第二章 解き放たれし者

2章-01話 出立準備

 まずは、グランシスディア・ゼロまで戻ることになった。


 ひたすら時速二百五十キロ以上で走らせること、三時間半でシティー・ゼロが見えた。



「まずは、予約からだが本式の予約をするのにギルドカードを発行してもらう必要があるのでな」と、言ってグレンを連れてギルドの支部に入って行く。



 流石に俺も動甲冑は脱いでいるし軽装の状態だ。


 得物ぶきだけは、そのままだが魔導太刀を持っている。


 コレだけでココでは俺が来たというのが伝わるようにいつの間にかそうなっていた。


 魔導太刀のなりが少し目立つのだ、金紋の斑鳩いかるが紋のつばに漆黒では無く漆黒に近い濃い紫色に金粉をまぶした様なさやに帯留めは朱で染めたような色地の、珍しい色の取り合わせの魔導太刀だからだ。



「そのまま支部長のところまであがらせてもらうぜ、ヨナ様のお墨付きだ」と受付にデータパッドを展開し見せる。


「どうぞ、お上がりくださいませ」と受付から返答を得る。


「グレンこっちだ」と不慣れで少し迷いかけたような、グレンに声をかけた。


「すまん。不慣れなもんで」とグレンは俺に並んで一緒に歩いて行く。


「堂々としてれば、いずれ慣れるさ」と俺は言った。



「ジャークヴェイ支部長、友人を連れてきましたぜ。ヨナ様からの預かりもの届いてますね」と俺は言うと支部長の前まで行って、さっきと同様にヨナ様からのお墨付きを見せる。


「ああその件か、来てるよコレだろう」と支部長は言って、封締めしてある封筒を魔導転送器から取り出した。



「封筒とは中々った演出だな、何が入っているんだ?」と支部長が興味津々きょうみしんしんといったふうで聞いてきた。



「ギルド証ですよ、ヨナ様らしい感覚でしょう? それとパスキーですよ王宮へのね」と言っておいた。



「パスキーは俺の分も入ってるんで……信用第一ですから」とも重ねて俺は言った。



「それと俺のFPtフローティングパワートレーラーM-FTPミドル-フライングパワートランスポーターの貨物便を使って、ギルディアスの貨物港に直接降りられるように手配を行って頂けますか、支部長?」とも言った。



「相変わらず支部長遣いの荒いやつだ、パスコードはいつものヤツでいいんだな?」と支部長が聞き返してきた。


「ええ、パスコードはいつものヤツで構いませんよ。積み荷は向こうで今回は鑑定にかけますので……」と俺が言う。



「こっちへのネタは無しか」と支部長がネタ欲しそうに言った。



「ジャークヴェイ支部長らしくないですな。何かあったんで?」と俺は逆に情報を引っ張り出そうとする。


 たまらず支部長が降参する。


「とある手配中の情報屋が禁止されている、二重競売をやりやがったんだ。お前さんがたが先行して行った遺跡のな……。お前さんらに情報を売った後でだ! おかげでココのギルド支部の情報が、地に落ちそうなんだよ……」と言った。



「で後からあの連中が来たってワケですかい?」と俺は言った。



「なんだ出会ってたのか! で、どうなった? 連中とはめたのか?」と支部長がオドオドしながら聞いて来たのである。


「揉める前にドス効かせたら、向こうが折れましたよ。俺んところとやりあう気はねえって。そのまま彼らはそこに残りましたが、我々は別件があったんで、直ぐにこっちに来たんですな。それ以降は何があったかはよく知りませんが行方不明ゆくえふめいでも出たので?」と支部長に俺は聞いた。



「まだ連絡は無いんだが、例の遺跡からギルドサインが出てないんだ。」と支部長が言った。


「もう引き上げたんじゃないんですか? あそこは俺らで掘り尽くせるところまでは掘りましたからな」と俺が言う。



 続けて俺は言った。


「あと支部長、情報屋は生きのイイやつを選ばないとだめですな、アイツは真面まともに商売する気は無かったみたいですよ? お互いに、一杯食わされましたな、まあそのおかげで良いことにも巡りあえましたが」と聞きながら支部長のギルドサインの話は流した。



 ギルドサインはここに潜ってますよ、と言う置き型の信号敷設しんごうふせつまかなうものなのである。


 悪く言えば置き忘れてもそいつらの責任であり、FPtが止まっていてギルドサインを表示しているのに、遺跡にもぐるヤツの心境が知れなかった。


 ウチのFPtは停車固定ロックすると自動でギルドサインが出るようになっているのである。


案外あんがいただの置忘れではないですかな?」と少し一息入れてからギルドサインの話をした。


 そして直接GCTギルドセントラルタワーに入れるように、大型ポートの予約をデータパッドから取った。


「グレン、そいつは首から下げてふところに入れておくものなんだ」と言って自分のブラックオニクスカードを懐から引き抜いて見せた。そして再度懐にしまう。


「他の皆も大体同じようにしているぜ、慣れないのは仕方がないがっと、そっちの厚い板は俺にも一枚くれ」と俺はグレンに言った。


 グレンはそれを一枚こちらに渡すと、もう一枚を懐のポケットの中に入れた。


 俺も同じようにポケットにパスキーを入れる。


 グレンのカードカラーはダイアモンドカラーだった。


 流石にまだブラックは無理かと断念せざるを得なかったが仕方がないカードが発行されることのほうが珍しいのだ。



 普通の冒険者なら無理な話だったろう、今回の話はそれくらい難易度の高い話なのだ。


 遺跡から出て来たヤツにギルド証を発行するなんて荒業ができたのは、偶々その昔ヨナ様とバッタリ外で遭遇そうぐうした際に一撃で見破みやぶってしまったからでもあったのだ。


 昔は今よりもっと向こう見ずで突撃野郎だった。そんな時代が俺にもあったわけだ。



 まあそんなこんなでいろいろコネができて、今の俺になるわけではある。



「ま、そいつらの話はもう一日経ってから考えてみてはどうかな? 支部長」と俺は言った。


「そういわれてもな、まだ一年半目の駆け出しPTパーティーなんだ。心配するなと言われても……」と支部長がすがるような目でこちらを見る。



「心配性にも色々あるが、過保護なのはいかんぜ。真面に帰ってきたら、ちゃんと講習を受けさすんだな。俺らは少し所用でギルドシティーまででかけにゃならんから、何かあったらエイシアのPTを口説くどくんだな」と俺は薄情はくじょうにも、ココで二位の実力を持っている中堅ちゅうけんどころのPTを指名して置いたのだった。



「待たせたな、グレン行こうか。M-FPTの時間もある。便数には割り込めるが、早い方がいい。何せGCTの上層階で首を長くして御待ちの方がいらっしゃるからな」と俺は言った。

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