第10話 私はチートではないらしい。サハギンさんと車。


「それでさ、綺麗なおねーさんがここに来て愚痴っていったんだよ。勇者パーティに私の庭をごちゃごちゃにされてしまったと。スキルジュエルも盗られたし訴えられないかと。流石に難しいのではないかと慰めたら、もう泣きながら飲むわ飲むわ。酒樽一つなくして帰っていったよ」


 魚亜人……じゃなくてリヴァイアーさん、結構地元に馴染んでた……しかしよく飲むなー……


「どこの人なんですか?見知らぬ人?」


「いや、そこでスープ屋やってるよ」


 えっ。


 よく見ると確かに魚亜人……リヴァイアー様がスープ売ってる。

 顔出しに行きました。


「やあやあ」


「あら牡丹じゃないの。スープ飲みに来たの?美味しいわよーなんたって通常の3倍のレベル効果があるスープだもの」


「いや、うん。……え?」


「これくらいはすぐわかるわ。特異体質なのはあなたがレベル9相当の水をプシャーした時点でわかったわよ。どこからあなたが来たのかは知らないけど、そのスキル効果は〈この世界のもの〉だからね。チートではないわ。堂々と使いなさいね」


「マジ!?」


「おそらく能力開花のスキル効果よね。それはこの世界のものよ。さ、今日は飲んで行きなさいな。美味しいわよ、このスープは」


 頂いたのを飲むと、本当に美味しい。


「美味しい!」


「でしょ? あなたのおかげなのよ。今までの3倍美味しくなったわ。」


「またまたぁ、3倍もおいしくなるだなんて」


「ま、そうしておきましょ。ここに来たのは周辺の遺跡よね。そうねえ……以前スープの仕入れに使っていた車が隠してあるから、そこらへんを漁ってみたらどうかしら? 車以外にもお宝はあると思うわぁ」


 車かー。乗り合いバスでもいいけど、やっぱり自分の足があると何かと便利だよね。

 探してみようか。リヴァイアー様の車とか興味あるし。


 ということで車探し、スタート!


 オハゴーンは山岳地帯にある都市。山間やまあいなところにちょいちょい遺跡が残ってます。調べつくされているのか、なにもないんですけど。奥に進まないとおいしいのは手に入らないかな。


 儀式系の遺跡が並ぶ中、道もないような岩の間を抜けると、倉庫みたいな遺跡を発見。おやぁ?

 倉庫の中をのぞいてみると、日用品倉庫見たいですねえ。ちょっと探してみよう。


 ガサゴソガサゴソ。酒樽が多い。これサハギ……リヴァイアー様の倉庫だな。立ち去ろう。酒好きだなー。

 ……普通の槍がある。これはいただいちゃおーっと。トライデントだもんね普段に使ってるのは。

 だ、断じて盗みではないぞ!!



 崖を上るようにどんどん捜索。これ車あっても降りれられるのかな……?


 お、これはボタン。ボタン、あったら押さずにはいられないッッ! ぽちっとな。


 ずごごごごという音と共にぶいーんと崖の下が開きました。おおおー! 面白いギミックですね!

 浮遊しながら崖下に到着。そこで目にしたのは……


 大型車……? ですかね。でっかいタイヤが6輪もある。前部に2~3名と後ろに貨物室。幅広くて、高さもあって、長さはマイクロバス並み。装甲もある。

 エンジンは……動いた。鍵無し。生体認証っぽい。認証変えてあるってことは、譲るために用意してくれているんだね。うれしいな!


 ありがたく使わせていただくよ、ありがとうリヴァイアー様!


 ぶおーん!


 ぶ、ぶ、ぶ……。


 ぶわーん……。


「ガス欠ー!?!? 何で動くのこれ!?」


 メンテナンス書類によると、魔石っすか。魔石で魔導を作って、魔導で6個のタイヤ軸についているモーターを回す仕掛けだそうです。名称もある。中型機動装甲車魔導タイプ。名称長いな、これで中型なんだ。まあ大型バスほどじゃあないもんね。


 お、魔石入れるところってここに書いてあるね。そこに魔石をぽいぽい入れてみよう。

 魔石を獲ってくるか。そこら辺のモンスターさーん魔石になってー! ザシュ! メキッ! グシャァ!



 こんなもんかな。ぽいぽいぽい。


 ぶおーん!


 うごいたー! よーし降りていこうぞ!


 ぶいーん


 うわー快適。こんな荒れ道なのに振動もなくガンガン動いてくれる。車最高。名前つけようこの子に。うーん……。


 クーガーって名前つけよう。なんかかっこいいよね!


[ひだりて:そ、そうですね]

[みぎて:クーガー! クーガー! かっこいいお!]

 そこかしこにいるモンスターを乱獲して魔石を手に入れつつ、オハゴーンまで戻りましたとさ。


 魔石販売ショップがあったのでそこで満タンにしました。1750ドルエン飛んで行った。借金がかさむ……。いやー、めっちゃ燃料食べるねこれ……。

 まあでも頂いたものだし、満タンで1000キロ走るそうだし。最高な車をありがとう、オハゴーン、サハギンさん!!


 一度チェハダに戻りそしてクウィックの首都クウィックまでひたすらにクーガーで走行。駐車場に止めてっと……。



 クウィックの首都クウィックだー! 



 クウィック、そこは首都でありクウィック文化の中心地。


 なんだけど、戦争やってるんで戦争モードになってるね。そこかしこに戦闘員がいて、戦争で使うような車でいっぱいだー。戦争かあ……。


 ハンターギルドによってみると、なんかすごい慌ただしくなっておりました。


「こんにちは、今どうなってるんです?」


「私はきつねのこーちゃんだこやー! カードみせてこやー! 能力ランクBだこやね、今南のオアゲボンで魔物大行進スタンピードおこってるこやー! 能力ランクD以上は絶対出撃だよ! 明日には出発するから支度急いで! 至急急いで!」


「え、は、はい!」


 救出隊長に聞いたら、「車に物資を積ませてほしい」ということだったので、大急ぎでクーガーに物資を積み込みました。主に弾薬。モンスターそのものは雑魚なのかな。雑魚になら銃が効く。



 スタンピードか……体が震える。でも、助けにいかないと!!

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