7月9日

 恋人に夢中で、仕事がおぼつかない同僚とランチをした。話は好きな人のことばかりだった。べつにわたしのことなんて必要ないみたいだ。でも誰かに聞いてほしい、ってやつ。

「次の休みには山に登ることになったんです」

「山?」

 こんな暑いのに。わざわざ。目の前の彼女だってアクティブなタイプには見えない。

「山はいいですよ」

 彼が好きだから。

 なんだ、結局山登りすら、彼の付属なのか。まあ、そんなもんだよな。

「どこか行かないんですか?」

 まもなく連休があるのにもったいない、と彼女は言う。

「人が多い場所に行くのはねえ」

「出会いって人がいる場所で起こるんですよ」

 至極真っ当な意見である。

「考えとく」

 彼の写真を見せてもらった。たしかに日に焼けて、アウトドアが好きそうだ。

「彼、魚も三枚におろせるんですよ」

「すごいねえ」

「なんでもできるんです」

 さぞかし追いつくのが大変だろうな、と思った。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

「今日はなにー?」

「今日はほおずき市〜」


昔はよく家族が鉢植えを買ってきたものだった。ひさしぶりに買ってみますか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る