第17話 休日姉妹

「姉ーさん♪」


 冷房がかかるリビングで、ソファーにの寝転がる姉さん。


 白いイヤホンを外すとこちらに顔を向けた。


「ん、なに?」


「今日さ、姉さん暇?」


「うん、暇だけど…どーしたの?」


「久しぶりに姉妹で買い物に行こうかなって。それに…」


「それに?」


「もうそろそろさ、あの日でしょ?」


 私がそう言うと、あの日…とボソリと呟く。


 そして、あ、と何かを思い出したような表情を見せると、手をポンと鳴らした。


「あー、なるほどね」

 

「そう。だからそれも兼ねてお願い!」


「え〜、じゃあ…」


 すると姉さんは、イタズラな視線を向け、こう言った。


「ちゅーしてくれたらね?」


 と片目を閉じて、白い頬を人差し指でポンポンする。


 そんな姉さんの仕草に、思わずドキリと心臓が跳ねた。


「もー、姉さん!」


「あはは! 柚葉可愛い♪」


 と、笑いながら私の頭に手を乗せる。


 わしゃわしゃと手を動かした。


 本当に、私の姉ながら可愛い。


 大人っぽくて、美人で。でも、時々子どもっぽいところが見え隠れして。


「ホントにずるいなぁ…」


「あ、ごめん嫌だった?」


 そう言われて、慌てて手をパタパタする。


「ううん!そうじゃなくて…なんていうか、姉さんの方が可愛いから…」


 自分の気持ちが恥ずかしくて、うまく言えない。


 すると姉さんは、「ちょっと待ってて」とリビングを出る。


 そして、すぐに戻ってきた。手鏡を持ってきて。


「そういうのは鏡見て言って」


 そう言いながら私の顔の前に鏡を向けた。


 私の顔が映る。


 目がぱっちりしてて、鼻が高くて、唇が薄くて、肌が白い。


 顔のパーツだけ見たら、本当に姉さんそっくりだった。


「どう? 可愛いでしょ、私の妹」


 ふふ、と姉さんの優しい笑顔に、思わず胸が、ふっと熱を帯びる。


 そして、私も釣られて笑った。


「うん、さすが姉さんの妹。すっごく可愛い」

 

「でしょー。あ、でも…」


 そう言うと、姉さんは鏡を下ろし、私の背後に回る。


 そしていきなり…。


「にゃ! ね、姉さん!?」


「んー、でも、これは小さすぎるかもね」


 と、私の胸を揉みながら…。


「大きなお世話…ちょ、姉さん…やめ…んっ…」


「こうやって、下から揉むと良いんだって」


「分かったから! 離して!」


「えー、仕方ないな〜」


 胸から手の感触が消える。


 ふぅ、と息を吐く。


「なんか姉さんのせいで疲れた…」


 と、言った瞬間。


 右耳にふぅ、と生暖かい風が吹き込んで、思わず変な声が出てしまった。


 姉さんから距離を取る。


「あははは!柚葉、かわいいー!」


「もー! 姉さん!」


 姉さんが無邪気に笑う。


 白くて、眩しくて、やっぱり可愛い。


 もし、私がお兄さんだったとして、たぶん好きになってたんだろうな…。姉さんのこと。


「それじゃ、準備できたら行こうか♪」


「うん、久しぶりに姉妹水入らずでね」



 


 


 


 





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