きちぎり、触手男を素手で吹き飛ばす。そしてすぐに振り向き、ツゥエイ達の方に走り出す。


その瞳は金色の光を放ち、怒りに燃えている。


「ハァッ!」


ゼクサスは魔剣・イシェルヒードを抜く。

イシェルヒードから生まれる怒りの炎が、ツゥエイとその手下諸共焼き飛ばす。

十メートルほどの距離を吹き飛んでいく。それをゼクサスはたったの三歩で追い付く。

イシェルヒードの切っ先がツゥエイの喉に迫った時、


「ゼクサス! やめてーー!」


ヒナが喉を潰す勢いでそう叫んだ。

ゼクサスは咄嗟に剣の向きを変える。


「いってぇぇぇぇ!」


イシェルヒードはツゥエイの喉を掠めた。

ツゥエイはヒナのおかげで一命を取り留めた。イシェルヒードの炎を見ると、ゼクサスの怒りは相当なものであると分かる。


その炎は黒く燃えている。まるで獄炎のように。


ゼクサスが奴ら睨むと、奴らは泣きながら命乞いを始めた。


「ひいっ! 助けてくれ、お願いだ。金が欲しいならくれてやるから」


自分達の命はやっぱり大切なようだ。


「命がほしいなら黙ってろ」


ゼクサスの声は冷たく、聞いた人に恐怖を植え付けるものだった。


俺はゆっくりとツゥエイ達に歩み寄り、その首に剣を向ける。


「どうせ人間ってのはな、自分の命が一番大切なんだよなぁ。例え、誰かの大切な人を傷付けても、誰かの命を奪っても。そんなお前らをどうして生かさなきゃいけぇねぇんだよ!」


俺の言葉にツゥエイ達は死を覚悟する。


「俺達が悪かった! 二度とこんな事しねぇ。だから命だけは」


元の世界で俺達ヲタクや陰キャをいじめてた奴らに似た顔をしていた。


「ていっ」


いつの間に俺の横に来ていたのか、ハーツが剣の鞘でツゥエイ達の頭を殴り気絶させた。


「・・・・・・ゼクサス?」


目から光が消えて、動かなくなったいるゼクサスの異変に気付いた俺が声をかけた時、


ドタッ!


ゼクサスが突然倒れてしまった。


「おい! ゼクサス起きろ! だめだ、全く起きねぇ。ハーツ、手を貸せ」


ゼクサスを持ち上げる前に、


「ヒナ、俺の服をやるから着ろ。これからゼクサスを宿まで運ぶからな」


「そんな格好で街中を歩かせる訳にはいかないからね」


うぁぁぁぁ! 一番かっこいいセリフをハーツにとられた。


服の破けたヒナに、俺の上着を渡す。


「ありがと」


ヒナのお礼をしっかり聞いてから、ゼクサスを運ぶ。

俺とハーツはそれぞれゼクサスの手と足を持ち、担架のような運び方をしていた。


「ねぇ、シュウ。オイラ達すごく変な目で見られてるよ〜」


ハーツの発言に俺はちょい切れで答える。


「そんなこと知ってるわぁ! こっちは陰キャヲタク様だぞ! 人の視線には敏感なんだよ! よし、こうなったら走るぞ!」


何だろう。主人公してるって感じがするぜ。

ヒャッフーーー!


俺達は駆け抜けた、この広い世界を。

訳・俺達は駆けた、この街の人混みを。


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