ポッキーゲーム
この物語は、私の「こんな高校生活を送りたかった…、こんな青春ラブコメディを…、俺の春はいつだって俺色だ。」という思い、妄想を小説にしたものです。そのため、主人公の名前は作者の名前と同じであり、見苦しい点も多多あると思いますが、予めご了承ください。
この物語は、一一月一一日、Twitterで「ポッキーの日」、「ポッキーゲーム」等の発言を目にし、俺の前述の思いが刺激され生まれました。
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十一月十一日。とある高校の教室。
「おーし。今日は十一月十一日、ポッキーの日だぜ。みんな、ポッキーは持ってるか!」
男子の一人がそう叫んだ。
「今日はポッキーの日…、ということでー……。」
にやにやしながらなにやらもったいぶっているが、教室にいるほとんどの生徒は彼のことを見ていない。一部の男子が――またアイツ、なんかやってるよ――とかそんなことを言いながら、嘲るような視線を向けている程度だ。
「ポッキーゲームをやりたいと思いまーす!」
誰一人として、彼の言葉に反応しない。
「何と今回は、わが校が誇る美少女、 ピー さんも参加します!上手くいけば ピー さんとぉ~……」
わが校が誇る美少女、なんて者が存在する高校など日本に果たして何校あるのだろうかなどと思ったが、それだけで一部の男子が騒ぎ始めた。もちろん、ほとんどの男子は女子がこんな馬鹿企画に参加するはずないと無視を続けているが……。
「はい。それではここで、 ピー さんの登場です」
驚いた。 ピー さんとやらが現れた。それを見て、俺以外の男子全員が彼の許に集まった。まったく、男は単純だなと思った。驚いたことに、いつのまにか女子数名も混ざっている。いったい彼はどんな手を使って彼女達を参加させたのだろうか……。
「あれ~、木村君。君は何僕だけは関係ないよ、みたいな顔してるんだい?僕だけはそうゆうの興味ないですからみたいな。え?なにそれ?なにいい子ぶってんの?あー、じゃあさ、一回戦は、彼にポッキーゲーム、やってもらいますか? ねぇ? ねぇ?」
彼は一体何をたくらんでいるのだろうか。俺は取り敢えず、彼を無視することに決めた。
「じゃあ、しょうがないな~。 ピー さんと木村君でやってもらおうか~、ポッキーゲーム。それならやるでしょ~」
俺は無視を続けよう、と思った。いや、彼のその言葉を聞くまではそう思っていた。しかし、もう俺は我慢できなかった。
俺は立ち上がり、他の男子のブーイングの嵐の中、彼の許へゆっくりと歩み寄った。
彼はにやにやしながら言った。
「やっぱ男なんてそんなもんだよね~。はは、木村君も僕等の仲間だね。はい、じゃあこれ、ポッキー」
俺は彼からポッキーの箱を受け取ると、ポッキーを一本だけ取り出し、ポッキーの箱を ピーさんに向かって投げた。
ピー さんはあわわとかいいそうな感じでその箱をキャッチすると、俺の方を見た。
ピー さんと、目と目があった。
俺は武者ぶるいを何とか抑えながら、口を開いた。
「俺に、ポッキーゲームをやらせて…、後悔するなよ。」
彼はにやにやしながら頷いた。
「じゃあ、二人で端と端をくわえ」
そう言う彼を無視し、俺は ピー さんに言った。
「ポッキー出して。」
彼女は少し戸惑ったが、やがて俺の言った意味を理解したのだろう。ポッキーを一本取り出し、箱を男子のそれよりも小さく機能的で無い制服のポケットにねじ込んだ。
かわいい顔して案外雑だな、と思ったが…、俺はそれ以上に、これから始まるポッキーゲームへの期待に身体を震わせた。
「え、ちょっと何やってんの?二人で一本のポッキーの端と端をこー…、さ、くわえて」
「両者、ポッキーを持って、いざ勝負!」
と俺が言った瞬間 ピー さんはポッキーを持って俺に突っ込んできた。
