ハッピーエンドの後の話的なあれ

@rairahura

りおほへだけどりおもほへもでない

一番近くのエーテライトからチョコボを歩かせて大体4、5日くらい

テレポが使えるって時代になんだってそんなとこにって話だけど尋ね人がそんなとこに住んでるんだから仕方ない

それにこの辺りは風も不安定で飛ぶこともできやしない

そもそもこの現代にエーテライトからそこまで離れた土地なんて存在するのかってあるんだからぴっくりだよな

歩き始めて1日くらいだとまだそれなりの町があったりはしたけども3日4日ともなると家もまばらでぼつぼつ見当たるかどうか

いまや人の気配なんて感覚を研ぎ澄ませたって感じ取れない

辺りは緑に囲まれて素敵な感じ

、、、、、

「辺りを緑に囲まれた」なんて言えば聞こえはいいが要はとんでもないド田舎

そのド田舎のそこそこ整った道をチョコボキャリッジでのんびり進んでいく

そこそこ整ったって言ってもせいぜい下草が刈られて多少均されてるってだけで舗装なんてありはしないけどまあここくらいしか人が通るところがないんだろう

いくらか轍が刻まれてるその轍のせいで荷台はガタガタ揺れるからまったく本当に最高の気分だよな!!!!

本当に不便としか言いようがないけどまあ急いではないし気持ちの良い日が続いてるしまあ良しとしよう

初夏の敗しい日差しが周りの木にやわらげられて御者台に降り注いでてポカポカして気分がいい

風が遠くの遠くここからは見えない海の匂いを運んできて髪を揺らしている

確か昨日くらいに見た海から吹いて来てるんだろう ご苦労なことで

何もなければ眠り込みそうな陽気だけどそういう訳にもいかないから何とか意識を保とうと類をつねった

まあ寝たってあたしのチョコボは優秀だから行く先を間違えたりはしないはずだけどもし何かあったらこいつだけじゃ対処できないだろうし起きててやらないと

確か尋ね人は海の辺りで過ごしていたことがあったとかないとか

この匂いはあいつらの家まで届いてるんだろうか

そろそろ着く頃合いだしきっと届いてるんだろうな

この辺りは緩やかな傾斜になってるからもしかしたらあいつらの住んでるとこから海が見えるのかもしれない


まずいまずいまたぽんやりしてた

眠気を払うように頭を振ってるとチョコボは心配したのかいつの間にか歩みを止めてこちらを振り返っている

手を軽く挙げて大丈夫と伝えると一声鳴いてさっきまでのようにまた歩き始めた

またしばらく進んで明るい林道を抜けると開けた平原が続いているのが見えた

風向きが反対向きに変わって平原の向こうからの匂いを運んでくる

その中には良く知った匂いが混じっていた

やっと着いたか

ミコッテの鼻は他のやつらよりほんの少し敏感らしい

昔から目に頼るよりこうやって匂いと

今はまだ聞こえないけど足音とか心音とか息遣いの音で人を判別する方が得意だ

ヒューランとかは基本的に目に頼るらしい

目ばっかり使って疲れねーのかって思うんだけどそれが普通ならあんまり気にならないんだろうな


さて念の為地図を取り出してこれまで道とこれからの道を確認する

どうやら迷って全然違うところに着いたなんてことはないみたいだ

到着の気配を感じて気が逸らないわけではないけども日が落ちてきたから残りの旅程は明日に進むことにしよう

このチョコボもだいぶ年取って草臥れてるのに随分と頑張ってくれてるし帰りの道も考えると無理はさせない方がいいだろ

チョコボを解き放って背中を叩くと体を震わせ足踏みをして高らかに鳴く

これはまだ行けるっていう意思表示なのはわかってるんだけどそうはいかない

無視してそのまま食事の準備を始めるとチョコボは諦めたのか大人しく座り込んで水を飲み始めた

チョコボの飯を用意してから自分の食事の準備を始める

こういう時ファイアシャードは欠かせない

軽く刺激を与えるだけで簡単に火が付く

呪術士とかだったら自力で火を起こせるんだろうけど生憎あたしにその心得はない

昔いろいろやっちゃったせいで体内のエーテルバランスが崩れたらしくて他はともかく火に関する魔法はほとんど扱えなくなった

