元レスバトラー、異世界転生する。

まいこのまいこ

0 レスバトラー、異世界転生する

「シャロン・ウォーリー公爵令嬢、お前と婚約を破棄し、第2王子の私、トレー・ポーグレーはこのアマリーと結婚する!」


「なるほど、ひとまず理由をお聞きしても?」


「しらばっくれるでない!このアマリーこそが聖女であり、聖女の名を騙ったお前はアマリーに嫌がらせをし、怪我を負わせたからだ!」


「ソースは?」


「へ?」


「私が聖女の名を騙り、そちらの余り物さんに怪我を負わせたという証拠を提示してください。話はそれからです。」






私は世間で言う社畜だった。勉強を面倒くさがったツケなのか就職は難航、なんとか滑り込みで内定を貰えたのが今の会社だった。

毎日朝早くに家を出て、ひいひい言いながら終わらない仕事をこなし、終電なんかとっくにすぎて空が白んできた頃に帰宅する。

労働基準法?何それおいしいの?がベース中のベースの真っ黒会社。



そんなストレス社会に生きる私の唯一の心の拠り所がネットだった。ネット上なら学歴も、財力も関係ない。それぞれがそれぞれの世界の中で生きている。その世界を壊した者は「敵」と見なされ、とことん叩かれる。



私は、そんな奴らを叩くことをストレスの捌け口にしていた。気に入らないやつが目に入ればレスバを仕掛け、粘着しまくった。

某鳥でレスバが上手い人を見つけたら速攻でフォローし、返信欄を見漁った。とにかく手当り次第にどんどんレスバした。レスバして、レスバして、レスバしまくった。私にはそれしか取り柄が無かったから。私にはそれしか、人に勝てるものが無かったから。



レスバに依存し、勝利することに快楽を感じた私は、あろう事か会社にレスバを仕掛け、辞職を勝ち取った。あの元上司の悔しそうな顔は何回思い出しても笑える。



ウキウキで家まで帰ろうとした時、向かい側からトラックがこちらに突っ込んできた。おいおい、事故る気か?と頭の中でツッコミを入れる余裕はあったものの、毎日の過剰労働でズタボロな私にはトラックを避けるような時間は無かった。










「 今日は学園の入学式ですよ。シャロン様、起きてください」



「5分後に起こして……」


いや待て、なんで私は会話をしているんだ。

私はあの時トラックに引かれて死んだはずだ。会話は以ての外、入学式なんか行けないし、学生ではない。

そもそも、 シャロン様とは誰だ。

私じゃない。いや、私に向けて話しているからその名前は私のことなのか……?



「無理です!起こしますよ、ほら!」


「ううう…」


なんだここは。私は会社の応接室より何百倍もいいアンティークが置いてある部屋のフリフリなベッドの上で寝ていた。


「寝癖がひどい!髪の毛をとかしますから鏡の前に座ってください!!」


なんだか嫌な予感がする。

言われるがままに鏡の前にいくと、そこには赤い目をした茶髪の美少女がいた。


ああ、状況が掴めてきたぞ。残念なことに私のカンは当たったらしい。




どうやら私、異世界転生をしたようだ。


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