「時雨蒼燕流 攻式一の型 車軸の雨」
なんとかポッキーでポッキー受け止めることができたが、腕に伝わってくる衝撃の強さが、その突きのすさまじさを物語っている。
「ちょ、御前等…、えっ、 ピー さん……」
なにやら周囲が騒がしいが、俺はポッキーゲームに集中することにした。
「すさまじい突きだな。俺のポッキーが粉砕するところだった……。」
「木村君こそ。私の突きをこんなに上手く受けた人、今までいなかったよ」
と言い終わる前に彼女は次の攻撃を仕掛けてきた。
「甘い!」
俺は彼女のポッキーをポッキーで受け流した。
「ちょ、御前等。ポッキーゲームって言うのは一本のポッキーをだな!」
「いつ…、私のポッキーが一本だと言った?」
「なっ…、まさか……。」
「〝煉獄鬼斬〟!!!!」
「っ!! 三ポッキー流…、だと……。」
確かに、俺はあの時、ポッキーを箱ごと渡した。だが、まさか三本を同時に使うとは、こいつ……。
「なかなかやるな。二ポッキー流ならまだしも、三ポッキー流とはな。しかも、一本は口にくわえている。その状態でこれほどの威力を出そうとすれば、普通ポッキーを噛み砕いてしまう。この技を使うためには、とてつもなく繊細な顎使いが必要だ。まったく、何て奴だ。」
「褒めてくれてありがとう……、木村君!」
と言うなり彼女は左足を踏み出した。
「飛天御剣流 奥義!! 天翔龍閃!!!!」
「ぐッ!! 何て斬撃、否、ポッキー撃だ。」
俺はなんとか彼女のポッキーを受け止めることに成功したが、次の瞬間俺の体は彼女に引き寄せられた。
「ぐはッ!!」
彼女のポッキーをまともに食らった俺は、教室の冷たい床に倒れた。
「さようなら、木村君」
彼女の冷たい声と共に、ポッキーが俺の首に振り落とされた。
「真ポッキー白刃取り」
「ッ!?」
俺は彼女のポッキーを掴んだまま渾身の力を込めて手首を捻り、ポッキーを粉砕した。顔面に落ちてくるポッキーの欠片を口で受け止め起き上がると、彼女が唖然としているうちに素早く間合いを取った。
「さすが、木村君だね……」
何が流石なのかさっぱりわからなかったが、俺は手に持っていた二本のポッキーの内、彼女の持っていた方のポッキーを食べた。
「!?」
「ポッキー一本、貰ったよ。」
「い、いつの間に……」
彼女は驚きながらも、先ほど口にくわえていた方のポッキーを再び取り出し、構えた。
「やられっぱなしってわけにもいかないし、ここらで反撃するか。」
俺は彼女との間合いを一気に詰め、彼女の顔面目がけてポッキーを振り下ろした。
「櫻花七式 一の太刀 五月雨」
「ッ!! 返し技……。こいつ…、そんなものまで習得してるのか……。」
「あ~、また外した~」
と言うなり彼女はポケットにねじ込んであったポッキーの箱を取り出し、全てのポッキーを出した。
「……、ポッキー無限地獄」
と言うなり彼女は持っていたポッキーを全て頭上に投げ、突っ込んできた。そして、一番早く落ちてきたポッキーを掴むとそのまま俺に突っ込んできた。
「ッ!!」
彼女のポッキーが俺の腹部に激しく叩きつけられ、その衝撃で粉砕した。
とその瞬間、彼女は落ちてきた二本のポッキーを掴み俺の両脇腹に叩きつけた。
「ぐぁッ!!」
頭上から落ちてくるポッキーを掴み取っては、それを力いっぱい俺に叩きつける。ポッキーが粉砕すれば又頭上から落ちてくるポッキーを掴み俺に叩きつける。彼女はそれを何度も繰り返した。
ほとんどのポッキーが塵となった頃、彼女は残りのポッキーを全て回収し、俺に背を向けて言った。
「散れ、『千本桜』」
突如、無数のポッキーの欠片が舞い上がり、俺の周囲を縦横無尽に舞い始めた。
「ぐあぁぁぁっ!!」
鋭利なポッキーの欠片達は、俺の体を切り裂きながら舞い続ける。
「今度こそさようなら、木村君」
そう言った彼女の悲しそうな横顔は、俺を見た瞬間凍りついた。
「……ごちそうさまでした。」
