幼なじみの妹と付き合った

あげもち

第1話 告白

 こんなことがあるんだって思った。


 放課後の教室、風をはらんでさらりと揺れる白いカーテン、ワックスの匂いと、机や床の木材の匂い。


 そして、西に傾いたオレンジ色の光が、彼女を照らした。


 パッチリとした素直そうな瞳、スッと伸びた高い鼻に桃色の薄い唇。


 全体的に平均的な身長と体つきをしているが、そんな彼女には、ポニーテールの触覚ヘアーというのだろうか?それがとても似合っていた。


 彼女…一ノ瀬柚葉いちのせゆずはの前髪がさらりと揺れる。


 「ありがとう、約束通り来てくれたね…お兄さん」


 嬉しそうに、にこりと微笑む。


 そんな可愛らしい仕草に思わずドキリとする。


 緊張しながらも、俺は口を開いた。


 「あぁ、それで話って?」


 「そ、そうだよね…」


 あはは、と乾いた笑いを零し、目線を下に向ける。


 前で組んでいた手がギュッと小さくなった。


 「あのね、お兄さん…」


 ボソリと呟き、顔を上げる。


 そして、一歩距離を縮めると、真剣な眼差しを向けた。


 「ずっと…ずっと前からお兄さんのことが好きでした…だから、その…私と付き合ってくれませんか?」


 心臓が大きく跳ねる。


 今まで告白されたことがないからだろうか、体が熱くて、ぼーっとする。


 こんな感覚、初めてだ。


 柚葉の顔が赤くなっていき、目には薄い涙を浮かべていた。


 「…だめ、かな?」


 柚葉の視線が下がる。

 

 …。


 こんな可愛い子になんて表情をさせてんだ俺は。


 「悪い、少し驚いちゃって…なんて言うか、すげー嬉しい」


 「え、じゃあ!」

 

 若干の上目遣い。あぁ、ほんとに卑怯なぐらい可愛いな。


 「付き合おう、俺たち」


 「やったー!」


 柚葉が俺に飛びついてくる。


 俺も嬉しくなって彼女の体をめいいっぱい抱きしめた。


 こうして、俺、渡瀬和樹わたらせかずきと一ノ瀬柚葉は付き合うことになったのだ。


 「あ、でも…姉さんにはナイショですからね?」


 でも、その時は、なんとなく発した一言、この時はその言葉の意味なんて、知りもしなかった。

 

 


 


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