第3話 諦めない、考えつくせ。
冒険者ギルドになんとか戻ると、驚愕の事実が私を待っていました。
「え、私のデータがない?」
「ないというか、勇者パーティの持ち物を持ち逃げしようとした罪で追放された。お前はもう冒険者ギルドを利用することはできん。持ち逃げしようとしたから殺してしまったと申請されたはずなんだがな、生きているのは勇者様が慈悲を与えたのだろう。もう山野牡丹は名乗るなよ。死んだんだ」
……へ?
「えっと、じゃあ新しい人として申請は……」
「できん。死んだが追放はされた。もうどうにもならん」
……冒険者ギルドから追い出されました。
どないしましょう、どないしましょうこれ。
ドドスコは国境の街だから、国境を超える?いや、無駄に文明化された社会、入国管理局に出せる身分証明書が何もない。
パスポートや冒険者ギルドの会員証とか、なにもない。
私が山野牡丹18歳と異世界生活2年、ということを証明できるものがなにもない。国境は、越えられない。
諦めちゃだめだ、2年間ここで生活した知識をフル動員しよう、何かある、何かある。
……うん、あるぞ、ある。
ここからちょっと西に行った街シルロックから山脈を抜けてオハゴーンにたどり着くルートがある。
あそこは山伏がとおる修行ルートだから、入国管理局がない。堂々と隣の国へ渡ることができる!
死ななければ、だけど。山伏の修行ルートだから、道は険しいしモンスターは強い。
「この状況から打開するにはどうすればいいと思う?」
[ひだりて:何はともあれ、水を生みだす【水生成スキル】を手に入れましょう。水辺にいるキューブスライムがスキルジュエルをドロップします]
[みぎて:水がないと死んじゃうお。水を生みだすスキルは一般人でもLv2で十分に消費魔素消費体力を上回る水を生みだせるお。累乗効果で最初からLv3の効果があるから、一つでもドロップすれば大丈夫だおっおっお!]
わかった。ちょうど西に湖があるし、そこでキューブを刈り取るとしようか!
えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ……。
この街まで下りてきただけで、もうめっちゃ速く走れるし息が続くなー。直感も五感も働くし。3の累乗ってすごいなー。
えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ……。
ついた! キューブスライムいっぱいおるー! そして肉食動物もいるなー! がくがくぶるっちょだよ……。
この世界はモンスターを倒すと魔石とスキルジュエルが『ドロップ』する世界で、逆にこれらを落とさない生き物はモンスターじゃないんだよね。
キューブスライムはモンスター! だから魔石も落とします! 魔石はこの世界の『魔法の電気』みたいなものを作り出す源になるので、売れるのだー!いっぱい狩っていぱーい売るぞー!
[ひだりて:このキューブスライムは30センチ四方の四角いスライムで中心部に核を持つ、雑魚モンスター界の王様、キングオブキングです。棒で叩けば安全に倒せるでしょう]
よーしじゃあ、棒を持って叩く。ぶったたく! くたばれー! くたばれキューブスライムー! くたばれヤードポンド法ー!
ぼこすかぼこすかどんちゃんどんちゃん
100匹くらい壊したところでスキルジュエルがドロップ!
「やったー、早速だけど【取り込む】……水生成スキル、ゲットしましたー!」
では水生成! じょっばぁ! うひょう凄い水の量!
ごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごく!!
「っぴゃー! 生き返るー! 水はいいぞ!」
よし、生き返ったことだしこの魔石を両手に抱えてシルロックの買取所にもっていこう。べつに冒険者ギルド直属じゃないから、私でも買い取ってくれるでっしゃろ。
「身分証明できるカードがないと、売っても入金できないって言われちゃった……」
[ひだりて:そういえばこの世界は古代超文明の名残で、完全キャッシュレスでしたね]
あ、そうだったね。
この世界は並行世界らしくて、メートル法キログラム法など国際度量が前の世界と同じなんですよねー! くたばれヤードポンド法なのも同じ!
1時間は1時間だけど、1日が長くて72時間もあります! だから1週間も1年も、全部3倍!
そのわりには、体は18、19歳くらいのままなんだよなあ。24歳くらいになっているはずなんですけど。まあぴちぴちで若いってのはいいことだね。
さて。
各種救済措置機能として存在する冒険者ギルドは使えないし、パスポートは市民権がないから無理。それ以外で身分証明できる物や機構は……
あそこしかない。
「はい、ようこそハンターギルドへ。受付はエルフのナタリアでございまーす」
ここはハンターギルド。世界規模で存在する、
ここに登録さえできれば、ハンターカードが手に入る。これは世界規模で通用する身分証明書。ここに登録さえできれば……。
「登録したいのですか? それでは南にいるお尋ねモンスター、超超強酸性スライム『スライム丼』を倒してきてくださいね」
む
り
どうするよ、両手
[みぎて:やるしかないお!何とか倒す方法を考えるんだお!]
[ひだりて:今持っている魔石と物々交換でいいから何かを手に入れましょう]
といってもなー。
ハンターギルドに集まっている情報によると、物はほとんどは溶かされるし、液体飛ばして攻撃してくるそうだし。
推測される弱点は巨大なコアなんだそうだけど、突き刺せる物質がない。
魔法スキルもほとんど無効、うーん、さすがお尋ねになるモンスターだねえ。
[みぎて:金やタングステンなら多分溶けないお! それらの槍を買うんだお!]
[ひだりて:どこにそんな資金が]
溶けない物質かあ。地球にいるときに学んだことないかなあ。
あ、あれならどうかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます