異世界喫茶ジェントル

高月夢叶

魔導師は、そして旅に出る

第1話 たまには休みたいときもある。

ダンジョン都市シルバーテイルの冬は寒い。

街の片隅の一角には喫茶店が存在する。

外には、銀鎧のフルプレートの装備を整えた冒険者や、獣耳を生やした獣人やドワーフなどが闊歩する。


ここは、現代とは掛け離れた異世界

ダンジョン都市の街中と喫茶店が繋がってこの世界唯一無二の喫茶店としてコーヒーとフードメニューを提供する。店名は喫茶ジェントル。


この世界にはコーヒーとゆう概念が存在しないらしく苦いコーヒーを好んで飲む人は少ない。


黒くて、苦い、怪しい飲み物を出す店として始めは、敬遠されていて未だに、漆黒の飲料のコーヒーを

毛嫌いされる。だけど、ナポリタンやサンドイッチなどのカフェフードなどの料理を珍しがって食べに来てくれる。常連のお客さんの陰で今日も営業できている。



これといった俺TUEEEEスキルが備わっているわけでもない。勇者として選ばれたわけでもない。


只、喫茶のマスターとして俺は、自身のコーヒースキルを駆使して、この異世界の人々の支えにならばと奮闘する毎日を贈っていた。


現代の喫茶が異世界へと繋がったこの店は、いわゆる異世界喫茶とゆうやつだ。


喫茶のカウンターには、10歳位の魔導師の女の子がカウンターに顔を突っ伏して炎髪の髪を垂らして顔を覆い隠すハットから覗く、灼眼の瞳は気だる気だ。身の丈ほどある大きな杖はカウンターに立てかけ、ローブは椅子の背もたれに掛けて、魔道服姿の彼女は、暖かなな店内で暖をとり居座っていた。


午前中も中頃、本来ならなら魔術学院に通っているはずの時間に喫茶に来ているとゆうことは

いわゆるサボりかと思う。そんなことは敢えて口には出さずにカウンターに無気力なまでに怠惰を むさぼる彼女に声を掛ける。


「お客さん、何か注文は?」と聞くと気だるそうな声でホットミルクと返ってくる。



「え?!あっ、はい。」


いや、出せるけどここは喫茶店だよ?


コーヒーが飲めないならカフェ・オレやココアだって出せるのに。わざわざミルクのみを注文するお客さんなんて珍しいと思っていると、魔導師さんは、は、覇気の籠らない声で「もう、嫌だ。全部捨てて楽になりたい。」


と全てを諦観した心が疲弊した疲れ切った弱々しい感じで言ってくる。

そんな、彼女を見て俺はある決意をする。

「ちょっと待っててくれな。」


そう言い、カウンターの奥からサンドイッチ用の細長いパンを取り出し横にスライスしてマヨネーズを塗り、その上にレタスと輪切りにスライスしたトマトを重ねていく。


「何か嫌いな野菜はあるかい?」


「チポラが、食べれない...」

「わかった。玉ねぎ抜きな。」

それを聞くと作り置きしておいた

細切れ玉子のマヨネーズ和えを最後に豪快に塗ってパンを重ねて完成。


萌香 もかちゃん、これお願い。」


「はい。マスター!」


給仕係の女性が黒髪を後ろでポニーテールに束ねた髪をなびかせエプロンドレスを揺らし皿に乗せられたサンドイッチを手渡す。


「これは?」

「サンドイッチです。」


「どうぞ、俺からのサービスだ!」


「これを食べて元気出しな。」


少女は、「わぁー、パニーノだ!」パクリとサンドイッチに被り付く。

この世界では、パニーノと呼ぶのかと思い、サンドイッチを美味しそうに食べる彼女を微笑ましく見つめる。


目を細めてうん。うん。と噛み締めて食べ進める。



「ふぉんらにほぉいひーのは-」



感激を早く口にしようとするが口の中にものが詰まっていて上手く言葉にならない。


「いいから。飲み込んでから喋りな。」

「う、うん。」 改めて、よく、咀嚼し飲み込んだ後、再び口を開く。


「こんなに美味しいのは食べたことがないよ!」


「見たこともない食材も入ってるし ウオボだってこんなに沢山入って!」


「そうか、気に入ってくれて良かった。」



「サボりは良くないけど、どうしても辛くなったら、うちの喫茶にくればいいさ。」と優しく言う。


「良かった怒られるんじゃないかと思った。」


「わたし、マレイ。」

ほっと安心したようでミルクを飲む。


「あれ?甘い。」

(なんだか優しい甘さだ。)


