第29話 回復魔法が……
俺達は、ミエダが見つけた怪しげな建物に向かった。その道のりはとても楽だった。道を進むだけは……。ファイヤーシューティングの炎の矢に抉られた先まで行くのだから、抉れた地面に沿って進めばいい。そこは、魔物たちが怖がって寄り付かないのだ。……暑かったけどな。
そして遂に、例の建物についた。長くは無かったけど、暑かった! その暑い道のりが終わったことが嬉しい。すぐ隣にいる元凶の女も暑がってたしな。
「やっとたどり着いたぜ。はあ~、暑かった~」
「本当よね~、中が少しは涼しければいいんだけどね~」
暑くてヘトヘトだ。ここで休もう。俺たちの意見は一致した。
※休憩
「バトルフリーズ!」
「ブラストフリーズ!」
シュウウウウウウウウウウウウウウウウ! シュウウウウウウウウウウウウウウウウ!
建物は神殿っぽい感じの造りになっていた。俺達が休んでいるのは、その門のすぐ前だ。休んでいるところを襲われるのは勘弁してほしいので、門を氷漬けにして開かないようにした。建物はよく見ると神聖な感じもしなくはないが用心するのに越したことはない。
「今度はいい感じに魔法操作できたみたいだな」
「そ、そうかな。ふふふ……」
ミエダは無詠唱で魔法を使った。今度はうまく魔法操作ができたおかげで、魔力の無駄遣いも魔上の威力もない。当然だ。何故なら……。
「まあ、あれだけ練習したんだから、うまくいかなきゃ困るけどな」
「あ、あはははは……そうよね~、ははは……」
そう、実はここに来るまでに練習をしていたのだ。ミエダの無詠唱の訓練を! そうしないと危なっかしかったからな……。
建物まで進む道中に少し開けた場所があったので、そこでミエダの魔法の訓練を提案したのだ。ミエダは大喜びで賛成してくれた。どうやら、今のままでは時代遅れの技術にしか頼れないことを、彼女自身も気にしていたみたいだ。
ここで俺がしっかり師事すれば、いや、しなければならなかった。まだ、ろくな活躍ができていなかったし、ミエダが期待に満ちた目で見てきたからだ。今こそ活躍の時!
……そんな風に思っていたのだが、思いのほか考えが甘かった。もう一度ファイヤーシューティングを使ってもらったけど、これがまたすごい威力だった。森が一直線に焼き尽くされる。他の魔法を使ってもらったんだけど、ファイヤーキックだのバーニングドロップだの、炎系統かつ危なっかしい魔法が得意のようだ。しかも、使っている魔法のほとんどが超禁術シリーズとかいう禁術の劣化版に過ぎないという。……ええ~、マジで~。
魔力の無駄遣いによる消耗が激しい分、すぐに倒れ続けるミエダのために、俺も不得意な回復魔法を何度も使った。ミエダが倒れるたびにだ。おかげで俺は、回復魔法が以前よりもかなり上達してしまった。それも、お袋はおろか、ヨミやブレンに匹敵するほどに……。ヨミやブレンがこのことを知ったら驚くだろうな。
考えた末、生活魔法を覚えてもらうことにした。これなら、威力も高く出ることもなければ使いやすくて、魔力操作しやすいと思ったのだ。思えば、俺も生活魔法から魔力操作の基礎を学んだっけ。
早速、落ち込んでしまったミエダに教えて使ってもらった。思った通り、大した威力は無かった。……範囲が大幅に狭くなっただけだったな。それでもミエダは何故か喜んだ。どうも生活魔法がとても新鮮に感じたみたいだ。喜んでくれるのはいいが、訓練はここからなんだ。生活魔法を何度も続けて使ってもらったが、俺は初めて生活魔法でも殺傷能力があることを知ってしまった。
やっと、生活魔法を『普通』に使いこなせるまで上達したミエダは、攻撃用の魔法を試してみた。いきなり、ファイヤーシューティングをぶっ放したときは驚いたが、今度は詠唱時の時と同レベルだった。他の魔法を試してみてもそんな感じにまで抑えられていた。ミエダは遂に、魔力操作を使いこなしたのだ! 悔しいが上達が早い!
ミエダは自分自身の上達に大喜びして、再び俺に抱き着いた! あれ? これで何度目だっけ?
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