03 隣国での活動



 唐突に表れた人物。

 旅装束のその男性の助けのおかげで、私は戦乱の地から無事に脱出できた。

 しかし、元の居場所には戻りたくない。


 彼に身元を尋ねられても、口を閉ざすしかなかった。

 そんな私を哀れに思ったのか、彼は色々と助けれくれるようになった。


 大きな病院に連れていって手当を受けさせてくれたり、順調に回復してきたら美味しい食べ物をプレゼントしてくれたり、歩けるようになったら大きな劇場につれていってくれて、面白い劇を見せてくれたりもした。


 短い間だったけれど、それはそれは楽しい日々だった。


 今までの私は、騎士として剣を振るうばかりだったので、そういった楽しみを経験してこなかった。

 新しい日々は、私にはとても新鮮だった。


 そんな私は、元の国から離れた別の国で、便利屋としてやっていく事になった。


 騎士として働いていた頃には経験できない事ばかりだった。新しい交友関係ができたし、やった事が無い事もたくさんした。


 以前はいなかった友人だってできた。


 争いで親をなくした子供を見つけて世話をするうちに、親代わりの役目を果たす事もあった。


 毎日が充実していた。


 それらの縁は、全部私を助けれくれた男性が紹介してくれたものだ。


 私は自然と、彼の事が好きになっていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る