第20話 アンアッキー?
私とゼクトは、互いのダンジョンの知識に関する情報交換をしてみた。私個人の興味もあるしね。同じ知識にあったのは、罠や魔物が出現すること、奥に進むにつれて難易度が上がっていくこと、最奥に強敵がいること等だった。
お互い知らなかった知識と言えば、私の方はダンジョンが人間の古代人によって作られた可能性があることで、ゼクトの方はダンジョンが魔族の祖先によって作られた可能性があることだった。……私は両方という考えもあったけど。
情報交換が終わった私達は、あまりにも嫌な思いでしかない、私が封印された場所の辺りから進める道を探すことにした。そして、すぐに下の階に続く階段を見つけた。
「……下の方に続いてるな。ここから難しくなっていくんだな」
「いよいよ罠や魔物が出るのね。怖くない?」
「正直怖いよ。だけどここから出るためには進むしかないんだろ? せっかく俺達似た者同士が出会ったのに、ここで一緒にのたれ時ぬなんて御免だよ。そう思うだろ?」
「そうね。なら進みましょう。私達のこれからのためにも」
私達はゆっくりと階段を下りて行った。降りた先は、妙に明るくて整備された広い通路があった。魔道具すら無さそうに見えるけど、どこかに罠が仕掛けられているか、魔物がいきなり出てくるのでしょう。それがダンジョン。怪しい雰囲気が漂う。
※一時間経過
……一時間くらい進んだ先に、無事に下の階に続く階段を見つけたけど、なんか違和感を感じる。何故なら、罠もなければ魔物が出てこない……………………あれえ?
「……なあ、ミエダ、どういうことなんだ?」
「……言いたいことは分かるけど私も疑問に思うわ。何もなかったことでしょ?」
「……うん、何ていうかさあ」
「……だよねえ」
「…………お、お、おかしい! おかしいだろ! 何なんだよー!?」
ゼクトが耐え切れず叫んでしまった。正直、何なのかは私が聞きたいくらいだ。結構、緊張と不安でいっぱいだったのに、何もないと逆に嫌な感じがする。
「一時間も何もなかったぞ!? ここ本当にダンジョンか!? 罠や魔物は一体どうしたんだ! 一時間前の俺達の覚悟は何だったんだよ!?」
「まっ、まあまあ落ち着いてよ。私もおかしいと思うから……」
「あーもー! ダンジョンが古すぎてポンコツになったてのかよー!?」
「いや、流石にそんなことは……っ! もしかして……!」
「え? マジなのか?」
ゼクトの「古すぎて」という言葉を聞いて、悪い予想をしてしまった。「古すぎる」ということは、罠が老朽化してうまく作動しない可能性と魔物の生態系の変化の可能性がある。そんな予想をしてしまった。
「……ポンコツじゃないけど古すぎるのが問題ね、環境が変化したのかもしれない」
「え? どういうことだ?」
「長い年月を経て、ダンジョンの中の魔物の生態系が変化したかもしれないってことよ。ダンジョンの魔物だって生き物だから食べていく必要がある。」
「それがどうしたんだよ? 食べ物が無くなって絶滅したってことか?」
「そうかもしれないけど、食べ物を求めて下の階に移動したってこともありそうじゃない?」
「魔物が下の階に移動?」
「ゼクトの知識の中には、突然、ダンジョン内で確認されたことのなかった魔物が出たことがあるんでしょ。原因として、ある魔物が別の階に移動したことで、突然変異か進化したと考えられてるそうなら、このダンジョンでも起こってるんじゃないかしら?」
「そ、そういうことか……。さらに下の階に魔物が集まってるってことか?」
「そうなるわね。それも、さっき言ったように突然変異か進化した魔物がね」
「つまりこの先に待っているのは……」
「ゼクトの言ったように絶滅しているか、私の言ったように進化しているってことよ、ダンジョンの魔物がね」
「……」
私の予想はよく当たる。特に悪いほうがね。……はあ、嫌な予感がぬぐえない。ゼクトは反対に絶滅しているかもしれないと言ってるけど、魔物は強い生き物なのだから、生きるためならどんなことでもする。魔物が種族全体で絶滅するのは結構難しい。
…………でも、絶滅してくれてたらラッキーなんだけどね。
数時間後、ラッキー!なんてことは無かったことを思い知らされる。
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