第40話 ぎゃふん
勇者との決戦を前に、私の車は一旦グリムロクに移されました。ここではディーゼル車は異物。扱える人間は転生転移しているものが主流でしょうからね。私が来たってバレます。パール先生がさくっと転移で移してくれました。パール先生何でもありだなあ……。
ただ、パール先生はスキルで強いというか、本体が物凄く強いという感じなのでスキルでどうにかできる感じではないそうです。素で空間転移をしているっていうね。
なので私の出番です。まずパール先生が一度引いたという嘘情報を流しました。欺いたわけです。Lv9なので嘘かどうか【鑑定】されずに引っ掛かってくれるとよいのですが……恐らく限界突破で相当なレベルを上げていると……思う。SSRクラスのレアスキルなので、どこまでLvが上げられているのか不明ですが。
チートを伝授しているであろう神様が後ろにいる感じがしますので、うーん。神王国の〈神〉ってチートの神様な感じがするんですよね、きつねの直感ですけど。
***
勇者が暴れだしました。鉱山地帯の街を一つずつ焼き払っているそうです。これは……帝国を破壊しつつパール先生を誘い出そうって感じですね。んー……。
鉱山地帯の街なんですがここからだと遠いので、通信が若干遅れてしまうんです。電話や無線は存在するのですけど……勇者が結構遠くから巨大魔法陣を展開そして早く実行するので対処が難しい。
帝国中心部に掛け合って、一度鉱山地帯の街の住民を避難させることにしました。
グリムロク周辺は強固な魔法陣が組まれていて、〈魔法陣の精神力〉を消滅させる、魔法陣対抗魔法陣が組まれています。
それの影響で魔導防御はなくなるけど、巨大魔法陣の一撃を食らうよりかは全然まし。通常魔法は放てますしね。
***
勇者が完全に動きました。軍隊を一気に転移させて避難した街の食料を元に行進を始めたようです。っかー、ロッキー山脈を軍隊レベルで転移させるのかあ……。
ただ、軍隊はこちらも呼応してまして、グリムロク周辺に展開してあります。そう簡単には崩れません。腐っても帝国なんで、ここ。
恐らくグリムロクを取り囲んで籠城を強いるであろうというのが軍師さんの予想です。グリムロクから離れれば、勇者の大魔法で1つの軍隊程度、壊滅させることができるので。
***
実際籠城が始まりました。籠城ってのは助けが来ない限り水や食料、士気が崩壊して負けちゃうのですが……。
残念、こちらには『私』がいます。Lv3精神力向上、Lv3精神力回復向上、Lv9液体生成をなめるなよ!!
栄養価の高いスープを作り出して食糧問題を解決することなんざ余裕なんだよ! 避難してきている住民含めてな!
水生成はそれなりに使える魔術師さんがおりまして、水問題も解決。ここら辺はどうにでもなりました。
防衛なんですが、都市の中心には魔法陣対抗魔法陣が組まれているから、勇者の大魔法ですら完封。戦略魔法の魔法砲などは複数の高い壁が存在していて当てやすい直射はできない。こちらも対抗魔法が使えるので魔法戦はそこそこどうにかなっています。壁に傷が付いたらささっと直せます。鉱山地帯と大都市を結ぶグリムロクならではの、車を直すための修復魔法を持っている人材が割と多いのです。
勝てます。相手は食料がどんどん減っていきます。こっちは全部解決しています。勇者が暴れる以外に解決方法は、恐らくないはず。空間転移は一度その場所を見ておかないと転移できません。いきなり魔法陣のど真ん中に転移はできない。
勝てます。ただ、軍隊に対しては、だけど。勇者を止めるには私とパール先生というチート並の存在で止めるしかない。
***
勇者、〈見えているところには転移できる〉ということを利用して籠城しているグリムロクの門まで一気に転移してきました。ああ、自分で破るのか。
ここからが私たちの出番だ。
門をぶち破られるのと同時に、私が壁を乗り越えて勇者の前に登場。まずは化けるを解除。化けるだけで1つ脳みそを行使してましたので、少し楽になるかな。
「やあ、勇者君。ぎゃふんと言わせに来たよ」
「てめえ、なんでここに居やがる!!」
「さあ? まあ、私が相手になるよ。どこまで通用するかは知らないけどさ」
「っち、いったん戻るか……ロゼスにいるはずだったお前がここにいるんだから、あっちで暴れてやるよ」
といって、空間転移を行使しようとしたんですが……。
「あれ、転移が……できねえぞ……」
「ちょっとパール先生は軍隊のほうに用事があって私と共闘できないんだけどさ、それでも君を止めることはできるのだよ」
【簡易】【結界】を【発生範囲拡大】で広く拡大して【空間】を【一方通行】で外側に出られないように【固定】する。大盤振る舞いだよ!! さあて、精神力がどこまで持つかなあ!!