数分後、俺の回りを舞っていたポッキーの欠片は全て、俺の胃液により溶かされた。
「まさか…、あれを食べるなんてね。ここまでとは、私も思ってなかった……」
「だろうな……。」
まだネタは有り余っているが、そろそろ引き延ばし過ぎだし飽きてきたので……、そろそろ体力も尽きてきたので、俺はこのポッキーゲームを終わらせようと思った。
彼女も同じことを思ったのだろう。今までと雰囲気が変わった。
教室全体を張りつめた空気で満たし、彼女は言った。
「卍解 『残火の太刀』」
教室全体の空気が変わった。
今度は比喩などでは無く、本当に空気が変わった。空気が、乾いた。
彼女は一本のポッキーを構え、間合いを一気に詰め俺に切りかかった。
彼女のポッキーが俺のYシャツの端を捉えた。瞬間、ポッキーが触れた部分の布が消失した。
「残火の太刀〝東〟 〝旭日刃〟。我が炎の持つ熱の全てを、刃先一筋にのみ集中させた。ただ触れるもの全てを、跡形も無く消し飛ばすのみ」
そう言うと彼女は再びポッキーで俺に切りかかってきた。俺はそれを反射的にポッキーで受け止めた、がその瞬間、俺のポッキーの先端が消失し、彼女のポッキーが俺の体に迫った。
俺は素早く後ろに飛び退いたが、既にYシャツの一部は消失していた。
「っ…、炎を使えるってのは初耳だったけど、そんな技を隠し持っていたとは、 ピー さんはやっぱり強いね……。」
そういいながら俺は彼女の肩にポッキーを振り下ろした、瞬間ポッキーが柄の部分を残し消失した。ポッキーのおいしい部分が…、チョコの部分が跡形もなく消え去った。
それは、例えこの手を汚してでもポッキーは柄から食べる派の俺には、衝撃的だった。
「甘いのう。ポッキーだけに……。東があれば西もある。残火の太刀〝西〟 〝残日獄衣〟。その熱実に、一千五百万度。お主は儂に、触れる事すらできぬ。卍解した儂はその身と刃に、太陽を纏っておるものと思え」
彼女のその言葉が、俺にさらなる衝撃的を与えた。
甘い……、ポッキーだけに、甘い……。俺はこのポッキーゲーム開始直後、彼女に向けて甘いと言った。あの時、若干ポッキーだけにって言おうかなって思った。でも、俺は言わなかった。まあ、いいやと……。又次の機会にと……、俺はそう思っていた。にもかかわらず、にもかかわらずだ!彼女は今何と言った?甘いのう。ポッキーだけに……。しかも、さっき俺が甘いと発言しておきながら、それを言わなかった。その後でのその言葉。
俺は、ぜってーまけらんねえ。そう思った。
この、さっさと戦いを終わらせようと言う時に、残火の太刀〝南〟を出してくることはない、次は残火の太刀〝北〟で一気に決めてくる。そう考えた俺は、言った。
「一千五百万度…、その熱で溶けないポッキーがあるとはな……。驚きだ。」
無駄なことを言い時間を稼ぎ、俺は彼女から一旦離れ、虚をついて彼女に突っ込んだ。
「私の体は一千五百万度だって言ったでしょ?死ぬよ」
冷笑を浮かべて俺を受け止めようとした彼女の真横をスッとすり抜け、俺は机の上に置かれていた残りのポッキーを一本残らずかすめ盗った。
そして、柄だけになったポッキーを口に入れ、食べた。ただでさえ、さっきから結構な
量のポッキーを食べているというのに、この乾燥した空間でそれをやったことで、のどの渇きは頂点に達した。
慎重に自分の席へ向かい、御茶を飲み、準備を整えた俺は彼女の前に立った。
「ポッキーが何本あろうと…、結果は同じだよ、木村君」
彼女はそう言ってほほ笑むと、ポッキーを静かに構えた。
次の瞬間、俺に飛びかかってきた彼女の口に、俺は手に持っていたポッキーを一本残してぶち込んだ。
「ゲホッ、ゲホッ」
彼女はせき込みながらも、人前で口に含んだ大量のポッキーを吐き出すわけにもいかず飲み込んだ。さすがはモテる女子だな…、と思った。
そして、教室の温度がきゅうに下がった。
