微かに残る心によって

第34話 融合して。



「おわりましゅたー!かんぺきでしゅ!」


「本当だ、稼働部位も完璧ですね、リハビリの必要もないや」


「ふふーん、わたしゅにかかればこれくらいどうってことないでしゅ」


「そうですね、ありがとうございました。最後の最後でこの世界の暖かい部分に触れることができて良かったです。頂いた料理もおいしかったですよ」


「?? どうしたんでしゅ??」


「いやちょっと。もう一度違う世界に飛ばされてきます。本当、ここに来てよかった」


 私はリスさんからもらったスキルを取り込みました。

 それはLv2の【隠す】。私を隠して、その間に化けて……って感じだったんですが、やることが変わりました。


 『でふふふ。か・ん・せ・い。周辺ごと一気に吸い上げちゃうからねえ。でふふふ』


 ということなんですよ、フェアリーさんを巻き込むわけにはいかないです。


 この住処を精密な範囲で隠す。


 これでいいんですよ、これで。


『なんか周辺が消えちゃったけどまあいいかぁ。逆にぼたんちゃんだけ吸い上げられるぅ。らんらんるー。ではぽちっとな。』


 シュイーン


 私は吸われるように足先から消えていきました。


 楽しい生活とはお世辞にも言えないけど、〈生きた〉という感じがする異世界生活でした。



 ***



 今私は博士の培養層に入ってます。意識ははっきりとあります。全く動けないけどね。吸い上げられたら神経を麻痺させられて、ここにざぶんと入れられました。キレイキレイしてから合体したいそうで。


「でっふふー。もうキレイになったかなー。処女うぶな体までキレイにしたからねぇ、でふふ」


 博士の見た目は、40歳になってない感じがする、禿、デブ、眼鏡、脂ぎった皮膚……ま、醜いというやつですね。


 元の世界だとスキルは発動しないようでして。博士の圧倒的科学の前では何もできない。それでもどうにかして戻りたいなぁ……。


「システムオールグリーン。完璧ぃ。それではこの手術カプセルに牡丹ちゃんをいれてぇ……でふでふ、これで準備は完璧ぃ。あとは合体するだけぇ」


「ぼきは隣のカプセルにはいってっと。そりでは、ぽちっとな」


 シュイーン


 ***



 牡丹ちゃんの取り込みは成功。一度補助脳Cを作ってそこに牡丹ちゃんの全記憶を入れて、眠ってもらったよでふでふでふ。ついでになぜかデータが消えていた補助脳にデータを入れなおして再起動も成功。でふふふふ。全部私の管理下。


 身体は牡丹、頭脳はぼき、名博士ぼきんの誕生でーす。


 女の子の体ってこういう感じなんだなあ、はぁはぁ。


 あ、取り込んだだけでまだ融合はしてないね。でふでふでふ、もうすべてを完全融合させちゃおうねえ。どんな感覚なんだろうなあ。


 補助脳Cから意識をコピーしてぼきの意識とこねこねして……あああ……これが牡丹ちゃん。


 んぎもちぃ……!!


 いっしょっていいなあ……!!


 この状態で出来ること全部やってみたいなあ……!!


 ***


 ――スキル変化――

 全て消失

 ――――――


 ――ユニーク変化――

 究極科学の体

 究極科学の頭脳

 サポートブレイン3つ

 ――――


 ***



 ……なんか、記憶と意識が復活しました。あるぇ? 取り込まれちゃったのでは?


 取り込まれた影響なのか、なんかめちゃくちゃ頭がよくなった。なので、私が吸い取られたこの装置を改造すればあっちに戻れると思う。

 改造はできる。だってめちゃくちゃ頭良くなったもん。


 何か仕組んでるかもしれないから、戻る前に精密スキャンをかけよう。



 ……んー、機能していなかったスキルはほぼすべて消えてる。機能していないじゃなくて、消えてる。

 ほぼ、というのは特異体質は残ってる。さすがユニークスキルといったところかな。


 この体は私を元に全て最高級の生体部品にしたみたい。とんでもない大金がかかるだろう部品で作り直してるわ……。

 そのおかげで無茶苦茶高性能。無茶苦茶よ。

 皮下複合装甲は消えてるけど、そもそもの体が主力戦車以上に硬くて、女の子のきれいでちゅるちゅるなお肌を持つ、これまた究極の複合装甲になってるから、別に良いか。


 んで、脳は新型の生体コンピュータに置き換わってら。あ、いや、高性能な脳みそってだけで頭が大きくなってるとかはない。これでスキルが消えたのか。


 スキルはないけど、純粋なパワーアップはしてる感じ?


 それでね、博士からの手紙があったのだよ。

 読むと……


 ――――


 でふふ、博士だよ。正確には融合した人格なんだけど。でっふでっふ。

 そのね、やりたいことはもう全部やったんだよ、この体でね。もー全部やった。

 シミュレータを使って赤ん坊から死ぬ寸前までの経験を何度も体験したよ。女の子ってこんな感じなんだね、でふでふでふ。


 それで、ぼきは満足しちゃったんだよぉ。もうやりたいことはないのさ。野心があるわけじゃない、純粋に知的好奇心を突き詰めて楽しみたかっただけだからね。

 ぼきが満足したから、次は牡丹ちゃんが満足しないといけないよね、ぎゅふふ。融合してるもんね。

 牡丹ちゃんの望み、叶えるよ。勇者にぎゃふんといわせるんだよね。

 何から何まで究極の体にしておくし、ぼきのデータをすべて補助脳Cに格納しておくよ。それをどう使うかは、牡丹ちゃんならわかるよね。


 ぼきが必死で牡丹ちゃんを探し出したように、牡丹ちゃんも頑張るんだよ。

 ――――――



 ……よーし、機械を改造して、もーどろっと。

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