第21話 腹の音?
「「うわあああああああああああああああああああああああ!!」」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」」」
今、俺達は魔物の大群に追われている。でっかいトカゲが二足歩行で走ってきたと最初は思ったが、ミエダによると翼が無い『ドラゴン』らしい。しかもあの大きさで、通常よりもずっと小型のサイズだと…………あの大きさで!?
ドラゴンは上級の魔物に属し、中には人間に匹敵する知能を持つものもいると言われているが、生息地が少ないから滅多に出くわすことは無いのだが、残念なことにその少ない生息地がこのダンジョンにあったようだ。しかも大群。
何でこんな状況になったのかというと、下の階に進み続けて10階層のところまで来た頃にさかのぼる。それまでは最初の時と同じように何もなかったんだ。だけど、その10階層では森が広がっていたのだ。しかも、昼みたいに明るくて大きな生物の鳴き声すら聞こえる。先が見えないほど広い空間についたと知った俺たちは、呆然としてしまった。そのすきを突くかのように、魔物の大群に襲われて今に至る。魔物のくせに卑怯な!
「くそお! いきなり魔物の大群が相手かよ! ふざけやがって!」
「と、とにかく! あいつらを倒さないと! ゼクト、走りながら魔法を打てる!?」
「できる! そういう訓練もしたからな!」
「なら一緒にやりましょう! わが怒りは火に変わり敵を打つ! 憎悪魔法・ファイヤーシューティング!」
「チェイサースラッシュ !」
ボオオオオオオオ!! ザクッ! ザクッ! ザクッ!
「「「グ!? グルアアアアアアアアアアアア!?」」」
ミエダの手から火の玉が放たれた。しかもすごい速さで、トカゲ……じゃなくて羽無しドラゴンに直撃していく! 俺のチェイサースラッシュも敵を切り刻む! やったぜ!
「「「ギッギエエエエエエエエエエエエエエエ!!」」」ッ
「やった! 半分くらい倒れたぞ!」
「この調子ね! さあ! あと一押し……あれ?」
「え? あいつら逃げていく?」
「「「ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエエン!!」」」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
倒れた仲間(死亡済み)を残して羽無しドラゴンたちは逃げて行った。でかい割には大したことなかったみたいだ。これで一安心!
「ふう、いきなり出てきた割には、案外、楽に倒せたな」
「ええ。あの様子ならもうかかってこないでしょうね」
「にしても、まさかこんな森が出てくるとはなあ。ここからやっと本格的な戦いを強いられるんだろうな」
「ええ。だから気を引き締めていかないと……」
キュウ~
んん? ミエダの言葉を遮るような腹の音が鳴った。俺ではない……だとしたらまさか!? 俺が気付いた時、ミエダの顔が耳まで真っ赤になった。
「……あ、あの~、さっき気を引き締めないとって言ったのは……」
「こっ、これは仕方のないことよ!! もう、何時間もダンジョンの中にいるんだから!! ゼクトだってお腹すいてるんじゃないの!? そうでしょ!! そういってよ!!」
ミエダは必死になって言いくるめようとしている。涙目で顔が真っ赤なままだ。女の子なのに腹の音を聞かれたらそれは……くっ、笑うな俺! 笑ったら多分殺される! どうにか論点をずらさねば!
「ま、まあ、確かに言われてみれば、俺もなんか食いたい気分になったな……」
「そ、そうでしょ! あ、そうだ! さっき倒したドラゴンを調理して食べましょう! 休憩を兼ねて食事よ! さあ、行くわよ!」
「え? あ、おいちょっと! 待ってくれよ! そんなに急がなくても……」
グゥ~
あ、今頃、俺の腹が鳴った。すでにミエダは俺から離れて料理をしようとしていた。それにしてもキュウ~か。かわいらしい音だったな。
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