第30話 魔力操作が……

 私達はファイヤーシューティングの炎の矢に抉られた先、怪しい建物に向かっていた。その道中で、少し開けた場所に出た時にゼクトが私に提案してくれた。


「なんか開けた場所に出たな、ちょうどいいや」


「え? 何が?」


「ミエダ、ちょうどいいからここで魔力操作の訓練をしようぜ」


「ええ!? ここで!? いいの!?」


「いつまでも詠唱に頼ってたら、外に出た時に困るだろ?」


 ゼクトの言う通り。詠唱が非効率と言われる今の時代では、私の魔法は……というよりも一人だけ詠唱している私自身が時代遅れだと言われてしまう。戦闘時に「あの人何やってるの~?」なんて言われたら恥ずかしい!


「この俺がしっかり師事してやっから、嫌とは言わせないぜ!」


「ゼクト! ありがとう! お願いします!」


 私は大喜びでゼクトの提案に飛びついた。魔法使いとして魔力操作は何としても使いこなしたかった。


 とりあえず、もう一度ファイヤーシューティングを使ってみた。今度は魔力をうまく操作して力を抑えて放つ!


「ファイヤーシューティング!」


ドゥオッカーン!!


「「ギィイイイイイイイアアアアアアアアアア!?」」


「「…………」」


 あ、あれれ~、力を抑えたはずなのにこの威力は……。また、地面が抉れた。マズイ、魔力の半分が持っていかれちゃった……。倒れそう……。


……ガクン


「おっ、おい、ミエダ! どうした!?」


「……あれ?」


 どうやら、気が付かないうちに倒れたみたい。これは本当にマズイ。もしかして他の魔法を使ってもこんなふうになるんじゃ……。


「ヒール! ヒール! ヒールエクストリーム!」


「ご、ごめんね、ゼクト……」


 私はゼクトに慣れない回復魔法をかけてもらいながら、謝るしかなかった。……情けないわ。回復した後、私は他の魔法でも試してみた、けど……。


「ファイヤーキック!」


バッカーン!!


……ドサッ


「バーニングドロップ!」


ドゥオッゴーン!!


……バタン


「……ミ、ミエダ……」


「う、うう、惨めだわ……」


 どの魔法も上手くいかなくて、過剰な魔力を使ってしまう、魔力の消耗のたびに倒れてしまう。ゼクトも慣れない回復魔法を使わざるを得ない。私の得意な魔法は炎系統かつ過激なタイプなんだけどそれがいけなかったのかな。昔のやんちゃだった頃が悔やまれるわ。


「ミエダってさ、見た目に反して危なっかしい魔法ばかり使ってるけど、なんでかな?」


「私の魔法はね、超禁術シリーズといわれる禁術の改良版なのよ。といっても負担を大幅に減らしたかなりの劣化版に過ぎないだけなんだけどね」


「へ、へえ~、そうなんだ~……」


 ゼクトが必死に考えながらも軽く引いてるのが分かる。ああ、本当に自分が情けない。こんなことなら、強そうな魔法ばかり研究の対象にしなきゃよかった。私は自分が嫌になって、自信を無くして暗い気分に陥る。そんな時、ゼクトが何か思いついた。


「そうだ、生活魔法を使ってみたらどうだ!」


「え? 生活魔法って、人間の世界の……弱小魔法?」


「まあ、そんなもんだ。それくらい弱い魔法で練習すれば魔力を過剰に使わなくていいかもしれない! 教えるからやってみてくれないか?」


「分かったわ。生活魔法ね」


 ゼクトは私に新しい魔法を教えてくれた。ハンドフリーズ、ハンドファイヤー、ハンドウォーター、その他……。という感じで弱小魔法こと、生活魔法を教えてもらった。早速、ハンドファイヤーから試してみた。


「ハンドファイヤー」


ボボン!!


「わあ……」


「…………」


 大した威力は無かった。目の前の地面が少し吹き飛んだ程度だった。でも、それ以上に魔法に使う魔力が少ない分操作しやすく感じられた。こんな気分は初めて……。


「これが生活魔法ね! こんな気分初めてだわ!」


「そ、そうか……それはよかったけど、もうちょっと魔力を抑えような……」


 その後、私はさらに魔力を抑えて生活魔法を試し続けた。そしてやっと、ゼクトの基準で『普通』に使いこなせるまで上達した。


「ゼクト! もう大丈夫かな?」


「ああ、うん。……俺もびっくりした、いろいろとな……」


「それじゃ、ファイヤーシューティングをもう一度試してみるわね」


「ええ!? ちょっ、待っ……」


「ファイヤーシューティング!」


ボオオオオオオオ!! 


 ファイヤーシューティングを使っても、詠唱時と同レベルに抑えられた。他の魔法も続けて試してみたけど、同じようにできた。私は遂に、魔力操作を使いこなしたんだ! 長かったわ!!


「す、すげえ……すげえぞミエダ! 本当に……」


「ゼクトのおかげよ! 本当にありがとう!」


ガシッ


「うおっ!?」


 私は嬉しくてたまらなくなってゼクトに抱き着いてしまった。





※数時間後


「やっとたどり着いたぜ。はあ~、暑かった~」


「本当よね~、中が少しは涼しければいいんだけどね~」


 訓練の後、建物まで進んだ。たどり着いた時は、暑くてくたびれてしまった。ゼクトと話して、ここで休憩ということになった。


 建物は神殿のような感じで、神聖な感じと不気味な感じが混濁している。その門の前で休むんだけど、用心のために門をふさいでしまうことにした。


「バトルフリーズ!」


「ブラストフリーズ!」


シュウウウウウウウウウウウウウウウウ! シュウウウウウウウウウウウウウウウウ!


「今度はいい感じに魔法操作できたみたいだな」


「そ、そうかな。ふふふ……」


 私達の魔法が門を氷漬けにする。その出来栄えを見てゼクトがからかってくる。


「まあ、あれだけ練習したんだから、うまくいかなきゃ困るけどな」


「あ、あはははは……そうよね~、ははは……」


 正直、シャレにならないわ。

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