第11話 スタンピードには全力で当たれ。全力だ。


今回の指揮をする隊長はこう言います。

「スタンピードってぇのはだな、通常はダンジョンにいるダンジョンモンスターが何かの拍子で地上にあふれ集団暴走することだ」

「自然災害に相当するようなものだからな、発生したら周辺の住民や兵士は一致団結して事に当たらなければならねえ」

「だからほとんどお金にはならねえからな。修繕費程度しか出ねえ。だが本気で対処しろよ。いつお前らの住処がスタンピードに巻き込まれるかわからねえんだ」



「「「ウィッス!!」」」


「おし、じゃあ出発するぞ!」


ブーンブーン!!


私は輸送隊の一員となって参加することになりました。


バスに乗った先遣隊がスタンピードと遭遇したそうです。そういう無線が入ってきました。この車便利だなあ、各種機器は何でもそろってる。


私は物資を運ぶ部隊なので、後方待機という感じですね。探感知たんかんちを使ってモンスターがやってこないように見張りをしております。屋根と通ずる上部ハッチがあるんだよね。便利でござる……。


『ガガ、ピー、こちら先遣部隊。敵はゴブリンの大規模な群れと判明。機銃掃射できる車は前に出て撃ってほしい。ドーゾ』


だそうです。うちはハッチに機関砲とか機関銃などは取り付けてないので掃射はできませんね……。

[ひだりて:氷のジャベリンマシンガンとかできるようになりましたし]

[みぎて:超高圧放水とか灼熱の風カッターなどができるようになったお! 前に進めるお! GOGO!]

なんだとー頂いたスキル凄いね。じゃあ前に出ます! 中型機動”装甲”車だからちょっとやそっとじゃやられないしね!


ブオーン!


目の前にゴブリンの群れが見えてきました……数は……探感知たんかんちし感じだと1万はいるでしょうか……。すごい数。2年ちょっとこの世界にいますから、幾度かスタンピードには遭遇してますけどこんな規模は初めてです。


『ガガ、ピー。こちら牡丹! 魔法による掃射行きます! 私の射線上には出ないでください! 以上! ドーゾ!』


うおっしゃいくどー! 右手は氷のジャベリンマシンガン! 左手は極熱の風カッターを!


[[アイアイマム!]]


バババババババ!

ヒュンヒュンヒュンヒュン!


つよ。すごい勢いでゴブリンが削られていきます。ほかの車による掃射も相まって一気に削れていきます。ツヨイ。


『ピー。おい、一部がこっちに気を向けたぞ! どぞ!』

『ガガッ。後退しながら掃射継続だー! 魔法もどんどん撃てー! ドーゾ』


『ピピーガガ。本体到着と同時に戦略魔法タイプの『ファイアストライク』が放たれるそうだ、出現した魔法陣の中に入るなよー! ゾッ!』


凄いな、一種の戦争です。戦略魔法とか初めて見る。


[みぎて:せんりゃくまほーってなんだっけだお?]

[ひだりて:攻城戦用の超大規模魔法です。魔法陣を展開して複数人で魔力を送り込み、一気に放つ。放つまで時間はかかりますが超広範囲を超強力に攻撃できますね]



本隊が到着したらしく、戦略魔法の魔法陣が空中に映し出されましたっ。



オアゲボンの一部も巻き込む気だ!



『ガガ! ピー! オアゲボンも巻き込むけど、これ退避は完了しているんですか!?』


『こちら部隊長、完了しているとは聞いている。ドーゾ』


『こちらオアゲボンハンターギルド! きつねぞくの退避場所が巻き込まれます!』


きーつーねーだーとー!


『こちら牡丹!救出に向かいまーす!! 発射はだめー!』


『戦略魔法は練り始めたら止まらんぞ!』


『牡丹イキまーす!』


クーガー! そしてりょうて!全速で都市の門へ向かうぞー!


[ひだりて:片手運転は任せて!速度固定機能があるので全速に設定してください!]

[みぎて:窓からみぎてをだすんだおおおおおお! 氷のジャベリンマシンガンを出すおおおおおお!]


いっくぞー!!


ぶうううううううううううううううううううううううううん!


”中型”機動装甲車『クーガー』、重量は20トン以上あるって性能諸元に書いてありまして。ゴブリンなんぞひき殺しながら進めます。実際そうやって進みました。


ぶおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!



『門が見えたー! 壁の魔導防御は機能してます、魔法による防壁が高い所まで延びてる! とっつげきー!』



魔力全開でクーガーを【浮遊】!そして【伝達】を使って後方から【風の高圧放射】! ゴーっと空中を進む車体を壁の上スレスレで滑らせるッッッ! そしてクーガーに全力で【中和】をかけて、〈魔導防御を中和〉! するっと内部へ侵入!


『門突破! きつねの避難場所はどこじゃー!』


『門から東15メートルの退避地下室です! 20名ほどいますっ』


『誰だかわからんがありがとう! クーガーなら押し込めば乗るっ』


『こちら魔法部隊長、あと15分で発射される! どーぞ!!』


地下室に着いた!無線か何かで連絡がついていたのか、みんな外に出てる。


「お迎えバスはここじゃー! クーガーに乗ってる補給品全部捨てて乗り込んでー!」


こゃこゃこゃこゃ。


「勇者様! なんとか乗り込みました!」


「にげっぞー!」


[ひだりて:右前方サスペンションが故障!]


「【誤魔化せ】! 修理は後からできる! 全速前進!」


っぶおーん!


魔法陣から逃れた3分後に戦略魔法が発動。超高熱の炎が上空から何度も何度も全てを押しつぶすように放たれて、すべてを飲み込み消し炭にして行きました。魔法陣の外に出ると消える炎と熱なので、周辺も燃え盛るってことはないみたい。



すごいな。戦略魔法すげえ。圧巻。



[みぎて:クーガーはいいとしても、もううちらの精神力がないお! 生命力削るかお? 生命力って言っても寝れば元に戻るお!]


「クーガーを退避させたら槍でスマッシュしてればいいんじゃない?戦略魔法でゴブリンは殆ど消え去ったよ」


街の一部も、だけど……。



戦略魔法でほとんど消滅したゴブリン。それを蹴散らすのは簡単なことでして。大乱闘スマッシュポコポコしていたら本体も到着。なぎ倒して、終わり。



終わったー。



**


英雄的活躍をした私でも、出た修繕費は雀の涙程度。本当厳しい世界です。


「うひー。クーガー直すのに足が出ちゃった……借金がかさむ……」



ここは複数のダンジョンがある場所。せっかくなのでダンジョン寄っていこうかなあ。

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