せいぜいちょっとあったかいかな?って程度の熱を持たせるくらいしかできない

テレポの精度も微妙に落ちてて毎回ちょっとずれた位置に到着する

そのうち例えば岩の間崖の先とかとかまずいところに出そうだから矯正したいんだけどなかなかいい方法が見つからないまま今に至る

まあできないことを考えても仕方ない

ともかく大事なのはとりあえずものがあれば火を起こせるってことだ

鍋を火にかけて適当に途中で捕った獣の肉やら香草やらを放り込んでいく

辺りにいい匂いが漂い始めると周りに獣の気配が集まってくる

囲まれてる気配はあるけどあたしのほうが強いからわざわざ襲い掛かって奪いにこようとはしないみたいだ

そいつらの賢さに免じて余った肉をそっちの方に放り投げてやる

余らせても仕方ないし

一気にそっちに集まってがっつく気配を感じる

昔の自分を思い出すようで懐かしんでいるとどうやらちょうどいい具合に火が通ったようなので鍋を火からおろす

適当に味を調えてからちょうどよくなるまで冷ましてロに運ぶ

なにがしかの獣の肉は筋っぽくてたいして美味くもなかったけど食えないってほどではなくて腹を満たすには充分だった

飯を終えれば辺りは真っ暗

新月ってこともあって地上はほとんど何も見えないけど星は良く光ってて沢山見えた

星の光を頼りに明日到着することを紙に記してから蝙蝠の形をした使い魔に持たせてやつの家まで運ばせる

使い魔はむかーし暁の血盟で魔女って呼ばれてるやつが使ってるのを見ていいなって思って使い始めたんだけどこれがなかなか便利なんだ

使い魔のくせにあんまり命令を聞いてくれないけどこれくらいの距離ならなんとかたぶん無事に届けてくれるだろう

届かなければ着いた時にぴっくりするだろうからそれはそれで楽しいし問題ない

使い魔への命令を終えれば後は特にすることもないしキャリッジに乗り込んで眠ることにした

硬い床とうっすい寝袋でできた最高の寝床とは帰りも付き合いが続くことを考えると気が滅入る

あんまり遠出をする機会がなかったから準備をしてなかった

戻ったら新しいふかふかの寝袋を買おう

とりあえずはこいつで妥協することにして着てる服の方が厚いんじゃないかってくらいの寝袋に入り込む

夜が明ければ出発だ明日の昼ごろには到着するだろうけどきっとあいつは眠ってるだろうな もう片方はどうだろ わかんねーや

朝一番に畑の世話をするって聞いたし昔は朝起きて昼もずっと動き回ってたけど今はもうそんな必要もない

あいつが真昼間に眠りこけてられるそういう世界になったってことだ

平和でいいじゃねーか

英雄はもうお役御免で世界の為とかなんとか重くて辛いものばっかり背負う必要はなくなって

もう好きなことを好きな場所で好きなやつと好きにやっててよくなったってことだ

エーテル酔いしやすいのをおして無理にどこにでも駆けつけられるようなとこじゃなくてこんな不便なエーテライトの影響が少ないド田舎に住んでるのがその証拠

とはいっても元々引くほどお人よしなあいつのことだから今でも何かあればすぐ飛び出していくんだろうけど

そんな奴に何の用事かっていうとまあちょっとしたお祝いにな

多少遅れたけど誤差って言ってもいいだろ

みんなが一緒にいた頃は毎年揃って祝ってたんだけどさすがに今は散り散りだからそういうわけにもいかない

ちらりと荷台の方を見ると山積みになって鎮座している色とりどりの包みの数々

今年こそはってみんな来たがってたんだけどなんだかんだ忙しいみたいで全員そろうのはまた後日ってことになった

でもみんながあいつらに早く渡したいって大量のあれこれをあたしに押し付けてきた

中身はあたしも知らない

まああいつらのことだし変なものはあるとしても嫌なものは入れてないだろ

郵便屋さんの真似事なんて面倒くさいったらありゃしないけど暇だったし

きっとあいつらはびっくりしてそれから喜んでくれるだろうからまあいいかなって

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