第2話

「お試しでお付き合い?」

「はい、そうです」

 俺の後輩こと深山 鈴音は得意気にそういった。

「先輩が好きな人とお付き合いした時に、何か

 へまをして振られることがないように、お試

 しでお付き合いして練習するんです」

「そういうことか。けど良いのか?」

「何がですか?」

「俺に得しかないんだけど」

「大丈夫です。私にも得はあるので」

「?どういう得だ?」

「え、そ、そうですね、私の練習にもなります

 し!色々あります!」

「お、おう。分かった」

 何か誤魔化された気がするが気にしないとして、この提案は本当に得しかない。

 あくまで偽物だとしても、好きな人と付き合えるのなら誰でも喜ぶはずだ。

「俺は全然良いぞ」

「じゃあ決定ですね!私はこれから用事がある

 ので帰ります」

「途中まで送っていくか?」

「いえ、大丈夫です。それでは」

 話が終わると深山はすぐに帰っていった。

 あくまで入学したての一年生なのだからまだ準備することなどがあるのだろう。

 俺も帰ろうと足を進めようとしたところで、

携帯が振動した。

『今すぐいつもの店に来い』

……今日は本当についていないらしい。

 俺はすぐに家に帰り、身支度を整え、家を出ることにした。





♡○♡○♡○♡○




「やって来たな」

「新学年早々暇なやつだな……」

 俺は言われた通り近くのファミレスに行くと

メールの差出人がいた。

「ごめんね唯人。僕も止めたんだけど……」

「いやお前のせいじゃない」

 俺をここに呼んだのは大柄で強面の男、奈良

 修士(なら しゅうじ)、そしてもう一人の方はイケメンの、陣内 凉(じんない りょう)。

 去年から同じクラスで今年も同じクラスだったが、いつの間にか仲良くなり普段はこの三人で学校生活を送っている。

 なお、俺の数少ない友達でもある。

「修士、俺を呼んだのはお前か」

「ああ、そうだ。確かめたいことがあってな」

「何だよ」

「それはだな……」

 一度深呼吸をし、喋った話題は、

「あの可愛い女の子は誰だ?!いつからあんな

 可愛いこと関わってた?!お前は俺と同じで

 モテる部類じゃないだろ!」

「ちょくちょく毒を吐くな。俺がモテないのは

 今更だろ。あいつは俺の後輩だ」

「後輩?本当か?」

「こんなので嘘ついてどうすんだよ……」

「良かった良かった!俺だけ一人取り残される

 ところだった」

 俺に彼女がいないと知って喜ぶとは大分やばい奴だな。

 だが面倒くさいからお試しで付き合っていることは伏せておこう。

「ほらね、後輩じゃないって言ったじゃん」

「ぐぬぬ……、なにも言い返せん。お前は彼

 女とはどうなんだ?」

「毎週デートするぐらいは仲は良いよ」

「ぐはっ!やはり顔なのか!」

 今の会話にも出てきたように凉には彼女がいる。同じ高校にもいるが今日は別行動らしい。

「唯人にもあんな美人な後輩がいたとはね」

「ああ、あいつも何で俺に関わってくるのかわ

 からんが。……ところで何で俺とあいつの

 事を知ってるんだ?」

「いや朝から噂の美少女と仲良さげだと噂にも

 なるでしょ」

「俺も可愛い子がいないか探してるときに

 見たぞ」

「いやお前は朝からなにしてんだ」

 非モテも拗らせると危険だな。

「俺もあんな後輩が欲しかった……」

「もし後輩がいたとしても、話しかけられるか

 は分からないけどね」

「そ、そんなはずはない!そ、そうだよな!

 唯人!」

 俺はそんな問いかけに、顔を反らすことしか

出来なかった。


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お試しで後輩と付き合うことになった。俺が好きなのお前なんだけど?! @1ya12ma2to

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