「そんなに一気にポッキー食べたら、のど、乾くでしょ?」
俺は彼女に言った。
「まさか…、残火の太刀使用中は空気が乾燥するから、私ののどを渇かせて、残火の太刀の使用を止めさせようとしたの?」
「うん、そうだよ。あっ、これ、飲む?」
そう言うと俺は、近くにあった〓〓〓〓の鞄から、まだ開けられてすらいないペットボトルを取り出し、 ピー さんに向って投げた。
ピー さんはあわわとかいいそうな感じでペットボトルを受け取ると、遠慮がちにポッキーでペットボトルの上部を切断し、飲みほした。
相変わらず雑だな、と思いながら、俺はおい木村なに勝手にとかなんとかどこかから聞こえてくる声を無視してポッキーを構えた。
彼女も、ペットボトルをごみ箱に投げ入れた後、ポッキーを構えた。
ピー さんと、目と目があった。
一瞬だった。
俺と ピー さんはほぼ同時に踏み出し、ポッキーを振るった。
鈍い音が学校中に響き渡り、俺のポッキーは折れた。
「ポッキーが折れた。もうポッキーはない。私の」
「まだだ。」
「?」
「俺のポッキーは、」
と言いながら俺は自分の胸を強くはたき続けた。
「まだここにある。俺ん中に一本通ったポッキー。そいつがまだ、折れてねえ。」
「木村君…、本気なの? ポッキーを持った相手と素手で戦うなんて、そんなの……、そんなの自殺行為だよ!」
「ああ、本気だ。俺のポッキーが折れるまで、俺は戦い続ける。」
「……わかった」
俺はYシャツを脱ぎ棄て深呼吸をし、両の拳を固く握った。
「木村君……、多分これで…、最後だね。次の一撃で、決着がつく。そしたらポッキーゲームは終わり。もう、二度と私達、関わることはないと思う」
「ああ。」
「短い間だったけど、楽しかったよ」
「ああ。俺も、楽しかった。いや、楽しいよ…、今も。」
「うん、そうだね」
俺の胸が高鳴った。
まだ体力も有り余っている強敵を前にして……、圧倒的に不利な状況であるのに、頬が緩む。
「行くよ。」
「うん」
俺は ピー さんとの距離を一気に縮め、全ての力を右拳に込めて真直ぐに打ち出した。
俺の拳と ピー さんのポッキーがぶつかった。
拳に鋭い痛みが走った。ポッキーはびくともしない。
「俺は…、確かに弱い。腕力でも、ポッキー力でも、 ピー さんには敵わない……。でも…、思いだけは、背負ってるもんでだけは、負けるわけにはいかねえんだよ!!」
俺の拳は、ポッキーを打ち砕いた。
俺の拳はどうやら、 ピー さんのポッキーを打ち砕くことができたようだ。ポッキーゲームは、俺の勝利という結果で終った。
ちなみに、一回戦のポッキーゲームで全てのポッキーを消費してしまったため、二回戦以降は行われなかった。多くの男子が期待していた様なことにはならず、十一月十一日、ポッキーの日は終わった。
ポッキーゲーム。
それは、己の中に通る一本のポッキーをぶつけ合う戦。
熱き者達の、熱き戦い。
それが、ポッキーゲームである。
引用文献(技名をお借りしました。『BLEACH』は、科白もお借りしました。)
・『家庭教師ヒットマンREBORN!』天野明
・『ONE PIECE』尾田栄一郎
・『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』和月伸宏
・『クロガネ』池沢春人
・『BLEACH』久保帯人
(敬称略)
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この妄想は私が高校生の頃に書いた妄想です(二〇一二年一一月一四日完成)。
コンビニで印刷して両面テープを使い製本し、真っ赤な表紙の小さな冊子にしました。内容は酷いですが、無駄に内装が本物の文庫本のようで完成度が高かったです。
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