ゴミ回収しますよ!

盛田雄介

ゴミ回収します!

「そちらの星にお困りのゴミは、ないですか?」

突如、宇宙センターに謎のメッセージが入り、大統領は、すぐに返信した。


「メッセージをありがとう。私の星には処分出来ないゴミが沢山あるが、それを知ってどうするんだい?」

「実は、私達は各星を巡って、ゴミ回収を行いブラックホールに捨てに行くというボランティアをしています。もし、困ってるならしばらくの間、ゴミ回収を行いますよ」

大統領は、大喜びで宇宙人達の提案を受け入れた。


しばらくすると、複数の円盤型宇宙船が現れ、星の周りを取り囲み、ゴミだけを次々に吸い上げていく。

それも一度限りでなく、新たにゴミが出れば、生ゴミだろうと、不燃ゴミだろうと、プラスチックだろうが関係なくゴミだけをドンドン回収して行った。


その後、星の空気は澄み渡り、川の汚れも解消され、大統領の評価はうなぎ登り。

「いやー、親切な宇宙人もいたもんだ」

大統領が空に運ばれるゴミの山を酒のつまみにしながら、くつろいでいると、突然ドアがバンッと開いた。

「大統領、大変です!」

「どうした? 騒がしいな」

「全世界の石油が底をつきました」

「なんだと?」

大統領が酒の入ったコップを落とすと、反対のドアからも部下が慌てて入ってきた。

「大統領、大変です! 全世界の野生動物の生態が完全崩壊を迎えています」

「そんなバカな! 星の環境はこれほど良くなっているのに!」


大統領は、全世界と協力して原因追及を急いだ。

「せっかく、支持率が上がったばかりなのに、どうしてこんな事に・・・」


大統領が1人項垂れてると専用通信機に宇宙人から連絡が入ってきた。


「どうされたのですか?」

「実は君達のおかげで星が綺麗になったのに、別のトラブルが色々と発生しているんだ」

「それは、非常に大変ですね。この星のゴミはあと僅かで回収が終わると言うのに」

「本当にそうだよ」


通信機を通してのしかかる重たい空気。

大統領は、国民は自分の足元でなく、背中に乗っていた事を悟る。

初めて味わう責任という重圧に押し潰されそうな大統領。

しかし、そこに一報が入ってくる。

「大統領、原因が分かりました!」

「おー! 原因は何だ?」

「それは、あれです!」

息を切らせ、部下は空を指差した。

「まさか、あれが?」

指さす先にいたのは、宇宙船だった。

「なぜだ。彼等はゴミを回収してくれたのに」

「それが、原因なんです。彼等がゴミを回収した事によってリサイクル可能な資源が無くなり、新たな資源が必要となって底をついてしまったんです。生態系に関しては、生ゴミが無くなったせいで、カラスが絶滅した事から鳥類の生態系が崩壊。そこから、芋づる形式で野生動物達の生態が崩れたんです」

「そんなバカな」


膝から崩れる大統領へ1通のメッセージが届いた。

「親愛なる大統領。全てのゴミ回収が終わりましたので、ご報告させて頂きます。今回は貴星の役に立てて何よりです。またのご利用をお待ちしております」


気がつくと宇宙船は日の沈みと共に全て姿を消し、大地は燃え盛る炎と群衆の叫び声が充満していた。

それらを目の当たりにした大統領は膝から崩れ落ち、部下を呼んだ。


「すまないが、宇宙船を呼んでくれないか。ここに回収してもらいたいゴミが、まだ残っている」

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ゴミ回収しますよ! 盛田雄介 @moritayu

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