11.再発の悪戯

11.01.再発

 退学から数日経ったある日の事、いつものように凜愛姫りあらを見送り、いつものように姫花ひめかと遊んでたんだけど……


 「とおるちゃん、顔色悪いみたいだけど大丈夫?」


 言われてみれば体が怠い気もする。


 「やだ、熱あるじゃない。姫花ひめかはいいから少し休んできたら?」


 「そうだね。姫花ひめかにうつしたらまずいね」


 それに、明日は侑里香ゆりかさんに呼び出されてるんだった……


 「あ、あ〜あ〜、とーうー」


 「ごめんね姫花ひめか。ちょっと休ませて」


 義母かあさんに姫花ひめかを預け、ベッドに入る。そしたら直ぐに意識がなくなって……


    ……

    ……

    ……

    ……

    ……



    ◇◇◇



 「ただいまー」


 「お帰り、凜愛姫りあら


 いつもならとおるが出迎えてくれるのに今日はお母さんなんだ……


 「いーあー」


 姫花ひめかが居るって事はお風呂ってわけでもなさそうだし……


 「とおるは?」


 「体調が優れないみたいなのよ。ちょうどいいわ、そろそろ夕飯だから様子見てきてくれない?」


 「うん、わかった」


 調子悪いんだ、とおる……

 そしてやって来たとおるの部屋。ノックしたけど返事がないからそのまま入ったんだけど……


 「うそ……」


 はだけた毛布から見えてるその体、Tシャツ越しだけど確かにある……


 「そんな……」


 でもそんな事って……、治療が成功して男の子に戻ったんだから……

 ん? 私の事驚かせようとして何か入れてる? 寝たふりまでしちゃって。そんなのに騙されないんだからね!


 「ふぎゃぁぁ〜」


 偽物の胸を思いっきり掴んでやった……、はずだった……


 「えっ!!!」


 やわらかいっ! 本物っぽいっ!!


 「凜愛姫りあらぁ、いきなり何するの……」


 「な、何ってとおるこそ。こんなの入れても騙されないんだからね」


 すごくリアルだけど……

 やだ、なんか顔が熱くなってきた。


 「こんなのって……、何これ、胸が膨らんでる!!」


 「膨らんでるって、入れてるんじゃないの?」


 「何でそんな事するのさ。ほら」


 とおるがTシャツを脱いで見せてくれたんだけど……、偽物だよ! 本当におっぱいだ!


 「やだ……、そんなのやだよ、とおる……」


 「ないっ!! なくなってるっ!!!」


 「ないって……、何で?」


 「どうしたの? 大きな声だして。……あら、女の子に戻ったの? どうしましょう」


 元々男の子なんだから戻ったんじゃないし。


 「とーうー、あっ、あっ」


 もう、姫花ひめかまで。とおるのおっぱい触ろうと手を伸ばしてるし。

 それに、なんか前より大っきくなってない?


 「ごめんね、凜愛姫りあら。こんな事になるならあの時止めなければ良かったわね……」


 「あの時って……、あれは私もどうかしてたし……」


 ううう、思い出したくない。お母さんったら、こんな時に何言ってるのよ。


 「兎に角、大穴牟おおなむち先生に連絡しないとよね。明日の予約が取れるといいんだけど……」


 「明日はちょっと用事が……」


 「用事?」


 「うん、大した用事でもないんだけど……」


 「誰?」


 「……侑里香ゆりかさん」


 「何でデートの約束なんてしてるのよ(怒)」


 「別にデートってわけじゃ……」


 「じゃあ何?」


 デート以外に会う目的なんてないじゃない。


 「侑里香ゆりかさんの研究室でバイト募集してるみたいでさ。でもほら 理香りかさんって男嫌いだからちゃんと女の子に見えるか確認したいって言われて……」


 「知ってるんだ、とおるが男の子だって」


 「うん。従姉妹が高天原たかまがはらに居るみたいでさ」


 「なのに女装させてまでとおるを身近に置いておきたいと」


 「そんな事ないよ。僕が退学した事も、何で退学する事になったかも知っててさ。従姉妹が評議委員だって言ってたかな。それで暇してるならバイトしないかって誘われたんだよ。僕だって毎日 姫花ひめかと遊んでるわけにもいかないしね」


 「とおるはそれでいいんだ。毎日女装して電車に乗って、一日中女の子のふりして……」


 女装癖持ちの彼氏とか嫌なんだけど……


 「良くないっ! 良くないけど……、ソフトウェア開発の仕事だっていうし、研究室の繋がりでOBからも仕事貰えるかもしれないって」


 「ふーん、丁度良かったわね、女の子に戻れて」


 まあいいわ。実際こうして女の子に戻ったんだし、浮気の心配はいらないかな。


 「そうだ、だったらコーデは私に任せて! 完璧な女の子にしてあげるわよ」


 うん! それがいい! そしたら侑里香ゆりかさんだって諦めるに違いないわ!

 もうこのまま女の子として生きていきますって感じにしてあげるね♪


 「えっと……、お手柔らかに……」

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