3月8日

 8センチのCDが本棚にはさまっていた。

「いま若い子知らないよなあ」

 そういって細長いケースを彼は振った。

「もう聴けないの、なかみ」

「まあなんとかすりゃなんとかなるかも」

「なにそれ」

 テレビのバラエティ番組の企画ものCDだった。べつに聴かなくてもいいしろものだ。

「もしかしてレアになるかもしれないから」

 といって見つけた場所に彼が戻した。

 また見つけたとき、わたしたちは同じ会話をするんだろうなと思った。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

「今日はなにー?」

「今日はエスカレーターの日〜」


くだりのエスカレーターが子供の頃は苦手でした。でももうすっかりそんなこと忘れてさっさと乗っている。これもまた成長である。

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