「ホットミルクには蜂蜜を入れたんだ。美味しいだろ?」


「美味しい。暖まる!」


「いったい、ここはなんなの?」


「ここは、喫茶店とゆう飲食店なんだ」


「マレイちゃん達とは別の世界の飲食店と繋がってるんだ。」


「キッサテン??」


「聞いたことのない店。」


「コーヒーや、軽食を提供するとこだよ。」

ここでは、馴染みの無い店で知らないのも無理がないだろう。


「良かったら今度は、コーヒーも飲んでみてな。」



「何時でもやってるからまた来るといいよ。」と俺は、にこやかに言う。



彼女は、「うん!」と元気良く返事をして喫茶を後にする。


それからとゆうと決まって午前中に

魔導師の少女はこの喫茶を訪れるようになるのだった。


学院復帰は、まだ、先が遠いなと

思いながら俺は、彼女を受け入れるのだった。    

***

今日も、今日とて、喫茶には朝から冒険者や獣人などの亜人が来店する。


お客の人数はまばらでその彼らの目当ては異質なコーヒーではなくここで普段このダンジョン都市シルバーテイルでは食べられない異国の料理だった。


テーブル席の奥には、ダンジョンでの採掘を終えた屈強のドワーフが特製ポークカレーを頬張り、その横では、新米冒険者がナポリタンを啜り、口の周りをケチャップだらけにして

無償で食べる。


そして、目の前のカウンターには、ふわとろの玉子のオムライスにスプーンで掬い、


口に運びながら歓喜の声を漏らす魔導師の少女が一人居た。


彼女が喫茶ジェントルに入り浸ってからしばらく経つ、未だ学院を休み続けて、一日中喫茶で居候するいる彼女に、いい加減そのワケを聞いてみたいものだ。



だけど、自身のことを話したがらない彼女は、こうして喫茶で過ごすだけなのだった。


「ほわー。あに、ふぉろとろとろのあー」


マレイは、と言葉にならない食レポをしてくる。



「口の中に食べものが入ってるときに喋るんじゃないの。」


「むー。」


マレイは頬を膨らませて子どもみたいな膨れっ面で俯く。


「まー、気に入っってくれて良かった。」


「これは、オムライスっていってな、トロトロのの玉子でチキンライスを包んだものなんだ。」


「わかる?チキンライス。ケチャップご飯。」


「うーん。なんだか初めて聞く名前のご飯。」


改めて、チキンライスを味わうように噛みしめる。


「お米ってこんなに美味しいんだ。普段食べているのは、はこんなにもちもちで甘みが無いし。」


そう言い、また一口、オムライスをパクつく。


「そうか、それほどか。」


そう言われると料理人冥利につき嬉しく思う。


「この人参ポタージュもオムライスに良く合うから飲んでみ。」


そう言い、人参ポタージュを促す。


「うん、さっきから甘い、良い匂いがしてたから気になってたんだ。」


「いただきまーす。」


そう、スプーンでポタージュを掬い、口に含むと、んん~っと頬を綻ばせる。


「人参のそのものの甘みが凝縮して、濃厚な味わいで美味しい!」


ポタージュ掬い飲み、掬い飲み繰り返して


至福の吐息をつく。この程よい塩気がよりいっそう食欲をそそられる。


「食事中のところ悪いんだけどさ、なんで学院を休み続けるんだ?」


「よかったら、教えて貰っていいかな?」


「それは......」とバツの悪そうな顔をする。


それでも、少し悩んだ末に、語り出す。


「それは、自分のお姉ちゃんのことから話し始めないといけないよ。」



「わたしには、二つ歳がはなれた姉がいるんだけど、今は国の選抜パーティーメンバーに選ばれて任務中で世界を飛び回っているんだ。」



マレイはポタージュを一口飲み、また続ける。


「そんあお姉ちゃんが自慢でね。でも、それ以上に自分と比べてしまって自分なんかと思っていたりするんだ。」


「そうだったのか、亮太はコーヒーカップを磨きながら耳だけは彼女の言葉に耳を傾けて

言う。


「でもね、わたしは、爆裂魔法の使い手で学院で問題ばかり起こして異端児扱いでさ。学院を落第されちやった。だから毎日、暇でなにしていいかわからないんだ…」


「うんうん。」

それは、自業自得なのでは、と思うが敢えて口には出さないで頷く。


「わたしのことはいいんだよ!」


とマレイは、学院を追放されたワケを打ち明けてくれた。


「そうだったのか。」


「だから、無理にお姉さんみたいにならなくてもいいんじゃないか?」


「それは、わかっているけど......」


「いいかマレイ。」


磨き終えたカップをコトリと置くと亮太は改まってマレイに向き直る。


「人って言うのはな、辛い日常の中でささやかな幸せがあるから人は、その試練を乗り越えられるものなんだ。」


「だから、ここで一歩を踏み出してみないか?」


「お姉さんみたいになるんじゃない、。お前が変わるんだ。」


「誰も文句を言えないくらい、凄い自分になればさ」



「それてでも、どうしても辛いことがあればオレが受け止めるからさ。」

「良かったらウチで働かないか?冒険者として登録するにしても、それだけじゃ暮らしていけないだろ?」


「わかった。よろしくね」

こうして、従業員が一人増えた。

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