「さーてこっちの番だ! ひだりて!
[ひだりて:超高圧水を発射します]
超高圧水が勇者に
「ざっけんな! アーロンダイン!」
勇者は聖剣アーロンダインで斬撃を飛ばす!
私はみぎてで魔力塊による魔力の盾を作って防御! 跳ね返すも併用して持ちこたえる!
「へっ!これでお前のトリプルは終了したな、終われ! ホーリー・レイ!」
アーロンダインから光の光線、恐らく聖なる属性ってやつだと思うんだけど……、そんな摩訶不思議な光線が私を襲う。ここは属性とかない現実世界なんだがなあ。チート様は何でも許される。
私は……。
「4つ目」
最強の装備と身体による強靭な魔導防御で受け止めつつ、【全力】で【属性】を【中和】。知らんよ、属性なんて。でも何かしらあるんだから、中和できる。
「なんだとぉ!?」
「少しだけ、すこーしだけ、残しておいてよかったなあ」
ね、ぼきん博士。
[はかせ:といっても融合した人格だけどねでふふ。大好きな牡丹ちゃんのためなら第3の補助脳で頑張ることくらい訳ないよ! でふ、でふ]
博士はさ、なんつーか、本当に科学探求と私が好きだったみたいでさ。融合人格で私が入ってるということもあって、少しだけ残しちゃったのよね。私の補助が出来る程度にはね。
さて、戦闘は隙ができた瞬間に一気に終わる。
あっけないかもしれないけど、これで終わりだ!
ひだりての水を止めて、みぎての魔力塊を止めて、精密に狙って念力と魔力の混ざった粘る網を発射! 一気に勇者……なんだっけ? ムサキ? じゃないな。十一とかでいいか。十一をからめとる。十一の魔力は完全に中和して使えないものにしてっと。
「さーて、ぎゃふんという時間だよ」
「うおおおおおお!!」
暴れる勇者だけど、さすがにLv27を超えることはできないようで。あーLv4とか5とか、勇者には必要なかったなあ、
「くそ……! ぎゃ、ぎゃふん! 助けてくれ! 神王国からもう出ない! だから命だけは! 頼む! ぎゃふん!」
「やだ」
「助けてくれえええええ日向ー!神様ー!」
「じゃ、死んでね。ヒナタさんと6時間のセックスは楽しかったかい?」
私といえば、そう、私といえば、これですよ。
狙う、全力、強打!
スパーンと棒が勇者の頭に叩きつけられて、勇者……ユーイチだ、ユーイチ。やつの頭はトマトのようにはじけ飛んだ。
終わったな。
勇者のチートジュエルのドロップを確認して、即座にしまい込みました。
アーロンダインは……加工して叩き折った。
これさ、魔剣だよ。人の血と理性を食べて成長するような魔剣。ファンタジーでよくある呪いの魔剣。
チートの神様、なんでこうしたかわからないけどなんか目的があったんだろうね。
しかしもう関係ない。
勇者にぎゃふんといわせたから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます